クロゼッティ バットゥート ピノリ 松の実とパルミジャーノ
イタリアはグルメの宝庫だが、リグーリア州のアペニン山脈の麓にある小さな町、ヴァレーゼ・リーグレが発祥の伝説的パスタがあるのをご存じだろうか。
・あまりにも珍しい郷土パスタ
そのパスタは「クロゼッティ ディ ヴァレーゼ リーグレ」(以下クロゼッティ)と呼ばれている円形のパスタで、一枚一枚に模様(エンブレム)が捺されている。クロゼッティはあまりにも珍しい郷土パスタなため、イタリア国内でも食べられる店は極めて少ないという。日本では「マジカメンテ」(東京都渋谷区恵比寿3-41-9)でシェフ手作りのものが食べられる(24種類のパスタから選ぶことが可能)。
・職人がイタリアには1人しかいない
クロゼッティの模様はスタンプを用いてシェフが一枚一枚丁寧に捺していくのだが、このクロゼッティも絶滅危惧種ならば、このスタンプはさらに絶滅危惧種。200年以上前から歴史あるクロゼッティは、スタンプを捺して模様をつけることで完成するのだが、そのスタンプを作る職人がイタリアには1人しかいないのである。しかも年齢は80歳以上と高齢だ。
・唯一のクロゼッティ型職人
クロゼッティ型職人のピチェッティ氏は、クロゼッティが生まれたヴァレーゼ・リーグレの町で唯一のクロゼッティ型職人として日々、スタンプを作り続けている。スタンプは木製で、筒状の木をふたつに切って作ったもので、断面に細かく模様を刻む。パスタ生地を円形に切り、ふたつの断面で挟んで模様をつける。
・スタンプさえも本場の物
「マジカメンテ」のシェフは実際にヴァレーゼ・リーグレのピチェッティ氏を訪ね、スタンプを入手し、レストランでクロゼッティを作っている。レシピもさることながら、そのスタンプさえも本場の物というわけだ。
・パルミジャーノの芳醇な薫り
実際に食べてみたが、これがまた想像以上に美味。やや大判なのでナイフを入れたりフォークで折るなどしたが、その感触から弾力があって硬そうに思えるものの、食べた瞬間にプリプリとしたパスタが砕けていき、パルミジャーノの芳醇な薫りが嗅覚を包み込み、味覚を魅了する。そして最後に訪れる「しつこくないがディープなコク」。ほんのりと後味として漂う花のような香りもたまらない。
・幸せな時間はその枚数に比例する
1人前で8枚のクロゼッティが皿に盛られるが、いっさい飽きることなく食べ続けられるため、一枚一枚食べて減るたびに「ああ、もう少しで終わってしまう」という悲しい気持ちがこみあげてくる。幸せなのに悲しい。もっと食べたい! 幸せな時間はその枚数に比例するのだ。ちなみにコースの場合はクロゼッティが少なめとなるが、追加料金で多めにしてもらうことも可能だ。もちろんアラカルトの注文も可能である。
・「味がむやみに強くない」のが素晴らしい
これは「マジカメンテ」の料理全体にいえることだと思うが「味がむやみに強くない」のが素晴らしい。過剰がいっさいなく、まさに絶妙なバランスであり、食材ひとつひとつが適切な味を保っている。これはなかなかできることではない。まさにシェフが成せる技といえる。
・「技術の灯」が消えてしまう
イタリア国内でもめったに食べることができないクロゼッティ。そして「技術の灯」が消えてしまうかもしれないクロゼッティ型職人の「匠の技」。このパスタはあらゆる意味において食べるべきものといえるだろう。なにより美味しいのだから。
・ひとりの日本人女性
ちなみに、クロゼッティ型職人の技術を失わせないため、ひとりの日本人女性がその技術を受け継いだとの話も聞いた。もしかすると、イタリアで消滅する技術が日本で受け継がれていくかもしれない。
・本場のクロゼッティが食べられる
「マジカメンテ」でクロゼッティやスタンプに魅了された人は、本場のクロゼッティを食べに行くのも良いかもしれない。ヴァレーゼ・リーグレの町はジェノバからクルマで1時間30分、フィレンツェからクルマで2時間30分ほどの場所に位置し、その町では本場のクロゼッティが食べられるという。
とうぶんは行けそうにない。そういう人は「マジカメンテ」でクロゼッティを食べつつ、イタリアの山奥の町に思いを馳せるのも楽しげだ。
もっと詳しく読む: 絶滅危惧種な伝説的パスタ「クロゼッティ」が絶品すぎる / マジカメンテ(東京メインディッシュ) http://main-dish.com/2018/10/24/magicamente-varese-ligure/
マジカメンテ
住所: 東京都渋谷区恵比寿3-41-9
時間: 12:00~15:00(LO13:00) 18:00~22:30(LO20:30)
休日: 月曜日
備考: ランチは水曜日と日曜日のみ