ドイツ・ザクセン州で最も人口が多い都市ライプツィヒ。
旧東ドイツ地域ではベルリンに次いで2番目に大きなこの街は、バッハやメンデルスゾーンやシューマン、そしてワーグナーなどのドイツを代表する音楽家と関係の深い街として有名であり、またベルリンの壁の崩壊、そして東西両ドイツの統一のための住民運動がはじまった場所である「革命の街」としても知られています。
また、ライプツィヒは、世界で初めて日刊紙が発行された街であり、世界で初めて見本市(ライプツィヒ・メッセ)が開催された街としても有名で、歴史と伝統が今も大切にされています。
そんな街の名物の1つが今回ご紹介するゴーゼビールを楽しめるお店です。
お店の名前は「バイエリッシャー・バーンホフ・ガストハウス」。
・世界最古の頭端式駅舎を改修して作られた醸造所レストラン
こちらのお店、1842年に開業した世界最古の頭端式駅である旧バイエルン駅(Bayerischer Bahnhof)を改修して、2000年に開業した醸造所レストランです。
旧バイエルン駅は、ライプツィヒからバイエルン地方やオーストリア方面行きの列車が発着していた場所で、かつてドイツ・ライプツィヒに留学していたの森鷗外や瀧廉太郎など、日本の著名人も訪れたことがある場所です。
そんな歴史ある場所は、現在ではライプツィヒ名物の「ゴーゼ・ビール」を樽生で味わうことができる、地元の方々にも大人気の醸造所レストラン(ブリューパブ)となっています。
・ライプツィヒ名物「ゴーゼ・ビール」とは?
「ゴーゼ・ビール」というビールの名前をご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、あまり日本では馴染みのあるビールではありません。
「ゴーゼ・ビール」とはランメルスベルク鉱山で栄えたゴスラーが発祥とされているビールで、大量の塩とコリアンダーで味と香りをつけたビールです。大量の塩を使っているため、別名「塩ビール」とも呼ばれています。
そんなゴスラー発祥のビールがなぜライプツィヒ名物となっているのでしょうか?それには深い理由があります。
「ゴーゼ・ビール」の歴史は10世紀今から1000年以上前まで遡ります。
実はゴスラーでは、ローマ時代から銀や銅、鉛などの鉱物が採掘されており、武器など様々な用途で使われていました。
そして10世紀に莫大な鉱脈がゴスラーで発見され、大規模な採掘がランメルスベルク鉱山で行われるようになります。その鉱山で働く労働者に人気となったのが「ゴーゼ・ビール」なのです。
重労働によって大量に汗をかく鉱山労働者にとって大量の塩とコリアンダーを添加した「ゴーゼ・ビール」はまさに最高のスポーツドリンクでした。
当時の神聖ローマ帝国の皇帝オットー3世もその味を称賛したビールは、ヨーロッパ各地に輸出されるまで人気のビールになります。
そして、18世紀ごろにはゴスラーからライプツィヒにも製法が伝えられ、ライプツィヒでも多くの人々がゴーゼビールを楽しんでいました。
ところが第一次世界大戦後、ビールに関する法律が統合された結果、塩やコリアンダー、乳酸を使っていたこのゴーゼ・ビールは、違法なビールとなってしまいます。
また喉越しのよいラガービールなどの普及によって一時的に無くなってしまいそうになったのですが、第二次世界大戦の結果、ドイツは2つの国に分裂、その時にライプツィヒが東ドイツ領となったため西側の法律が適用されなくなり、現在までゴーゼビールの伝統が伝えられているそうです。
・ライプツィヒ名物「ゴーゼ・ビール」とドイツの伝統料理を味わう
こちらのお店では、そんな紆余曲折を経て現代まで多くの人々が継承してきたライプツィヒ名物「ゴーゼ・ビール」とドイツの美味しい伝統料理を味わうことができます。
ドリンクメニューはゴーゼビールの他にもこちらのお店でしか味わえないメニューが選びきれないほど用意されていますので、フレンドリーで詳細な説明をしてくださるスタッフの方々とお話をしながら決めることをオススメします。
また、食事のメニューも、ドイツの伝統料理を中心に、さまざまに用意されているので、こちらもフレンドリーで詳細な説明をしてくださるスタッフの方々とお話をしながら決めることをオススメします。ほぼ全てのメニューが非常にボリューム満点なので、可能なら1品ずつ様子をみながら注文することをオススメします。
まず味わっておきたいのは、やはりゴーゼ・ビール。
爽やかな香りがするビールをひと口味わうと、ヨーグルトのような酸味と柑橘系のフルーティーさが口の中に広がっていきます。
塩を大量に使っているという話なのですが、言われてみると微かに塩気を感じる、という程度で、非常に美味しいビールです。
こちらのお店のオリジナルにごりピルスナーも是非味わっておきたいビールの1つです。
飲みやすい口当たりなのに非常に香り高い味わいに仕上がっているオリジナルにごりピルスナーは、気をつけないとグイグイとあおってしまうほど、美味しくてフルーティーな味わいが特徴です。
もし他のビールの味わいをちょっとずつ試したいのなら、4つのビールを味わえるお試しセットを注文すると良いかもしれません。それぞれの詳しい説明書がついたビールを楽しみながら、自分好みの味わいを試すことができます。
またこちらのお店には、ビールにあう美味しいドイツ料理がたくさんあるのですが、フレンドリーで詳細な説明をしてくださるスタッフの方がオススメしてくれたのが、オーブンから焼き立てを提供してくれる、ポークナックルです。
お皿を縦にするとバーカウンターにギリギリの大きさになるほどの巨大なお皿に、特大のポークナックルが豪快に提供されます。
クリスピーな皮の部分に、しっとりとしている豚肉の赤身の美味しい部位、そしてジューシーでトロッとしている部位など、さまざまな豚肉の部位を特製のマスタードをつけて味わうと、非常にさっぱりとしていて、ビールとの相性も抜群です。
今やこちらのお店で作られるビールはアメリカやイタリアなどの海外にも輸出しているとのこと。
もしドイツに行く機会があれば、1000年以上前に生まれ、歴史の変遷を経てなお、今に受け継がれているゴーゼ・ビールを味わってみてはいかがでしょうか?
そしてライプツィヒに行く機会があれば、世界最古の頭端式駅舎を改修した珍しいビール醸造所で、美味しいドイツの伝統料理と一緒に、その美味しいビールを味わってみてはいかがでしょうか?
きっとそこには、人々が数珠玉のようにつむぎ、繋いできた、幸せな味わいがあるに違いありません。
Post: GoTrip! https://gotrip.jp/旅に行きたくなるメディア
名前 バイエリッシャー・バーンホフ(Bayerischer Bahnhof)
住所 Bayrischer Pl. 1, 04103 Leipzig, Germany
電話 +49 341 1245760
公式ホームページ https://www.bayerischer-bahnhof.de/en