予測市場とは、効率的な未来予測の提供を目的として、将来的なイベントを対象として投機やヘッジ目的での取引が行われる市場である。Ethereumのホワイトペーパーにもユースケースとして記載があるほど、早い段階から期待され開発が進められてきた領域である。しかし、レンディングやDEX、デリバティブなどと比較すると、予測市場の発展は遅れており、ユーザー数や取引高は非常に少ない。昨年9月、Ethereumの創設者の一人であるVitalik氏は「予測市場はEthereum Dappsのなかで最も過小評価されているカテゴリーである」とコメントし、AugurやOmenなどのプラットフォームの利用を勧めている。
Ethereum上で稼働する予測市場を提供するプロトコルは、Augur、Omen、Polymarketの3つが主流であり、オーダーブック型のAugurと、AMM(自動マーケットメイカー)型のOmen、Polymarketの2つに大別される。3つのプラットフォームを比較すると、現在OmenとPolymarketは立ち上がったばかりのプラットフォームであり、Augurがリードしていると見られる。
OmenはGnosisが開発するAMM型の予測市場であり、Augurが抱える流動性不足の解消を目指している。DAIの他にcDAI(Compound DAI)、ETH、USDCなどが利用可能であり、現在活発なマーケットのテーマは、Ethereumのガスリミット、ビットコインのマーケットシェアなどである。Omenの合計ユーザー数はAugurと同程度で、11月の大統領選の際にはAugurと同様に利用者が大きく増加した。
PolymarketもAMM型の予測市場である。非常に使いやすいUI/UXであるが、AugurやGnosisのような分散的な報告システムは使用しておらず、Polymarket自身がイベントの結果報告を行っているという意味で中央集権的である。また、カストディ型であるため、DeFiとしての性質は弱い。PolymarketのTVLは50万ドルほどで、Augurの1/25程度に過ぎない。直近の1日当たり取引高は約180万ドルで、合計ユーザー数は300以下である。なお、Augurについては「DeFiプロジェクト「Augur」」(※1)をご参照いただきたい。
Ethereum上の予測市場がさほど普及していない要因としては、(1)Ethereumの手数料の高さや処理速度の遅さなどのプラットフォームの要因、(2)流動性の低さ、(3)DeFiデリバティブや既存の予測市場サービスで代替可能という点、などが挙げられる。しかし、今後レイヤー2技術の実装で処理速度と手数料の問題が可決され、流動性マイニングなどにより流動性が生み出されれば、状況を一変させるプレイヤーが出てくる可能性は十分あると考えられる。市場全体の成長余地もまだまだ大きいが、既存のプロトコルはいずれも未だ小規模であり、新規プロジェクトにとっても参入余地は大きい。
※1:https://web.fisco.jp/platform/selected-news/00108100/0010810020210115001