おそらく世界で最も有名なバックパッカー街といえば、タイの首都バンコクにあるカオサン。

南国特有ののんびりした空気や物価の安さ、ご飯のおいしさ、観光客に必要なものが一通りそろう利便性から、バンコクは長らくバックパッカーたちの「沈没地」として不動の地位を維持してきました。

そのなかでもバックパッカー御用達の安宿街がカオサンロード、通称「カオサン」だったのです。

いまもバックパッカー街としての役割が失われたわけではありませんが、近年のカオサンは少々様変わりしつつあります。

それは、ほかのエリアに宿泊しつつも「かの有名なカオサンとはどのようなところか一度見てみたい」という旅行者までもが集まる観光地と化していること。若い外国人観光客のみならず、高級ホテルに宿泊していそうな中高年の欧米人旅行者や、タイ人の若者の姿も見られるようになりました。

世界屈指のバックパッカー街がどのような発展を遂げているのか、カオサンの今をレポートします。

・「カオサン」ってどこにあるの?

カオサンロードがあるのは、王宮やワット・ポーなど、バンコクを代表する観光スポットが集中する旧市街エリア。  

BTSやMRTでのアクセスはできず、公共交通機関ならローカルバスまたはチャオプラヤー川を運行するボートでのアクセスになります。ローカルバスやボートでのアクセスは時間がかかるので、メータータクシーを利用してもいいでしょう。

「カオサン」というとき、「カオサンロード」だけを指す場合もあれば、カオサンロード周辺の賑やかな通りも含めた「カオサンエリア」を指すこともあります。ここでは、カオサンロードの周辺の通りも含めたカオサンエリアをご紹介したいと思います。

・カオサンロードの歴史

今では世界屈指のバックパッカー街として名を馳せるカオサンロードですが、その歴史は少々意外なものでした。

「カオサン」とはタイ語で「精米」を意味し、1970年代までこの周辺には米問屋が多かったことからその名が付きました。

70年代に問屋街で働く地方出身者たちのための安宿ができ、その後修行僧のための物資を売るお店が生まれ、多くの修行僧がやってくるように。当時のカオサンロードは修行僧の出入りが多かったことから、「宗教通り」と呼ばれていたのだそうです。

そして70年代の後半にはヒッピー文化の発信地として、少しずつ世界に知られるようになっていきます。80年代には外国人旅行者が増え、彼らのニーズに応える形で地元住民が部屋を貸し出すようになり、旅行代理店やレストランなども次々とオープン。

カオサンロードはバックパッカー街として発展をはじめます。

その知名度をさらに高めたのが、2000年公開のアメリカ映画「ザ・ビーチ」。カオサンロードが映画のロケ地となったことで、世界中から旅行者が訪れる観光地となったのです。

・昔ながらのタイと欧米文化が混在する不思議世界

カオサン一帯は、昔ながらのタイの風景と、欧米文化が混在する魔訶不思議な世界。欧米人好みのバーやレストラン、スーツの仕立て屋、アクセサリーショップなどがあったかと思えば、その横では行商人がローカルフードを売り歩いています。

その光景がなんだかミスマッチで「演出なのではないか」と思ってしまうほどですが、カオサンではそれが自然発生的に起こっているのです。

カオサンエリアを代表するカオサンロードはとにかく賑やかですが、少し外れるとのんびりとしたタイらしい空気が流れている場所も。カオサンの奥深さを感じるなら、ぜひカオサンロードだけでなく、周辺の通りも散策してみてください。

・欧米人好みのバーやレストランがずらり

カオサンロードは全長約300メートルの通り。通りに面して、バーやレストラン、安宿、土産物屋、両替屋、旅行代理店、ランドリーサービス、床屋、マッサージ店など、旅行者のニーズに応えるさまざまな商品やサービスがひしめき合っています。

なかでも目立っているのが、パーティー好きな欧米人が好みそうなオープンなつくりの大型バー。

カオサンは「落ち着いてお茶がしたい」という人よりも、「賑やかにお酒を楽しみたい」という人に向いているスポットなので、大音量の音楽が流れるバーや、大画面でスポーツ中継が観られるバーなど、複数人で盛り上がるためのお店が充実している印象です。

最近ではタイとヨーロッパの要素をミックスさせたおしゃれなバーやレストランがさらに増え、カオサン一帯はバンコクのなかでも特に欧米文化の影響が強く感じられるエリアです。

・「ベタ」なタイ雑貨やローカルファッションが充実

外国人率が高いカオサンでは、外国人が思うタイのイメージを反映したタイ雑貨やローカルファッションが充実。

象の柄がプリントされたコットンパンツなど、現地のおしゃれな若者は絶対に身に着けないようなものが多いですが、「タイに来たからにはエスニックなファッションがしてみたい」あるいは、「暑いからとにかく涼しくてラクな服が着たい」と思う外国人旅行者には受けている模様。

象をかたどったお香立てとお香のセット、象のぬいぐるみ、キャンドルなど、タイ土産としてはテッパンともいえる雑貨も豊富に揃っています。

そういったものは現地の若者が集まるショッピングスポットにはあまり売っていないので、カオサンはベタなタイ雑貨の調達には便利な場所だといえるでしょう。

・おしゃれな雑貨ショップも増加中

カオサンが観光地化されるにつれて、ただ安いだけでない、洗練されたワンランク上のアジアン雑貨を求める人も増えてきました。そんな流れを受けて、近年カオサンではベタなタイ雑貨のお店だけでなく、おしゃれでモダンな雑貨ショップも増えています。

その筆頭が、カオサンロードに立つドナルド像の背後に店を構える「ロフティーバンブー」。

フェアトレードを推進する雑貨ショップで、タイの山岳民族のデザインを取り入れたポップな雑貨が日本人や欧米人に高い人気を誇っています。主張しすぎないアイテムも多く、日本でも取り入れられそうなアイテムが見つかるのもポイント。

・気軽に楽しめる屋台メシ

タイのローカル体験といえば、なんといっても屋台メシ。しかし、地元の人が多いエリアで屋台に挑戦するのは、東南アジアに慣れていない人にとっては色んな意味でハードルが高いことも・・・

第一に衛生面。「タイの屋台でお腹を壊した」という体験談は枚挙にいとまがありませんし、メニューがなく英語も通じにくいローカル屋台では、そもそも何を売っているのかすらよくわからないこともあります。

しかし、カオサンロードに並ぶ屋台はそんな屋台初心者の不安や悩みを解消しています。

「絶対安全」とは言い切れないものの、カオサンロードの屋台のお客さんのほとんどは外国人で、見た目も比較的こぎれい。屋台が初めての人でも、まったくのローカル屋台に比べるとチャレンジしやすいでしょう。

さらに、英語で料理の名前や金額が表記されていて、勝手がわからない外国人にも何をいくらで売っているのかが明快です。「タイ風焼きそば」とも呼ばれるパッタイや、焼き鳥「ガイヤーン」など、外国人に人気の定番タイ料理が気軽に味わえます。

・マッサージ店もよりどりみどり

カオサンでは、マッサージ店の多さも目立ちます。特徴的なのが、店の前にずらりとマッサージ台を並べたお店が多いこと。

タイ人が行くローカルなマッサージ店ではあまり見ないスタイルです。これも欧米人が考える「エキゾチック体験」のイメージを反映してのことなのでしょうか。

数が多いだけあって、バンコク市街としては料金の安い店が多い印象。カオサンで歩き疲れたら、タイマッサージを受けてみるのもいいかもしれません。

・外国人が求める「タイのローカル体験」が気軽に叶う場所

ひとことでいえば、カオサンは、屋台での食事、アジアン雑貨のショッピング、マッサージなど、外国人が求める「タイのローカル体験」が気軽に叶えられる場所。

観光地化されたことで、旅慣れたバックパッカーのなかにはカオサンから離れていった人も少なくありませんが、バンコクでバックパッカーデビューを果たす人や、「バックパッカーではないけれど、ちょっとバックパッカー気分を味わってみたい」という人には頼もしい存在であることは変わらないようです。

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