江戸時代、日本橋を拠点として江戸と各地を結んでいた五街道。そのひとつである中山道は日本橋と京の三条大橋を結ぶ重要な街道なもので、商人や旅人が行き交う街道沿いにはいくつもの宿場町が発展しました。
そんな中山道のなかでも急な山道を通ることで知られているのが、長野県から岐阜県にまたがる木曽路エリア。この地域の街道沿いにある11の宿場町を総称して「木曽路十一宿」と呼ばれ、中山道でも当時の面影が特に色濃く残っている場所として知られています。
さて今回紹介する奈良井宿は、そんな木曽路十一宿のなかで江戸から2番目の場所に位置する宿場町。現在は長野県塩尻市になっており、訪れる際は隣の松本市を拠点にすると便利です。
小さな駅から降り立つと、目の前に広がるのはなんともノスタルジックな田舎町。初めてこの地を訪れた筆者も、以前にもここへ来たことがあるような、どこか懐かしさを感じずにはいられませんでした。
江戸時代から明治時代にかけて建てられた木造住宅がならぶ奈良井宿。ここまで保存状態の良い宿場町は希少価値も高く、昭和53年には国の重要伝統的建造物群保護地区にも指定されました。
昔懐かしい街並みが1kmほど続く奈良井宿。駅のちかくは時が止まったかのように静かでしたが、宿場町の中心あたりでは観光案内所のほかお店や飲食店が並び賑わいを見せています。
観光案内所の扉は、かがまないと入れないほど小さなもの。障子の張られた扉はまるで祖母の家に遊びに来たかのような気持ちにさせられます。
宿屋や食事処の店先に見られるのれんや千本格子の扉は、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのよう。電気もない当時は、格子のあいだから漏れる明かりが旅人たちを暖かく迎えていたのでしょう。
赤いポストや狸の置物など、いまではすっかり見かけることの無くなった物たちも、奈良井宿では当たり前のように各所で見かけることができます。まるでこの町の中だけ時の流れがほかの世界と異なるのではと思ってしまうほど。
ノスタルジックな町並みが、訪れる者の心をほっこりさせてくれる奈良井宿。ゆっくりと時が流れる宿場町を散策しながら、行きかう旅人たちで栄えた江戸時代に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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