ベルギー第2の都市で、ダイヤモンドの町やファッションの町として知られるアントワープ。日本では「フランダースの犬」の舞台としても知られていますね。
多彩な見どころをもつアントワープは、町のみならずその玄関口自体が観光スポット。国内外からの列車が発着するアントワープ中央駅は、世界で最も美しい駅のひとつとして名を馳せているのです。
その壮麗さは「鉄道の大聖堂」の異名をとるほどで、「陰謀のスプレマシー」や「名探偵ポワロ」など、数々の映画やドラマのロケ地としても使われてきました。
現在の場所にアントワープ中央駅の建設が始まったのは、1895年のこと。着工から10年をかけて1905年に完成しました。
このときにベルギーの建築家ルイ・デラサンセリによって設計された駅舎は、ベルギー特産の色大理石をふんだんに使用したネオ・バロック様式の豪華な建物。
宮殿だといわれてこの写真を見せられても、まったく違和感はありませんね。
重厚な大理石のホールとは対照的に、クレメント・フォン・ボガードが手がけた長さ185メートル、高さ44メートルのプラットフォーム部分の屋根は、鉄とガラスを多用した近代的な造り。
曲線づかいが印象的な繊細なデザインは、1925年のパリ万博で花開いたアール・デコの流れへとつながるものとして評価されました。かつてガラスだった部分は、現在はポリカーボネートに葺き替えられています。
1998年には、高速列車が折り返し運転をせずに済むよう、通過式の駅にするための大規模な改良工事が始まり、2007年からは地下にも列車が通るように。
伝統を感じさせる重厚感のある20世紀初頭の部分と、機能的で近代的な21世紀の部分が見事に融合し、新旧がそれぞれを引き立て合う形で生まれ変わりました。
現在のアントワープ中央駅は、近郊線や都市間鉄道、高速列車などが地上階と地下1階、地下2階に分かれたホームを列車が行き来するという珍しい構造。
地上階のホームに列車が左右にずらりと並ぶというのがヨーロッパの駅のよくある風景ですが、アントワープ中央駅では、左右のみならず上下にも列車が並んでいるのです。
近現代が融合した華麗なる駅舎で繰り広げられる光景は、なんだかドラマティック。
毎日多くの人々が、ここを起点や目的地、通過点としながら移動していく・・・そんな当たり前の日常風景が、特別なもののように思えてきます。
さらにアントワープ中央駅では、構内にある豪華なカフェも見逃せません。
地上階にある「ル・ロワイヤル・カフェ(LE ROYAL CAFE)」は、かつて王族が鉄道を利用する際の待合室だったという部屋を利用したカフェ。
白を基調としてゴールドの装飾を施した上品な空間は、駅のカフェとは思えないほどに華やかです。
「こんなに豪華なカフェ、お高いんじゃないの・・・」と思ってしまうところですが、意外にも雰囲気はカジュアルで、値段も町なかの一般的なカフェと変わりません。
次の列車を待つまでの時間、美しいカフェで優雅に過ごしてみてはいかがでしょうか。
それ自体が一見の価値ありのアントワープ中央駅。アントワープを訪れるなら、ぜひ駅での観光タイムの確保もお忘れなく。
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