お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣氏が自身のブログで「3億円の借金をして自分の作品をテーマにした美術館を地元に建てるので寄付してほしい」という趣旨の呼びかけを行い、物議を醸しています。

簡単に言えば「夢を実現するために3億円の借金してしまった、お前ら寄付してくれ」と呼びかけたものの、実際には3億円の借金は嘘で、出演ギャラの出ている番組企画の仕込みであって、それって単なる募金詐欺という立派な犯罪を西野氏が堂々とやってるだけなんじゃないの、という話なのですが。

いったい何をしているんですかね。

【悲報】キンコン西野、3億円の借金を抱える(魚拓)

https://megalodon.jp/2018-0606-0928-26/https://ameblo.jp:443/nishino-akihiro/entry-12381381895.html

文中、西野氏が「借金返済が番組の企画になっているがガチ自腹だからな」とまで記述されており、これは芸能人動画サイトSHOWROOMで始まる西野氏のネット番組と見られます。その番組の企画として「西野氏が個人的に3億円の借金を背負い、ユーザーやファンからこの資金を集めて美術館を建設する」というある種のクラウドファンディング的な仕組みを念頭に置いているように読めるわけですね。つまり、西野氏の書き込みだけみるとSHOWROOM公認の企画のように見えてしまうのです。

ところが、この西野氏の仕組みは「詐欺ではないか」との指摘がネット上で相次ぎ、炎上状態になってしまいます。ふだんは相場で忙しい金融クラスタもいきなりの著名大型詐欺事案の登場に総立ちになっております。

もちろん、西野氏はある意味で炎上上等、アンチ歓迎の姿勢で名前を売りながら頑張ってきた人物であるだけに、この炎上も仕込みなのかと思っていたのですが、書き込みを見たユーザーが警察庁などに大量に通報。この内容だと「3億円の借り入れがないとすれば、すでに判例のある募金詐欺と同等で、刑法詐欺罪に該当するので本当に募金してしまった人が被害を申し立てたら冗談では済まなくなる」(消費者問題に詳しい弁護士)とされ、また、西野氏の所属する吉本興業でも関係者は「寝耳に水。(いま募金用に)公開している(西野氏個人会社名義の)募金口座は止めて、仕切り直しをするしかないのでは」と頭を抱えています。

肝心の西野氏はすでに始めた話を引っ込めるわけにはいかないのか、なぜかブログで「『すでに3億円の借金をしている』とも取れる表現をしてしまいましたが、記者会見でも申し上げましたとおり『3億円の借金ができるメドが立っている』ということで、これから借りる形となります」と釈明。つまり、まだ借金をしたわけでもないのに、借金をしたことにして募金を見切り発車したことになり、一層悪質で犯罪性が高いことを自分から書いてしまったことになります。こういうの、普通は所属事務所や弁護士と相談してから書くよなあという感じの自爆です。

また、同時に西野氏はブログでは「貯金がない」とも記述する一方、17年1月には西野氏は「お金の奴隷開放宣言」と称して、美術館のテーマとなった絵本『えんとつ町のプペル』を無料公開しています。おそらく、今回もそういう「ノリ」で美術館事業のための資金を集めることを思い立って、面白いと思って違法性に気づかずそのままやってしまった、ということなのでしょう。

常識的には、事業計画を公表するなどして出資を募るクラウドファンディングの形態をとれば問題ないところを、クラウドファンディング業者への手数料支払いが嫌なのか、自分の名前を冠した個人会社名義の口座に直接寄付を募る形を取っています。個人使途なら西野氏個人が所得税を、法人での事業として認められるようであれば法人税を集まった金額から支払わなければならないばかりか、事業性資金を寄付で募るというのは出資法にすら正面から違反する行為でありまして、なぜ吉本興業の弁護士に事前に企画相談するなどしなかったのか悩ましいところです。

募金詐欺については、基本的に「無い話をでっち上げて同情や関心を煽り、金品浄銭を集め詐取する行為」(消費者問題に詳しい弁護士)であり、2010年に最高裁判決で小額かつ不特定多数の被害であっても詐欺罪が成立することが確定しています。西野氏の行為は「募金詐欺の典型例」(同)ということで、募金に応じてしまった被害者の行動によっては摘発されかねない行為であろうと思います。

偽募金、被害未特定でも詐欺罪 最高裁が初判断:日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1903G_Z10C10A2CC1001/

さらに、西野氏はどうもノリで人から金を違法にネット経由で集める悪い癖があるのではないかと思しき事例に事欠かないのが気になるところです。過去には「新宿から五反田までの電車賃がない」と称してネット上で資金を募り、実際に10万円を超えるお金が集まったあとで実は手持ちの電車賃がありすでに五反田に帰っていることを明かすという、みようによっては悪質な寸借詐欺2.0みたいなことを平気でやってしまう感性の持ち主だということにもなります。

今回、ネット番組の企画と西野氏に明言されたSHOWROOMは、関係者も「番組の企画として西野さんとそのような打ち合わせをした経緯は無かった。あくまで西野さんが独自で考えて発表された内容です」として、SHOWROOM公認の番組企画であることを否定。そうですか。まあ新番組やろうとしたらいきなり犯罪まがいの企画を立てられて準備万端対応できるはずもなく、ご愁傷様であります。

また、吉本興業は取材に応え「『猫舌SHOWROOM』につきましては、西野亮廣の発言、表現の場としてSHOWROOMさまより提供いただいているという認識です。したがって、番組側の演出はございません」としたうえで、西野氏について「本人の熱い思いとアイディアを勢いで語ってしまったことについては、軽率の誹りを逃れられないものと認識しており、本人も深く反省しております」と回答しています。そうですか。

ただ、西野氏本人はブログで「むしろ、美術館の方は友達がおおいに助けてくれて『生』を実感できるほどです」とのほほんとした文章をお詫びにくっつけて上げている程度で、まだ寄付を募るブログ記事を削除せず、他の案の提示もされていない状況です。単にネタ的にノリ上等で批判も炎上も構わず面白おかしくやる西野流の目立ち方だと思う一方で、お前それ次長課長河本クラスの失態にまでなる可能性を秘めてる案件になっちゃうんじゃないかという心配もまた覚えるわけであります。

個人的にはせっかく美術館を作るネタを番組でやるんだったら、いったん仕切り直して、楽し気な事業計画やらアイデア募集やらしながら一口いくら、収支公表の方法なども明記して、ちゃんとやればいいのにと思うところ大です。なんかこう、事務所の言うことを聞かないでノリでやるのが面白いと思い込んでいるのかもしれませんが、やってることは悪質な違法事案なので革命のファンファーレを鳴らす前に鏡を見ろという気もしなくもありません。

それもまた、ひとつの才能の輝き方なのだとしても。