「ドイツの京都」とも呼ばれる東ドイツの古都、ドレスデン。
16世紀からザクセン王国の都として栄えたこの町は、バロック様式の壮麗な建築物の数々から「エルベ川のフィレンツェ」「百頭の都」「バロックの都」など、数々の異名をとってきました。
旧市街には古都の情緒が薫り立ち、重厚な町並みはドイツのなかでも格別の存在感を誇っています。
一見いかにも古そうなドレスデンの町ですが、実は、第2次世界大戦末期の空襲で焼け野原と化しました。私たちが今見ている歴史的な町並みは、戦後オリジナルに忠実に復元されたものなのです。
ほとんどの歴史的建造物が破壊されたなか、奇跡的に戦災を逃れたものがあります。それが、世界的に有名なマイセン焼きタイルにドレスデンの歴史的人物を描いた「君主の行列」。
ヨーロッパ最古の武芸競技場だったシュタルホーフの外壁に施された作品の大きさは、なんと幅102メートル、高さ10.5メートル。磁器で制作されたものとしては世界最大を誇ります。
約20センチ四方のマイセン焼きのタイルを2万5000枚も使用しているというから驚き。タイルには、1123年から1904年までの歴代35名のザクセン君主に加え、時代を彩った芸術家など総勢93名が描かれています。
「君主の行列」を目の当たりにすると、その大きさと迫力に圧倒されずにはいられません。
遠目からは普通の壁画のようですが、近づいて見ると四角いタイルの目地を確認することができ、確かに磁器なのだと納得できるはず。
誇らしげに描かれている君主たちのなかで特に注目すべきが、中央に描かれているアウグスト強王(ザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト1世)。
ライオンのミルクを飲んで育ったというアウグスト強王は大変な怪力の持ち主で、馬の蹄鉄も素手でポキンと折ることができたという逸話が残っています。女性にもモテモテだったそうで、数々の愛人とのあいだに360人以上の子どもをもうけたとか。
「強王」と呼ばれるにふさわしい、現実離れしたエピソードをもつアウグスト強王ですが、一方では芸術と建築のパトロンとしても知られ、マイセン磁器も彼の命によってドレスデンで発明され、ドレスデン近郊のマイセンで製造されるようになったのがはじまりです。
周囲の風景と調和し、すっかり町に溶け込んでいる「君主の行列」。これだけの大作を美術館や博物館の館内ではなく、青空の下で鑑賞できるというのがまたすごい!
古都ドレスデンには、アウグスト強王の芸術への思いが今も生き続けているようです。
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