韓国第2の都市・釜山(プサン)は、古くから交易で発展してきた港町。港町特有の活気や威勢の良さがあって、日本でいえば大阪に似た雰囲気があります。実際、釜山と大阪は友好協力都市の関係にあるんですよ。

そんな釜山でいま最も注目を浴びているのが、独特の景観から「韓国のマチュピチュ」「韓国のサントリーニ」などと呼ばれる甘川文化村。

もともとは、朝鮮戦争から避難した太極道の信者たちが造った集落で、平地に住むことが許されなかった彼らは、山肌に家を建てました。長く貧しい生活が続いていましたが、2009年から町おこしが始まり、今では国内外から旅行者が集まる人気の観光スポットとなっています。

起伏の多い土地で、山肌にへばりつくように建ち並ぶカラフルな家々。この光景だけでも特別ですが、甘川文化村の人気の秘密は、町じゅうにストリートアートが点在しているところにあります。

今も人が暮らす住宅街にもかかわらず、あちらこちらにオブジェや壁画などが点在し、集落全体が天井のない美術館と化しているのです。

釜山中心部からのアクセスは、地下鉄1号線のチャガルチ駅や、トソン駅前からマウルバスの1-1、2、2-2番に乗り、カムジョン小学校で下車。甘川文化村の入り口はすぐそこです。

マウルバスとは短距離バスのことで、定員が少なく乗り心地もいいとはいえないので、タクシーを使うのも手。韓国のタクシーは日本に比べ料金が安いので、特に複数人で訪れるならタクシーがおすすめです。

甘川文化村に到着したら、まずは集落へのゲートの近くにある観光案内所でスタンプ地図を購入しましょう。グーグルマップがほとんど役に立たない甘川文化村の見どころを制覇するには、詳しい紙の地図が必須。スタンプ地図は、その名の通り地図とスタンプラリーを兼ねていて、スタンプを集めると粗品がもらえるという特典もあります。

甘川文化村には無数のアート作品があり、スタンプ地図に載っている主要なものだけでも45以上。

なかでも一番人気が高いのが、ガードレールに座っている星の王子さまとキツネ。「星を離れ、地球にやってきた星の王子さまとキツネが、甘川文化村の風景を眺めている」という設定で、ちょこんと腰かけている一人と一匹の姿は、胸キュンものの可愛らしさです。

自分も隣に腰かけて写真を撮るというスタイルが大人気で、いつも写真待ちの列ができているほど。

この「星の王子さまとキツネ」は、甘川文化村のゲートを入ってそのまま大きな通りを奥に進んでいくだけ。見つけるのはとても簡単です。

高いところから立体的な集落を見渡すのも、甘川文化村のメインイベントのひとつ。

散策時間が限られていても、手軽に足を運べるビュースポットが「ハヌルマル」の屋上展望台。甘川文化村のゲートから近いものの、狭い路地にある階段を上る必要があるので、地図や標識などを確認して見逃さないようにしましょう。

視界の良い場所から眺める甘川文化村の風景は、壮観。集落のすぐ背後には山があり、山に抱かれるようにして、白や黄色、オレンジ、ピンク、青といった色とりどりの家々が密集する光景は、どこか別世界のようです。

甘川文化村の街並みを見渡せるのはこの場所に限らず、ゲートをくぐってそのままぐるりと弧を描くように広い道を歩いていくと、さまざまなポイントからユニークな眺望が楽しめます。

その一方で、メインストリートだけを歩いているようでは、甘川文化村の本当の魅力には触れられません。大通りから延びる小路を気の向くままに散策してこそ、人々の生活臭漂う村のあたたかみが感じられるのです。

大勢の観光客で賑わうメインストリートとはうってかわって、狭い路地に入り込むと、急に時間の流れがゆっくりになったように感じられるはず。

甘川文化村をじっくり楽しむなら、時には地図を手放して、興味のおもむくままに歩き回ってみるのもいいでしょう。ただし、観光客は立ち入れないエリアもあるので、表示にはご注意を。

どこか特定のスポットを目指すというよりは、街並み全体が観光スポットといえる甘川文化村。アートなんてなさそうなローカルな雰囲気の通りにも、突然アートが現れるので、歩いていて飽きることがありません。

貧しかった集落は、今では「甘川文化村が目的で釜山に行った」という人もいるほどの人気スポット。「このためだけでも釜山を訪れる価値がある」といっても過言ではない、ここだけの風景に出会える場所です。

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