江戸時代に整備された五街道の一つである中山道(なかせんどう)は、江戸日本橋から京都三条大橋までを結ぶ重要な街道です。全長は135里32丁(約534km)に及び、旅人が途中で休憩・食事・宿泊ができるよう、69の宿場が置かれました。

そのうちの17宿、126.5kmが岐阜県の美濃地方を東西に横断しており、いまも往時の面影を色濃く残しています。険しい峠道や苔むした石畳を歩けば、かつての旅人も同じ景色を見ていたかもしれないとノスタルジーを感じられるでしょう。

今回は岐阜・東美濃エリアにある、大湫(おおくて)宿から大井宿までの約13.7kmを歩き、中津川宿に一泊して、翌日は落合宿から馬籠(まごめ)宿までの約4.9kmを歩く、中山道ウォーキングをしてきました。歩いたからこそわかった、東美濃・中山道の魅力をたっぷりお伝えします。

細久手宿・大黒屋旅館

今回の中山道歩き旅のスタートは、岐阜県瑞浪(みずなみ)市の細久手(ほそくて)宿。細久手宿は、海抜420mの山中に発達した江戸から48番目の宿場です。東高西低の町並みが400mほど続き、天保14年(1843)の記録によると、24軒の旅籠があったとのこと。

その旅籠の一つが「大黒屋」です。軒廂(のきびさし)付き切妻造の2階建てで、両端には威厳を感じさせる本卯建(うだつ)が高々と上げられています。

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