瀬戸内国際芸術祭の開催で注目を集める瀬戸内の島々。「瀬戸内」といえば現代アートはもちろんのこと、「猫」をお目当てに旅したいと考える人も多いのではないでしょうか。

瀬戸内にいくつかある「猫の島」のうち最も有名なのが、香川県仲多度郡多度津町に属する佐柳島です。五十嵐健太さんの写真集「飛び猫」や、NHK番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」で一躍有名になりました。

瀬戸内にはいくつもの「猫の島」がありますが、その中でも佐柳島を特徴づけているのが、まるで空中を飛んでいるかのような「飛び猫」の写真が撮れることです。

とはいえ、プロの写真家ではないアマチュアでもちゃんと「飛び猫」の写真が撮れるのか、気になるところですよね。そこで筆者も実際に佐柳島に赴き、「飛び猫」の撮影にトライしてみました。

佐柳島へのアクセスは、多度津駅から徒歩約16分のところにある多度津港からフェリーで約50分。多度津港と佐柳島の本浦港を結ぶフェリーは1日4往復しかないため、何時のフェリーで行って、何時のフェリーで戻ってくるか、あらかじめしっかりと確認しておく必要があります。

50分の船旅を経て、予定通り佐柳島に到着。佐柳島は人口60人程度の島というだけあって、港の周辺もひっそりとしています。

いったい、どのくらいの猫に出会えるのでしょうか?港の前にさっそく数匹の猫を発見しましたが、すでにエサやりをしている観光客がいるので、近づくのは諦めます。ひとまず港を背に反時計回りに歩き出すことに。

「あれ、思ったより猫が少ないな……」

過去に佐柳島を訪れた人のブログなどでは「人口より猫の数のほうが多い」「島に着いた瞬間、たくさんの猫に囲まれる」など、「猫の楽園ぶり」が披露されていましたが、第一印象では思ったほど猫がいないように感じました。港からちょっと歩いて出会える猫にはすでにエサやりをしている人がいて、なかなかモフモフ三昧とはいきません。

海に沿って堤防沿いを歩きはじめると、堤防の上でくつろぐ猫を発見。背後には瀬戸内の島と海。いかにも「猫の島」という光景です。筆者はほかの「猫の島」にも行ったことがありますが、意外とこういう写真ってなかなか撮れないんですよね。

「飛んでくれるかな」と思って、この猫ちゃんの前に島外で調達してきたエサを置いたところ、普通に歩いてエサのもとへ……。そりゃそうですよね。猫だって飛ぶ必要のないところではジャンプしません。

「そうか、堤防に切れ目があるところにエサを置けばいいのね」とわかって、切れ目の向こう側にエサを置いてみたところ、あっさりとジャンプしてくれました。

しかしエサを置いてから猫がエサのもとにジャンプするまで、体感的にはわずか2秒ほど。とてもエサを置いてからカメラを構える余裕はありません。

2人以上で行く場合は、「エサを置く人」と「写真を撮る人」で役割を分担すればいいのですが、1人の場合はそうもいきません。

そこで、以下のような作戦に変更しました。

①猫がエサを食べている隙に、気づかれないように堤防の切れ目の反対側にエサを置く
②カメラを構える(連写モードにセット)
③ビニール袋でシャカシャカ物音を立てるなどして、反対側のエサに気づかせる

なぜ最初に気づかれないようにエサを置くのかというと、猫が見ている前で切れ目の反対側にエサを置いてしまうと、カメラを構えるまでもなくすぐにジャンプしてしまうからです。そこで、あえて猫の目の前にちょっとだけエサを置いて気をそらし、猫が目の前のエサに集中しているうちに切れ目の反対側にエサを準備しておくのです。

この作戦で撮れた写真がこちら。

反対側のエサに気づいた猫が狙いを定め、

用意

ドンッ

着地!

この間本当に一瞬なのですが、連写モードで撮影するとスローモーションのように途中の経過がわかって面白いです(実際にはもっと細かく途中経過が撮影できます)。

このように、エサの置き方を工夫することで、1人であってもカメラの連写モードを使えば簡単に「飛び猫」の写真が撮れることがわかりました。

ただし失敗もありました。カメラの小さな液晶画面では気づかなかったのですが、後から見返すとぶれている写真が多かったことです。

後になって筆者のカメラには「スポーツファインダーモード」なる機能が搭載されていることがわかったのですが、時すでに遅し。筆者と同じようなミスを犯さないよう、手持ちのカメラの機能はあらかじめチェックしておきましょう。

とはいえ、瀬戸内の「猫の島」らしい「飛び猫」の写真が撮れたこと自体は大満足。思ったほど猫の数は多くなかったものの、2時間20分の滞在で20匹以上の猫たちに会うことができました。

中にはシャイな子もいるようでしたが、佐柳島の猫は人なつっこい子が多いのが特徴。

「ミャーミャー」とすり寄ってきて、しゃがむと自ら膝の上に乗っかってくる子もいるほどです。

「飛び猫」写真の撮影にはカリカリ系のおやつが便利ですが、猫たちに人気だったのが、「Ciaoちゅ~る」や缶詰に入ったウェットフード。

観光客がエサをやりにくるので、佐柳島の猫たちは結構舌が肥えていて、自分の好みのエサでないと食べない子も珍しくありません。猫と思う存分ふれあいたい人は、エサにもバリエーションをもたせておくとよさそう。猫好きな人にとっては、ただ猫と戯れているだけであっという間に数時間が経ってしまうことでしょう。

最後に、佐柳島は猫好きの聖地である以前に、この島で暮らす人々の生活の場。ゴミは必ず持ち帰るなど、島の人々の生活に配慮しながら猫との出会いを楽しんでくださいね。

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