ブリュッセルを訪れる旅行者が必ず一度は足を運ぶのが、「グラン・プラス」。
ブリュッセルの旧市街はこの広場を中心に放射状に広がっており、周囲には風情ある石畳の小路が張り巡らされています。
フランスの詩人ヴィクトル・ユーゴーをして「世界で最も美しい広場」と言わしめ、ジャン・コクトーが「豊穣なる劇場」と称えたグランプラスは、ブリュッセルの象徴であり誇り。1998年には、ユネスコの世界文化遺産に登録されました。
世界にその名をとどろかせる広場だけに、とても大きな広場かと思いきや、そのサイズは110×70メートルと意外に小さめ。しかしながら、その美のスケールは実に壮大です。
そこに足を踏み入れた瞬間、四方に建ち並ぶ豪華絢爛な建造物群に圧倒され、言葉を失ってしまうほど・・・グラン・プラスが世界で最も美しい広場のひとつであることに、疑いの余地はありません。
ブリュッセルの街の誕生は10世紀末とされ、11世紀ごろにはすでにグラン・プラスとその周辺に市が立ち始めました。以来、グラン・プラスは中世のブリュッセルの政治・経済の中心として繁栄します。
広場には「ギルド」と呼ばれる中世ヨーロッパの同業者組合の館が建てられ、現代につながる華やかな景観が形作られていきました。
グラン・プラスを代表する建造物が、15世紀にゴシック・フランボワイヤン様式で建てられた市庁舎。「フランボワイヤン」とは炎のように見える激しいデザインから名づけられたもので、外壁や塔に施された執拗なまでの装飾は圧巻です。
中央の塔の高さは96メートルもあり、その全体像を写真に収めるのが困難なほど。塔の先端には、竜を打ち倒すブリュッセルの守護天使ミカエルの像が配置されています。
フランス軍の爆撃により市庁舎内部は火災に遭いましたが、塔だけは奇跡的に残り、当時の建築様式をそのまま今に伝えています。
市庁舎の向かいに建つ「王の家」も、グラン・プラスの主要建造物のひとつ。名前から王宮だったかのように思われがちですが、実際に王様が住んだことはありません。
かつてはパン市場として親しまれていた場所で、ブラバント公の行政庁になり、公がスペイン王になったことからその名が付きました。
スペイン・ハプスブルク家の支配時代には、スペイン政庁として利用され、新教徒を収監する牢獄にもなったとか。一見華やかなグラン・プラスには、暗黒の歴史も隠されているのです。
現在、王の家は市立博物館として使われており、館内ではピーテル・ブリューゲルの「結婚式の行列」や、昔のブリュッセルの模型、陶器、彫刻、タペストリーのほか、小便小僧の像やその衣装コレクションの一部を展示。コンパクトにブリュッセルの歴史がまとまっている、街歩きの前の必見スポットです。
市庁舎や王の家に加え、グラン・プラスを取り囲む細長い建物の数々がギルドハウス。中世のブリュッセルでは、パン屋、ビール製造業者、肉屋、樽屋、油商、小間物商などがそれぞれに同業組合を組織し、寄合所のようなものとしてギルドハウスを建てました。
各ギルドハウスの装飾の豪華さからも、当時のブリュッセルの繁栄ぶりをうかがい知ることができます。
グラン・プラスで見逃してはいけないパワースポットが、ギルドハウス「星の家」の下の壁に横たわるセルクラースの像。セルクラースとは、1388年に暗殺されたブリュッセルの英雄で、この像に触れると幸福がもたらされるという言い伝えがあります。
世界各国からの旅行者はもちろんのこと、グラン・プラスを通りかかった地元の人が歩きながらサッと像をなでている光景も。ブリュッセルを訪れたら、幸せを願って像に触れてみましょう。
街を代表する広場としては小規模ながら、比類ない美しさを誇るグラン・プラス。
博物館に加え、カフェやレストランもあり、美食の国として名高いベルギーの料理やスイーツとともにグラン・プラスの風景を堪能することもできます。
一度その光景を目にしたら、ブリュッセル滞在中、何度も足を運びたくなってしまうことでしょう。
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