「広島観光」といえば、原爆ドームとともに宮島を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
そんな宮島のシンボルといえば、言わずと知れた厳島神社の大鳥居。近年では、神秘的な日本の風景として、世界的にも有名になりました。
そんな大鳥居、実は現在絶賛修理工事中なんです。
工事を知らず、「あの朱い鳥居が見られる」と思って宮島を訪れた観光客のなかには、ネットで覆われた大鳥居を見て大ショックを受ける人もちらほら…確かに、宮島を象徴する風景が見られないのは残念ですが、今回の修理工事は単なる工事ではありません。
大鳥居の大規模改修は、実に70年ぶり。「生きているうちにもう1度見られるかどうか」というくらいレアな工事なのです。
近年では世界的にも有名になった厳島神社の大鳥居は、高さ約16.6メートル、棟の長さ約24.2メートル、主柱周りは約10メートル。総重量は約60トンのスケールを誇り、平安時代末期から数えて8代目にあたるとされています。
現在の鳥居は1875年に再建されてから140年以上も経過しており、損傷や老朽化が進んでいるため、2019年6月17日から大規模な保存修理工事が始まりました。工事の修理時期はまだはっきりしておらず、まだ2~3年はかかるといわれています。
2020年11月上旬の大鳥居の様子はこちら。
全体がネットに覆われていますが、うっすらと鳥居のシルエットは確認できる状態です。
朱い鳥居が見られないのはなんだかさみしい気もしますが、これはこれでなかなか見られない光景。ライトアップされた夜の風景も人気で、「黄金の要塞」などとSNSを中心に話題を呼んでいます。
大鳥居こそ見られませんが、厳島神社自体は通常通り参拝可能。しかも、大鳥居が工事中の今だからこそ見られるあるものが展示されているのです。
それが、大鳥居に掲げられている扁額。
「扁額」というのは神社の表札のようなもので、どこの神社の鳥居にもかかっています。一般的には、表にひとつだけかかっていますが、厳島神社の場合、沖側に「厳嶋神社」、社殿側に「伊都岐島神社」と、異なる表記の2つの扁額がかかっているのが珍しいところです。
普段は沖側にかかっている「厳嶋神社」の扁額をこうして間近に見られるのは、保存修理工事の今の時期ならでは。扁額の修繕は実に13年ぶりで、2020年12月13日までの期間限定公開です。
実際に対面すると、思いのほか大きいことに驚きます。畳3畳分くらいのサイズがあるそうで、扁額の大きさからも、いかに大鳥居が大きいかということが実感できますね。
宮島のシンボルである大鳥居が見られないとなると、大鳥居以外の宮島の魅力が心に入り込んでくるから不思議です。穏やかな波の上を行き交う船や、海上に浮かぶように建てられた朱色の社殿を眺めていると、心がふっとほどけていくような感覚に包まれました。
コロナ禍で空いているかと思いきや、Go Toトラベル効果と、もう少しで紅葉のベストシーズンというタイミングもあって、平日にもかかわらず多くの日本人観光客で賑わっていました。コロナ禍で延期になっていたのか、修学旅行生の姿もとても多かったです。
とはいえ、厳島神社と桟橋周辺を少し離れると一気に人通りが少なくなり、古来より島全体が神が宿る御神体と考えられてきた宮島の自然美と清浄な空気に触れられます。
改めて認識する日本の美。宮島には厳島神社以外にも、豊国神社や大聖院などさまざまなパワースポットがあるので、ぜひ時間をかけてゆっくりと歩いてみてください。世界遺産にも登録されている霊峰・弥山に登ってみるのもいいですね。
今回、大鳥居の工事を知っていながら、あえて行ってみた宮島。宮島観光は初めてではありませんが、大鳥居以外に目を向けることで、宮島全体の魅力をより多く見つけられた気がします。
何よりも、近い将来、再び朱い大鳥居と対面するという楽しみを持ち帰ることができたのが最大の収穫でした。「近い将来、きっとまた来よう。美しくなった大鳥居に会おう」― そんな近いを胸に、宮島を去るフェリーに乗りこんだのでした。
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