イギリスは海に囲まれた島国でありながら魚よりも肉中心の食生活を送るひとが多い中で、健康ブームや動物愛護の観点から「べジタリアン(Vegetarian 菜食主義者)」や「ヴィーガン(Vegan 魚や肉だけでなく卵や乳製品など動物性のものを一切食べない絶対菜食主義者)」が多い国でもあります。
最近では普段は肉食でも都合によってベジタリアンになる「フレキシタリアン(Flexitarian)」なる人たちも増加の一途をたどっています。
フレキシタリアンは、週に1日ミート・フリーの日を設定したり、パーティーの多いクリスマス明けの1月はミート・フリー月間にするなど、健康のために肉の摂取量を意識して減らそうとしている人たちです。
そんな状況の中で、売り上げが急上昇しているのが肉の代替(だいたい)食品である「クオーン(Quorn)」です。
将来の食料難が懸念されはじめた1960年代のイギリスで開発がはじまり、1985年に初めて商品化されたクオーンは、現在、イギリスをはじめとするヨーロッパやアメリカ、南アフリカ、アジア太平洋地域で販売されています。日本ではまだ販売されていません。
英「デイリー・メール」紙によると、クオーン社の2017年の売り上げは前年比16パーセント増を記録したそう。
クオーンが他の代替食品と異なるのは、その原材料。肉の代替食品の多くが大豆や小麦などから作られているのに対し、クオーン商品の主な原材料は「マイコプロテイン(Mycoprotein)」という物質です。
マイコプロテインとは、真菌由来の食物たん白質並びに繊維源です。土壌から発見された天然の真菌を発酵させて『生地(dough)』を生成し、これに商品よって卵や砂糖、小麦、カルシウム、ビタミンやミネラルを加え、高タンパクの人工肉や人工魚肉が製造されています。
素材そのものだけでなく、ハムやソーセージなどの人工加工肉、温めるだけで食べられるパスタやカレーなどのチルド食品など、幅広い商品を展開しています。
また、ベジタリアン商品に加え、ヴィーガン、グルテンフリー商品も発売しており、パッケージにわかりやすく表示されています。
数ある商品の中の定番、ひき肉の代替食品である冷凍のクオーン・ミンス(500グラム)は一般的なスーパーで定価が3ポンド前後(約450円、2018年3月現在)で、筆者が購入した際はセール中で1.39ポンド(約208円、同)。
今回はこの「クオーン・ミンス(Quorn Mince)」を使って、麻婆豆腐を作ってみました。果たしてどんな味わいになるのでしょう。
見た目は、冷凍焼けしてしまった白茶けたひき肉にそっくりで、ポロポロとしていて生肉のようにくっついていません。
パッケージには冷凍のまま調理できると書いてあるので解凍不要で便利。
お勧めのメニューとしてスパゲティ・ボロネーズ、コテージ・パイ(ひき肉を煮込んでマッシュポテトをのせて焼いた料理)、タコスのフィリングと書かれていますが、ここは日本人の大好物である麻婆豆腐を作ってみます。
材料はクオーン・ミンスと豆腐、その他調味料など。
鍋に油をひき、香味野菜の香りがでるまで炒め、クオーン・ミンスを投入します。
はじめから茶色いので、炒めても色が変わりません。
本物の豚肉の様に肉からでる油がないので鍋にくっつきやすく、油を少量足しました。
調味料を投入します。鶏がらスープの素も用意しましたが、せっかくなので完全なベジタリアンにしてみようと、使用するのをやめました。
料理をしていて、これが肉でないとなかなか思うことができません。
水を入れて少し煮立たせ、豆腐を投入します。少し煮崩れて大きなミンスのかたまりが少なくなったような感じがします。
最後に水溶きコーン・フラワー(イギリスでは片栗粉を入手しにくいのでコーン・フラワーで代用しています)でとろみをつけ、味を調えてネギを投入すれば出来上がり。
どこからどう見ても普通の麻婆豆腐が出来上がりました。
味は何の臭みもなく肉のような感じはしますが、本物の肉との決定的な違いその食感。本物のひき肉のような歯応えがなく、少々水っぽく柔らかい食感です。
煮込むと水っぽくなるようなので、タコスの具のようなドライな料理のほうが合っているかもしれません。
ミンスに関して言えば味にクセがなくどんな料理に使用しても味の邪魔をしなさそうなので、フレキシタリアンのごとく『最近肉を食べ過ぎているな』と感じた時用に、冷凍庫に常備しておくのもいいかもしれません。
イギリスを訪れた際は、スーパーで調理不要なハムなどのクオーン商品も売られていますので、話のネタに味見をしてみてはいかがでしょうか。
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