メルヘンチックな中世の町並みや、愛らしい雑貨で注目度上昇中のポーランド。

クラクフと並び称されるポーランドで最も美しい町のひとつが、バルト海沿岸の港町グダンスクです。

グダンスクは世界遺産の暫定リストにも掲載されており、正式に世界遺産に登録される日も近いのではないかといわれています。

ポーランド最大の港湾都市であり、ポモージェ県の県都でもあるグダンスクは、自由都市、ポーランド領、プロイセン領とその帰属をたびたび変えてきた波乱万丈の歴史をもち、ドイツ語名では「ダンツィヒ」といいます。第2次世界大戦後の1952年、ポーランドの独立の回復に伴い、ポーランド領に復帰しました。

グダンスクが黄金時代を迎えたのは16~17世紀のこと。

14世紀にハンザ同盟に加盟したグダンスクは、16世紀にポーランド王国の直接の庇護を得て、大幅な自治権を確立します。当時のグダンスクの住民は、ドイツ人が多かったものの、ポーランド人やユダヤ人、オランダ人なども多く、異なる民族や宗教が共存する交易の拠点として繁栄を謳歌しました。

国際的な港湾都市としてさまざまな国や都市と交流してきた歴史から、グダンスクはポーランドのなかでも特異な町並みを誇ります。

ゴシックやルネッサンス、バロックといった各時代を代表する壮麗な建築物で彩られたグダンスクの旧市街。西ヨーロッパの建築様式と、ポーランドの建築様式が融合した独特の風景は、一度見ると忘れられないほどのインパクトを残します。

パステルカラーの建物が生み出すメルヘンチックな雰囲気と、レンガ造りの建物が醸し出す重厚感が見事に一体となったグダンスクの町並みは、「これぞハンザ都市!」とでもいうべき貫録と華やぎに満ち溢れています。

特別何をするでなくても、その美しい風景の中に飛び込むだけで、満ち足りた幸せな気分になれるはず。

旧市街の玄関口となるのが、1588年に完成した「高い門」。建設当時は跳ね橋になっていて、グダンスクの町を外敵から守っていました。門には天使やライオンの彫刻に加え、ポーランドやドイツ騎士団、グダンスクの紋章が飾られています。

高い門と壮麗な「黄金の門」をくぐって旧市街に入ると、広々としたメインストリートであるドゥーガ通りに出会います。レストランやカフェなどが並ぶこの通りは、世界各国からの旅行者が集まりとても賑やか。

別名「王の道」とも呼ばれ、かつてはポーランドの国王が数千人もの参加者を携えてパレードを行った場所でもありました。市民による熱烈な歓迎もあり、およそ550メートルの通りを過ぎるのに8時間もかかったとか。

ドゥーガ通りの奥には、中世貴族の住居だった建物が連なる格調高い雰囲気のドゥーギ広場があります。ワルシャワやクラクフの旧市街にある広場とは違って、人が集まる広場というよりはむしろ通りのような構造がユニークです。

広場には、グダンスク旧市街のシンボル的存在であるネプチューンの噴水があります。こうして海の神を大切にしているのも、港町ならでは。

色とりどりの建物が並ぶ通りでひときわ目を引くレンガ造りの大きな建物が、14世紀に建設が始まった市庁舎。そのどっしりとしたたたずまいと、天を射るような端正な尖塔が、カラフルな建造物が連なる町並みにアクセントを与えています。

高さ82メートルの尖塔の上には、16世紀のポーランド王であったジグムント2世の黄金の像が。現在、市庁舎の内部は博物館として公開されていて、「赤の広間」と呼ばれる評議会室をはじめ、豪華な部屋が見学できます。

ドゥーギ広場を過ぎて「緑の門」をくぐると、港町グダンスクを象徴する旧港の風景が目に飛び込んできます。

運河にはボートが停泊し、運河沿いにはレストランやグダンスクの名産品である琥珀を売る土産物屋などが軒を連ねます。

このモトワヴァ運河は、ハンザ同盟時代から19世紀ごろまでは多くの船が行き交い、港湾都市らしい活況を呈していました。船の大型化に伴い、本来の港の機能は近郊のグディニアなどへと移ってしまいましたが、旅行者が集まる観光の拠点として再び賑わいを取り戻しています。

運河に架かる橋を渡って、対岸から眺める旧市街の風景は最高。ガイドブックなどでもよく紹介される、グダンスクの魅力が凝縮された景色が楽しめます。

ほかの建物とは色も形も大きく異なる異色の存在が、ポーランド語で鶴を意味する「ジュラフ」と呼ばれる木造クレーン。もともと14~15世紀に造られましたが、現在見られる建物は、第2次世界大戦で焼失した後、戦後になって再建されたものです。

かつては世界最大の木造クレーンだったこともあるそうで、貿易船への荷物の積み下ろしを行ったり、船のマストを立てたりするために使われていました。現在は、ポーランド海洋博物館の一部として使われています。

その昔はハンザ都市として繁栄を謳歌し、現在はポーランド屈指の観光都市となったグダンスク。旧市街に一歩足を踏み入れたら最後、華麗なる建造物の数々が見せる多彩な表情にすっかり魅了されてしまうことでしょう。

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