米SEC(証券取引委員会)は米時間3日、相次いで大きな動きを2つ見せた。今回発表された大きな動きは以下の2点である。
特定のトークンが有価証券であるかに関するガイダンスを発表
初めてICOを予定している企業(TurnKey Jet)にNo Action Letterを発行
ICOを行なった通貨を始め、米国の有価証券基準に悩まされてきた通貨は多い。代表例としては、有価証券の問題で訴訟問題に発展しているリップル社とXRPが挙げられる。
なお、有価証券性が曖昧な状況では、複数の弊害が起きる可能性が指摘されており、証券問題を巡る訴訟リスクの他にも、取引所での取り扱い制限や、企業の仮想通貨関連プロダクトを提供に制限がかかるなど、アダプションや流動性の面にも大きく影響する重要な問題だ。
流動性とアダプションは、仮想通貨の価格において極めて重要なファンダメンタルズ要因の側面を持ち合わせているため、通貨価格にも波及する恐れがあり、判断基準が曖昧にあったこれまでの状況では、相場の重しになり得ていたと言っても過言ではない。
長い歳月を経て、本格的に米SECも有価証券のガイダンスを通して、仮想通貨に係る有価証券に関する明確な規定策定へと動き出した。仮想通貨市場にとって、より米SECの判断の重要性が向上してきている点は把握しておきたい。
米SEC、有価証券の基準が明らかに
まず、アメリカの証券取引委員会は3日、ICOを検討している企業などを対象に特定の仮想通貨およびトークンが有価証券に該当するかを判断するためのフレームワークを発表した。同文書内にはこれまでSECが引用してきたハウェイテストに関する説明がされている。
また今回の文書で新たに追加された項目としては有価証券に該当する可能性が低くなる条件がまとめられていた点だ。
米SECによると以下のような条件をより多く揃えているほど、トークンが有価証券として見なされる可能性が低いと説明されている。
• 分散台帳ネットワーク、およびデジタル資産が既に開発済みで稼働可能である
• 通貨保有者はネットワーク上でトークンをすぐに利用できる
• デジタル資産は投機目的ではなく、ユーザーの必要を満たすために設計、導入されている
• 価値が増加する可能性が低い(長期的な価値がある程度保たれる設計を持っている)
• バーチャルカレンシー(仮想通貨)として称されるデジタル資産において、通貨が様々な場面で法定通貨に代わる形で決済が可能
• 商品やサービスを表すトークンである場合、開発済みのネットワークで即座に商品やサービスと交換可能である
• 通貨の価値上昇は通貨の元々の目的ではなく、二次的な恩恵に過ぎない
• デジタル資産は価値が上昇する可能性ではなく、その機能性を重視に販売されている
特筆すべきは5番目の「バーチャルカレンシーとして称されるデジタル資産」に関する項目で、実際に仮想通貨として機能する場合は価値を保存し、いつでも引き出して取引が可能となる「価値の保存」手段に当たるとした点だ。
ただしこの文書には全ての必須項目が書かれているわけでないと掲載されているため、トークン発行やICOを検討している企業はいずれにせよ米SECのFinHub部門に相談するべきだと推奨している。
米SEC、ICOプロジェクトを初めて「認める」
また米SECからもう一つの重要な動きは、同機関の企業金融部門が米国内でICOの発行を試みる企業TurnKey Jet社に現状、有価証券として取締を行わない旨を表す文書を発表した事だ。
この文書は米SECの公式見解ではなく、あくまで同社が提供した情報を基に下した判断で、状況次第ではこの暫定的な判断は変わる可能性があるとしているが、米SECがICOに取締を行わないと文書で示した初の事例として注目を集めている。
TurnKey Jet社(以下、TKJ社)は2012年に米フロリダ州で設立されたエアタクシー・チャーター便を提供する企業で、フライトの確保を効率化するために独自のトークンセールを行うことを計画していた。トークンは航空業界における不効率な部分を最適化するため、航空券と交換可能になる仕組みとなっている。
TKJ社は弁護士を通じて昨年5月から米SECに申請を図っており、ICOの有価証券性は無いことを説明する文書を提出してから実に11ヶ月の期間を経た後、同機関から返答が帰ってきた形だ。文書内で、米SECはTKJ社が以下の項目を遵守することを推奨した。
• トークン販売で得た資金は開発の為に利用しないこと
• トークンが即座に利用可能であること
• 1TKJトークン価格が1米ドルに固定されること
• トークンが航空券との交換にのみ利用されること
• 買い戻しはトークンの販売価格より低い価格で行われること
• TKJ社はトークン販売時に利益の可能性があるものとして広告しないこと
またこちらの文書における注目点はTKJの飛行機便キャリアー、仲介者となるブローカー、そして顧客の全てのユーザーによる「トークンのTKJプラットフォーム以外への転送」が認められない点だ。
なお上記の項目やSECがTKJ社に取締を行わないことは、TKJ社が弁護士を通じて提供した情報の信憑性とTKJ社がこれらの計画から反れないことが条件となっている。
専門家の意見
今回米SECがTKJ社に向けて公表したNo-Action Letterに関して、米国の弁護士で仮想通貨向けのウォレットなどのソフトウェアを提供するBlockchain社の会長でもあるMarco Santori氏は4点目の「トークンが航空券との交換にのみ利用されること」、つまり通貨の譲渡が不可能とする点について問題があると意見を示した。
Santori氏は多くの通貨が取引されており、単純に流通市場で取引されることで「利益の上昇が期待される」項目が満たされることに疑問を述べている。確かに投機目的で上昇する際は仮想通貨取引所などの二次流通市場で行われるが、一概に流通市場への出回りを禁止するのではなく、通貨の本来の利用目的が将来的な利益を上回らなければいいと位置付けた。
また今回明文化された規制の基準があまりにも厳しいことからその重要性をあまり高く思わない専門家もいる。
今回の文書は法的拘束力がなく、あくまでSECの非公式な見解にしか過ぎないが、米SECがブロックチェーン技術を採用したICOプロジェクトの米国内での販売を認めたことは及第点だと言えるだろう。
(記事提供:コインポスト)
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