様々な書店が集まり、本の街として知られる東京・神保町。
本だけでなくもう1つ有名なものがこの街にはあることをご存知だろうか?
それがお手軽に味わえる神保町グルメ。
例えば、神保町で最も古いカレー店「共栄堂」で味わう極上のスマトラカレーに、あのタモリさんも絶賛したジャズオリンパスの赤いチキンカレー、そして常連からこよなく愛されている「エチオピア」のチキンカレーや、そして神保町で人気を二分すると言われる欧風カレーの名店、「ボンディ」や「ガヴィアル」など、カレーというジャンルを取ってみても奥深いお店がたくさん存在している。
他にも、書店の街ならではの喫茶店で例を挙げれば、タンゴ喫茶「ミロンガ・ヌオーバ」に神保町のランドマークとも言える喫茶店「さぼうる」など名店がひしめきあっている。
さらには、餃子の名店「スイート・ボーヅ(スヰートポーヅ)」に、行列ができるほど人気の焼きそば専門店「みかさ」、そして沖縄のクラフトビールが味わえる琉球バル「ガチマヤ」など、この街にしかないような個性豊かな名店が軒を連ねる、それが神保町グルメの魅力だろう。
そんな神保町グルメの中から、今回は100年以上前からビアホールとして美味しい洋食を提供しているお店をご紹介したい。
お店の名前は「ランチョン」。
・明治42年開業の老舗、それが「ビアホール ランチョン」
こちらのお店、明治42年(1909年)創業の老舗の洋食店。
1909年といえば、伊藤博文がハルピンで暗殺され、日露戦争に勝利したものの日本全国で戦争による影響で不況にあえいでいた時代。
しかしながら、国内では山手線の運転が開始され、京成電鉄、味の素の前身である鈴木商店、さらには、三井物産や新宿中村屋などが相次いで開業し、時代に残る不況の陰と新しい発展の光とが混在していた状況。
実は開店当時、こちらの店には名前がなかったという。
なぜなら明治42年にビールと洋食を出す店など周りはおろか日本を探してもほとんどない状態のため、店に名前をつける必要などなかったから、というのが理由だそうだ。
しかしながら、当時の常連だった東京音大(現・芸大)の学生たちがこちらのお店を「ランチョン」と呼んだことから、そのまま、現在までその名前が残っているのだと言う。
そんな明治時代に産まれた老舗は、その美味しい味わいから、多くの著名人に愛されてきた。
・泡までうまい、最高のビールを味わう
ビアホールと名のつくこちらのお店、なんといってもビールがうまい。
創業から100年以上経った今も、創業当時から変わらない美味しい生ビールと洋食を提供し続けているのだ。
クリーミーな泡で覆われた黄金色のビールは、まさに芸術品と呼ぶにふさわしいビールだ。
もちろん見た目だけではない。
細かく何度も泡を切りながら注がれるビールは、キレのある味わいだが、泡によってしっかりとウマミを閉じ込められている。
クリーミーな泡は口当たりも優しく、まさに泡までうまいビールとなっているのだ。
・吉田健一さんのリクエストによって産まれたメニュー、それがビーフパイ
そんな100年以上受け継がれてきた伝統の絶品ビールを堪能しながら味わいたい洋食メニューがある。
それが今回ご紹介するビーフパイだ。
こちらのメニュー、日本の名総理の1人、吉田茂のご子息で英文学者だった故・吉田健一さんのリクエストによって産まれたメニュー。
ビーフシチューと議論を好んだ吉田健一さんが、「会話に夢中になると、ナイフとフォークで食べるのが面倒だ。話しながらでも、手づかみで食べらないものか」と、先代マスターに相談し誕生したのが「ビーフパイ」だったのだ。
香ばしく揚げられたパイ生地の中には、ゴロゴロと大振りの牛肉と野菜が入っており、さっくりとしたパイとの相性も抜群だ。
そんな美味しいビーフパイと美味しいビールを味わう、まさにオトナの贅沢な時間がここにはあるのだ。
多くの書店が立ち並ぶ、日本が世界に誇る本の街、神保町。
そんな神保町でお気に入りの本を手に入れたのなら、こちらのお店でビールとビーフパイを片手に、その本の包み紙を開けてみてはいかがだろうか?
子供の頃に流行る気持ちを抑えきれずにプレゼントのおもちゃを開ける、そんな感覚を持ちながら本の包み紙を開ける、そんな行為そのものはもしかしたら、普段忘れていた感覚を思い出させてくれるかもしれない。
そして、その行為に大人の黄金色の飲み物とサクサク・ホクホクのビーフパイを加えてみる、そんな小さな旅を楽しむのも、また一興かもしれないのだ。
Post: GoTrip! https://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア
お店 ビアホール ランチョン
住所 東京都千代田区神田神保町1-6
営業時間 月~金 11:30~21:30 / 土 11:30~20:30
定休日 日・祝
お店のHP http://www.luncheon.jp/