エストニア、リトアニアと合わせて「バルト三国」と呼ばれるラトビアの首都リガ。

歴史的な町並みがまるごと世界遺産に登録されているこの町は、個性的な建築物がひしめき合うヨーロッパ屈指の建築都市です。建築好きにとってはたまらない建築天国、リガで会いたいユニークな建築をご紹介します。

・ブラックヘッドの会館

リガを象徴する建築物のひとつが、旧市街の市庁舎広場に面して建つブラックヘッドの会館。鮮やかなオレンジ色と、彫金細工や彫刻に彩られた個性的な外観は、一度見ると忘れられない印象を残します。

もともとは14世紀に建設された建物ですが、1941年のドイツ軍の空襲により破壊されたため、現在見られる姿は1999年に再建されたもの。未婚の商人の友愛会であったブラックヘッドのメンバーによって、コンサートやパーティーが開かれていた当時の姿が現代によみがえりました。

外観で特に目を引くのが、月、日、時間と月齢を刻むファサードの大時計。言い伝えによると、中世の時代にこの時計を作った職人は、二度と同じものが作れないように目をくりぬかれてしまったという話も・・・館内には、壮麗な天井画が描かれた大ホールなどが再現されています。

・聖ヨハネ教会

リガに数ある教会のなかで、驚くべきエピソードをもつのが聖ヨハネ教会です。

中世の時代、生きた人間を壁に埋め込めばその建物を災いから守ることができると信じられていたため、この教会でも2人の修道士が自ら志願して壁の中に入り命を落としました。しかし、当時の法王は彼らを聖人とは認めず、穴はふさがれ、殉死した修道士たちはいつしか忘れ去られていきます。

その後、19世紀半ばに行われた改修の際、この逸話を知っていた人が壁を叩いてみると空洞が見つかり、彼らの遺体が発見されたのです。そして教会の外壁には、2人の修道士を記念して、十字架型の穴が設けられました。

こぢんまりとした教会ながら、内部ではリヴォニア(現在のラトビアの東北部からエストニアの南部にかけての地域)で最も美しいといわれるアーチ型天井が見どころ。

さらに教会前には、リガの姉妹都市であるドイツのブレーメンから贈られた「ブレーメンの音楽隊」の像が立っています。こちらもお見逃しなく。

・猫の家

旧市街のリーヴ広場の北に位置するクリーム色の建物をよく見れば、屋根の上に猫が!この猫は当初、反対方向を向いていたといいます。

かつてこの家に住んでいた裕福なラトビア人商人が大ギルドへの加入を希望しました。ところが、彼は十分な加入資格を持っていたにもかかわらず、ラトビア人だったためにドイツ人が支配的だたギルドへの加入を拒否されてしまいます。

それに憤った彼は、大ギルドの会館にお尻を向ける形で屋根に猫の像を取り付けて応戦したのです。その後、大ギルドの会館はコンサートホールに変わり、猫は美しい音色に誘われて体の向きを変えたのだとか・・・

・三人兄弟

リガの旧市街に残る住宅のうち、もっとも有名なものが、マザー・ピルス通りにある「三人兄弟」と呼ばれる3つの隣り合った建物です。それぞれ建築当時の姿をほぼ保っていて、それぞれ当時の時代背景を反映しています。

向かって右側の建物が15世紀に建てられた兄貴格の建物。一般住宅としてはリガで最も古いもので、階段式の切妻屋根が印象的です。

中央は17世紀に建設された建物で、ファサードはオランダのマニエリスム様式。

末っ子にあたるのが、17世紀に建設された左端の建物で、バロック様式の破風が特徴的です。このころになるとリガの土地問題が深刻化してきたため、兄に比べるとずっと幅が狭く窮屈そう。その一方で、「窓税」がなくなったので、兄にくらべるとすっきりとした顔立ちをしています。

・ユーゲントシュティール建築群

リガの町に独特の彩りを添えているのが、ヨーロッパ最大規模のユーゲントシュティール建築群です。

「ユーゲントシュティール」とは、19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパで流行した新芸術様式。曲線や植物などの有機的なモチーフを多用するのが特徴で、フランス語では「アールヌーヴォー」と呼ばれます。

ユーゲントシュティールの台頭期とリガの建築ブームがちょうど重なったため、なんとリガ市内中心部の建築の4割がユーゲントシュティール様式で建てられているとか。

町じゅうでユーゲントシュティールがあふれるリガのなかでも、に見ごたえのあるユーゲントシュティール建築が集中しているのが、新市街のアルベルタ通り周辺。このエリアには初期ユーゲントシュティールを代表する建築家、ミハイル・エイゼンシュテインが手掛けた装飾性の強い建物が並んでいます。

デフォルメされた人面や悪魔、美女たちで飾られた奇想天外な建築の数々はインパクト抜群。アルベルタ通り12番地にあるユーゲントシュティール博物館も必見です。

・中央市場

リガ庶民の活気が感じられるエキサイティングな場所が、新市街にある中央市場。

野菜や果物、肉、魚介類といった生鮮食品はもちろんのこと、乳製品やパン、お菓子などの加工食品や薬、園芸用品、衣類、本まで、庶民の日常生活に必要なものはおよそなんでも揃うといっても過言ではありません。

肉や魚介類、乳製品などが並ぶ5つの巨大なドームは、もともとツェッペリン飛行船の格納庫だったものを移築したもの。そういわれてみると、この巨大さにも納得です。

市民の台所を支える中央市場は、ラトビアとリガの食文化に触れられる絶好の場所。おもちゃ箱のような場内を歩くだけでも楽しいですが、果物やお菓子などを購入してみるのもおすすめです。

それぞれにまったく異なる姿や役割をもつリガの建築たち。それらを目の当たりにすれば、きっとリガの町の面白さにすっかり魅了されることでしょう。

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