三条大橋のそばにたたずむ「京都悠洛ホテル Mギャラリー」は、「大人の隠れ家」と表現するのにぴったりのプレミアムホテル。
2019年4月に「Mギャラリー」ブランドの日本第一号店としてオープンして以来、シックで雅な空間と洗練されたサービスで旅行者を魅了してきました。
筆者自身、一度宿泊してすっかりファンに。地下1階のレストラン「54TH STATION GRILL」のメニューが一新されたと聞き、再び足を運びました。
「54TH STATION GRILL」は、「東海道五十三次の続きの宿場町」というコンセプトから名付けられたレストラン。
以前は、世界各国の上質なお肉と旬の食材を組み合わせたフレンチビストロ料理を提供していましたが、今春、「Mギャラリー」のストーリー性や独自性を体現する、まったく新しいメニューに生まれ変わりました。
「54TH STATION GRILL」の新メニューコンセプトは、「Voyage-旅路」。江戸時代、東京から京都まで歩いて旅をするには最低2週間もの日数がかかりました。長旅を経て京都に到着した旅人は、各地の特産品を持ち寄って、無事に到着したことを祝い合ったそうです。
そこで「54番目の宿場町」という意味が込められたレストランにふさわしく、「54TH STATION GRILL」では、東海道の旬の食材と京都内外のこだわりの食材を組み合わせ、「食を通して旅する」をキーワードにしたコース料理をスタートしました。
「54TH STATION GRILL」ではランチコースとディナーコースを提供しており、ランチは「前菜6種と選べるメイン料理(魚料理または肉料理)、デザート5種、コーヒーまたは紅茶」、ディナーは「前菜6種、選べるメイン料理(魚料理と肉料理)、デザート5種、コーヒーまたは紅茶」というコース内容になっています。
ランチなら、前菜も含め12種類ものお料理やデザートを楽しむことができ、税サ込で4000円。これは、ホテルレストランとしてはコストパフォーマンス良すぎではないでしょうか。
それでは、実際にいただいたお料理の一例をご紹介しましょう(内容は時期によって異なります)。
まずは、6種類のお料理を少しずつ味わえる前菜から。
三段のお重のような形で提供されるプレゼンテーションにも意外性があり、「どんなものが出てくるんだろう」とワクワクします。
フレンチながら京懐石のような繊細なビジュアルは目にも嬉しく、「どれから食べようかな」と迷ってしまうほど。食材や調理法にも日本料理の要素が入っており、和洋のジャンルを超えた美食の競演が楽しめます。
「生春巻き 湘南シラス いくら マイクロリーフ 黄身醤油」
「生春巻きにシラス」という発想が新鮮に感じられましたが、もっちりとした生春巻きの皮とよく合います。口いっぱいに磯の香りが広がり、いくらがプチッと弾ける瞬間が楽しい!
「奈良の馬肉 雲丹 静岡山葵 芽葱」
馬肉は臭みが一切なく、口の中でとろけるような食感。雲丹が濃厚な香りを添え、芽葱が口の中をさっぱりと中和してくれます。
「塩麴フォアグラ ビーツ 紫蘇 半兵衛麩」
「塩麴×フォアグラ」という組み合わせも斬新。通常フォアグラは加熱しないと食べられない食材ですが、塩麴に2週間漬け込むことで加熱しなくても楽しめるようになるのだそうです。
舌の上でとろけるフォアグラは、未体験のなめらかさ。濃厚な風味だけに、苦手な人は「重い」と敬遠しがちなフォアグラですが、塩麴でマリネしたフォアグラは、典型的なフレンチのフォアグラとはひと味違う、さっぱりとした後味に仕上がっています。
続いてはいよいよメインディッシュの登場です。この日の魚料理は、「静岡下田の金目鯛 桜エビ 九条葱 はっさく」。
お料理がテーブルに置かれた瞬間、桜エビの香ばしい香りと、金目鯛のかすかな磯の香りがふんわりとひろがります。
これだけでも十分美しく、おいしそうなのですが…ここで、「54TH STATION GRILL」ならではの新しいアイデアが炸裂。
メインディッシュには3種類のコンディメントが添えられていて、これらを自由に盛り付けることで、自分好みにカスタマイズすることができるのです。
せっかくのお料理を自分の拙い盛りつけで台無しにしてしまわないか、おそるおそる新芽野菜やミニトマト、エディブルフラワー(食べられるお花)を盛りつけたら、こんな感じに。さらに彩り豊かで華やかになりました!
調子に乗ってお皿の余白にもお花を飾ってみると、なんとも「映える」一皿に。
昨今、SNSの流行で何かと「映え」が求められる世の中になっていますが、「見た目ばっかり追求してもねぇ…」と、食傷気味の方もいるかもしれません。
しかし、この「映え」は流行に乗っかった薄っぺらい「映え」ではなく、本物の「映え」。3種類のコンディメントには香りや酸味、色を補強する役割があり、すべて食べることもできるのです。
出されたものをそのままいただくのも素晴らしいですが、最後のプラスアルファの盛りつけを自分自身がすることで、「料理人はどうやって盛りつけを考えているんだろう」とシェフに思いを馳せるようになりますし、お料理にもさらに愛着が湧きます。
「どんな風に飾る?」なんて、同伴者との会話も弾みますね。
国内の高級ホテルの料理長を歴任してきた西村シェフが腕をふるう「54TH STATION GRILL」のお料理は、フレンチでありながらバターや生クリームを多用せず、素材を生かした上品であっさりとした味つけが特徴です。
この魚料理も、さっぱりとしたやさしい味わいの金目鯛と、適度に塩気をきかせた九条葱の風味豊かなハーモニーが魅力的。さらに、はっさくの実がプチプチの食感や爽やかさを、脇に添えられた根セロリのピュレがまろやかさをプラスしていて、一皿でさまざまな風味や食感が味わえます。
この日の肉料理は、「京都鴨肉 蜂蜜 胡桃 さくらんぼ」。
魚料理同様、3種類のコンディメントで飾り付けをすると、なかなかにアートな一皿に。
もっちりした弾力のある鴨肉と、甘ずっぱいさくらんぼや濃厚な蜂蜜が混然一体となって、これまでに体験したことのない世界が広がります。
意外に感じましたが、鴨肉とフルーツの組み合わせは、フレンチの世界では定番だそう。
西村シェフは、同じメニューであっても、盛り付けを含めて作り方や出し方を毎日少しずつ変えているといいます。そういう意味で、「54TH STATION GRILL」で出されるお料理のすべてが「今この瞬間」にしかないのです。
しかも、ただ単に違いを出すために変えるのではなく、「昨日より今日、今日より明日」と、「常に進化し続けること」を目指しているそう。「数あるレストランのなかから選んでくれたお客様の期待を超えるものを提供しないと、お客様は2度と戻ってきません」と。
より良いものを提供しようと日々研鑽を積む、職人気質のプロ意識にしびれました!
メイン料理をいただいた時点ですっかり満足してしまいましたが、最後にデザート5種盛りの登場。「京都悠洛ホテル Mギャラリー」はデザートも本当においしいんですよね。
この日のプレートは、桜の塩漬けとあわせて球体状にしたクリームチーズにミルフィーユ、抹茶のオペラ、バスクチーズケーキ、ブランマンジェ、桜のジュレという、古都の春を感じるラインナップ。
「こんなに豪華でいいの?」と、充実の内容と見た目の美しさに目を見張りました。
濃厚なチーズやほろ苦い抹茶、サクッと軽いパイ生地など、それぞれの素材の風味や食感を生かし、ひとつひとつ丁寧に作られたスイーツは、食べる人に幸せを運んでくれる存在。
ひとつ、またひとつと食べ進めるうちに、これまで目にした京都の春の情景が脳裏によみがえってきました。
コンセプトを含め、メニューがリニューアルされた「54TH STATION GRILL」。新メニュー「Voyage-旅路」を味わってみて、「これは…京都悠洛ホテル Mギャラリーの価値が上がったな!」と感じました。
もともと「Mギャラリー」は、その土地に由来する、そこにしかないストーリーを重視するホテルブランド。「京都悠洛ホテル Mギャラリー」も例に漏れず、空間演出のすべてにストーリーがある本物志向のホテルでした。
そして今回のメニュー刷新によって、レストラン「54TH STATION GRILL」のコンセプトやストーリーが強化され、「わざわざ足を運びたくなる付加価値」が加わったのです。
まさにこれは、ホテルとレストランの相乗効果。今後、ホテルのファンだけでなく、レストランのファンも増えるであろうことを予感しました。
Post: GoTrip! http://gotrip.jp/旅に行きたくなるメディア
【レストランの情報】
54TH STATION GRILL
所在地:京都府京都市東山区大橋町84(京都悠洛ホテル Mギャラリー内)
レストランの公式ホームページ:https://kyotoyurahotel-mgallery.com/ja/dining/54th-station-grill/