バックパッカーのあいだでは「沈没地」として知られるコーカサスの国、ジョージア(グルジア)。確かに、物価が安く食事もおいしいこの国には、ついつい長期滞在したくなってしまう魅力があります。
「ヨーロッパの秘境」とも呼ばれるジョージアは、大自然が織り成す絶景の宝庫。
なかでも、ジョージアを訪れる旅人が絶対に見逃してはならないのが、カズベキ村の山頂に建つツミンダ・サメバ教会です。
その神秘的な姿はは、ロシアの作家プーシキンをして「日の光に照らされ、まるで雪に支えられて空中に浮かんでいるように見えた」といわしめたほど。
標高2170メートル地点の山中に建っていることから「限りなく天国に近い教会」とも称され、イギリスのテレグラフ誌によって「世界の驚くべき教会23」のひとつに選ばれました。
ツミンダ・サメバ教会を擁するカズベキ村は、首都トビリシから北へおよそ150キロ、あと少しでロシアとの国境というところにあります。
トビリシからカズベキを経て、さらにロシアのウラジカフカスへと続く約200キロのハイウェイは「ジョージア軍用道路」と呼ばれ、1799年に帝政ロシアが軍事用に切り拓いたもの。
そのいかめしい名前とは裏腹に、5000メートル級の山々が広がる、ジョージアの大自然を望む景勝道路として知られています。
トビリシからカズベキまでは、地下鉄ディドゥベ駅前からマルシュルートカ(乗り合いバス)で2時間半~3時間程度。日帰りも可能ですが、個人で行く場合はカズベキに一泊するのがおすすめ。時間が限られている場合には、トビリシからの日帰りツアーを利用するのも手です。
トビリシを出発すると、城壁に囲まれたアナヌリ教会や、帝政ロシアが東ジョージアのカルトリ・カヘティア王国を保護国化した200年記念に造られたモニュメントなど経て、カズベキへと到着します。
カズベキの村からツミンダ・サメバ教会へは、徒歩または車で行くことになります。時間があれば、往復約4時間のショートハイキングコースを歩いて、のんびりと自然に身を置いてみるのもいいでしょう。
車で行くなら、もれなく三菱の四輪駆動車に乗ることになるはずです。
ツミンダ・サメバ教会は2170メートルの高所に位置しているうえ、村から教会までの道路は一切舗装がされていないため、教会までの道のりは、上下に左右にと大揺れ。とてもではありませんが、大型バスなどが通れる道ではないのです。
ぬかるんだ穴ぼこだらけの道に揺られながら教会を目指す。それだけでも日本ではできない非日常の体験です。
四駆に揺られて教会が建つ山の上に到着すると、景色が一変。
あたり一面に、万年雪化粧を施した標高5000メートルを超えるカズベキ山のダイナミックな風景が広がっています。荒々しい山肌に、光と影が模様を描く様子はえもいわれぬ美しさ。
そしてその手前には、「孤高」という言葉がぴったりのツミンダ・サメバ教会の姿・・・
「限りなく天国に近い教会」といわれるのも納得で、「神々しい」という言葉はこのような場所のためにあるのだと思うほど。少しでも神に近づこうと、このような場所に教会を造った人々の気持ちを思うと、胸が熱くなります。
14世紀に建てられたツミンダ・サメバ教会は、典型的なジョージア正教の教会。
中世の戦乱の時代やソビエト時代には、大切な宝物や聖遺物がここに保管され、ジョージアの人々の信仰を守る役割を果たしていました。こうしたエピソードからも、この教会が簡単にはたどり着けない秘境であったことがわかります。
教会の手前の草原には、草を食む馬たち。
山と教会、馬が織り成す原始的な風景を眺めていると、21世紀にこのような場所が残っていることが奇跡のように感じられます。
雄大な自然と純粋な信仰心の融合によって生まれたここだけの風景は、「これぞ絶景!」とでもいうべきとびっきりの景色。
きっと、いつまでも忘れられない風景として心に残ることでしょう。
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