19日、中国・北京を訪問し習近平国家主席と首脳会談した北朝鮮の金正恩党委員長が、昨日、平壌へ帰国の途についたことを『あさチャン』(TBS系)が取り上げた。

金委員長は、習主席との会談で「史上初の米朝首脳会談」の報告と、米朝会談の行われたシンガポールへ行く際の「航空機の手配への感謝」を述べたと見られている。一方、習主席も「朝鮮半島の対話と緩和の勢いが有力的に固められたことを喜ばしく見届けた」という談話が中国新華社通信によって紹介された。この会談を受けて、元TBS政治部長で流通経済大学教授の龍崎孝氏が北朝鮮の金委員長の外交戦略を一方的に褒め称えるような場面が見られた。

番組では、「北朝鮮 金正恩氏の外交戦略とは?」と題し、金委員長の米中間と開催した各首脳会談を分析。龍崎氏が「夏目さん、この2ヶ月、金委員長のいろんな表情を見たと思われませんか?」と質問をすると、MCの夏目三久は「確かに緊張した面持ちであったり、笑顔だったり、人間らしい感情の面を見た気がしますね」と回答した。それを受け、龍崎氏はここぞとばかりに「まさにこういうことだと思うんです。金委員長は、相手国によって“顔”を使い分ける『稀代の戦略家』と考えていいと思うんです」と、外交手腕をべた褒め。

さらには、北朝鮮の金委員長は、米朝間と各国の首脳会談で、韓国とは「笑顔外交」、中国とは「従順外交」、アメリカとは「譲らない外交」を行ったと、相手国によって器用に顔を使い分け、どれも成功に導いたとばかりの論調で絶賛した。

また、龍崎氏は、今後開催が見込まれる日本との首脳会談に金委員長は「強面の『敵対外交』が始まってくるんじゃないかと思います」「金委員長に会いたいのは、むしろ安倍総理の方。拉致問題を解決して、自分の政治に勢いをつけたい。それをある意味(北朝鮮は)じらすような作戦に出てくるのではないか」と憶測で語り、日朝首脳会談を行いたいのは安倍首相の方であり、拉致問題の解決は政権の得点稼ぎみたいな語り口で解説をした。

北朝鮮の「非核化」や「拉致問題」は、与野党の枠を超え、日本の国としての安全保障として最重要課題と言っても過言では無い。それにも関わらず、龍崎氏は、安倍総理が、国民の代表としてではなく政治家としての保身であるかのように「拉致問題を解決して、自分の政治に勢いをつけたい」とコメントをするのは、一部野党や北に寄りすぎの印象操作ではないか。

また、北朝鮮は、一市民から政府高官まで意にそぐわない人間の粛清を繰り返し、食糧不足で大量の餓死者を生んでいるような国である。その国の最高指導者を嬉々として持ち上げ、日本の安倍首相の評価を下げるかような口ぶりは、一体どの国のテレビ局が放送しているのか? 龍崎氏の発言に疑問を感じる放送内容であった。