世界初のドライブイン・チェーン店は、1921年にアメリカのテキサス州ダラスに開業した「ピッグ・スタンド(Pig stand)」だという。
モータリゼーションの発達に伴い、「ピッグ・スタンド(Pig stand)」のようなドライブインが全米に普及していった。アメリカでは車に乗ったままで映画を見られるドライブインシアターなど、車社会を象徴するような日本では想像のつかないドライブインが存在している。
そんなモータリゼーションの波が本格的に日本にやってくるのが、高度経済成長期(いざなぎ景気時代)と呼ばれる1960年代半ば昭和40年前後だ。
第二次世界大戦後から5年後に勃発した朝鮮戦争によって在朝鮮アメリカ軍および在日アメリカ軍から日本に発注された物資やサービスは朝鮮特需と呼ばれるほどの莫大な経済効果をもたらし、それにより日本の経済は戦後から急速に立ち直ることになる。
そして終戦から僅か11年後の1956年、経済白書には 「もはや戦後ではない」という言葉が掲載されるほど日本は戦後からの復興をとげ、1950年代後半には、三種の神器として白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫の家電3品目が一般家庭に普及し始めることになる。
そしてその次の10年、1960年に勃発するのがベトナム戦争。またしても戦争特需の恩恵を受けた日本経済は先進国の仲間入りを果たすほど目覚ましい発展をとげていく。
そしてそのタイミングで一般家庭に普及しはじめたのが、新・三種の神器として知られる、カラーテレビ (Color television)・クーラー (Cooler)・自動車 (Car) の3種類。
そんな日本の奇跡的な成長を背景に、1960年代半ばから多くの国道には多くのドライブインが乱立していったのだ。
しかしながら、時代が移り変わっていく中で全国に高速道路が整備され、サービスエリアが整備される。そして、今では多くのドライブインが廃業しており、日本にあるドライブインは、そのほとんどが失われつつあるのだ。
今回は、そんな昭和の華々しい時代の香りを感じられる、数少ない日本各地のドライブインの中から、今回は長野県塩尻市にあるロードサイドレストランをご紹介したい。
お店の名前は「食堂SS」。
・創業1965年の木曽路が誇る老舗ドライブイン、それが「食堂SS」
こちらのお店、中山道33番目の宿場・贄川にあるお店。
贄川は現在は塩尻市に属しているのだが、江戸時代は木曽路最初の宿場としての日本4大関所であった木曽の福島関所の補助的役割を果たしていたのだという。
そんな江戸時代の重要な拠点の1つだった贄川に、このお店はあるのだ。
そしてこちらのお店の創業は日本にモータリゼーションがもたらされた時代と合致する1965年(昭和40年)。
1965年(昭和40年)と言えば、初の国産旅客機YS-11が就航し、海外団体旅行用の「ジャルパック」が発売開始、プロ野球において第1回ドラフト会議開かれ、大学生100万人突破するなど、その後の日本の発展を予期させるような様々な出来事があった年。
そんな時代にこのドライブインは産まれたのだ。
こちらのお店はそんなモータリゼーションがもたらされたこの時代から、今もなお多くの人々を変わらぬ味わいで、もてなしてくれているのだ。
・オススメしたいサバの煮付けと豚の生姜焼き
こちらのお店には、膨大なメニューがあるため、心のおもむくままに自分の好きな物を食べる、そのようなスタイルで味わうのが一番のオススメ。
しかしながら、何度も通う常連さんいわく、まずオススメしたいのはサバの煮付け。
食堂のお母さん達が、毎日作るサバの煮付けは、濃厚な味わいが楽しめる絶品のメニューの1つ。
そのためこちらのサバの煮付け一切れでご飯1杯は軽くいけると思えてしまうほどなのだ。
そしてご飯のお供にもう一品付け加えるのであれば、豚の生姜焼き。
しっかりとすり下ろされた生姜に甘辛い美味しい味付け、木曽路のトラックドライバー達がこよなく愛する味わいがここにはあるのだ。
・他のメニューだってもちろんウマい
数えきれないほど存在するSS食堂のメニューは、木曽路のトラックドライバーたちがオススメするメニュー以外ももちろん美味しい。
例えばオムライスだが、しっかりと薄焼きされたタマゴには、ギッシリとたっぷりのケチャップライスが詰まっている。
ハムのうまみにタマネギの食感と甘みをしっかりと味わえる美味しいケチャップライスはそれだけで懐かしいと感じられる味わい。
そんな美味しいケチャッライスは、しっかりと薄焼きされたタマゴの優しい味わいと最高の組み合わせを楽しませてくれるのだ。
ただし、オムライスをオーダーしてしまうと他のメニューにまで手が伸びないほどのボリュームが凄まじいため、遠方からくる方には気をつけてもらいたい。
もちろん定食屋の定番メニューである唐揚げも秀逸。
しっかりと醤油のしみ込んだ唐揚げは、どんなメニューとも相性抜群であるため、若手のトラックドライバーに人気のメニューだそうだ。
もし、岐阜県中津川市から長野県塩尻市を結ぶ木曽路を旅することがあれば、こちらのお店に立ち寄ってみるのはいかがだろうか?
きっとそこには、中山道木曽路を駆け抜けるトラックドライバー達がこよなく愛してきた味わいがあるのだ。
そして、平成がおわり、次の時代が来ようとしている今でも味わえる懐かしいメニューの数々は、中山道を訪れる旅人が江戸時代へのタイムスリップを感じるのと同じように、昭和の時代へとタイムスリップさせてくれるに違いないのだ。
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お店 食堂SS(しょくどうえすえす)
住所 長野県塩尻市贄川1872
営業時間 6時00分 ~ 21時30分
定休日 年末年始、お盆、5月第3日曜
お店の公式ホームページ http://www.shiojiri.or.jp/member/data/0264342234/1.html