東と西の文化が交わるトルコ最大の都市のイスタンブールは、かつてのシルクロード交易の通過点でした。イスタンブールには、交易のときに世界各地からやってきた商人たちが宿泊したり商売をしていた場所がいまでも残っています。
日本語では隊商宿やキャラバンサライと呼ばれていますが、トルコ語では一般的にハンと呼ばれています。
イスタンブール、特に世界遺産に登録されている「イスタンブール歴史地区」には、当時利用されていたハンがかなり残っています。数あるハンの中でも、今回は旧市街を代表する市場、グランドバザールの中にある「ズィンジルリ・ハン」をご紹介しましょう。
グランドバザールはイスタンブール歴史地区のベヤズットにあります。1453年にコンスタンティノープルを攻略し、この街をオスマン帝国の帝都として定めたメフメト2世の命により建設されたのがこの市場の起源です。
560年以上もの歴史を持つこの市場は、スレイマン大帝の時代にさらに面積が拡大されて街の商業の中心として発展し、現在では中東最大級の屋根付きの市場として知られており、イスタンブールの観光名所のひとつとなっています。
どこまでも続く迷路のようなバザールでは、長い歴史の中で様々な国の商人たちが訪れ、貴金属や絨毯、香辛料、陶器類などが売買されてきました。馬やラクダをつれて、はるばる遠い国からやって来た商人たちは、このバザールの中にある隊商宿のひとつ、ズィンジルリ・ハンで寝泊まりしていたのです。
ハンの入り口を潜り抜けると、そこにはバザールの喧騒が嘘かのような開放的な空間が待ち受けています。赤ともオレンジともいえない色で壁面が塗装されているズィンジルリ・ハンは、中庭を囲う二階建ての構造で、中庭の上は吹き抜けになっています。屋根付きの薄暗い市場に突如現れたオアシスのような空間です。
かつての交易時代、一階部分は商品の取引所や倉庫、ハンの管理人の住居、商人が連れてきた家畜を繋ぎ留めておく場所として、二階部分は商人たちが寝泊まりする部屋として使われていました。
現在ではさすがに当時のようには使用されていませんが、その景観を崩さないように事務所や宝石の工房として利用されています。小さなドアの先にある小部屋や擦り減った階段の石畳、剥がれたままにされている壁面が織りなす市場とはまた違う雰囲気は、ハンでしか感じることができない独特のものです。
シルクロード時代のハンの雰囲気は散策しながらでも十分に味わうことができますが、ここでさらにトルコらしさを感じたいのなら、ハンの入り口付近にあるチャイジュさん(チャイを売っているお店)でチャイやトルココーヒーを一杯注文してみてはいかがでしょうか。
遠くで聞こえてくるバザールの喧騒に耳を傾け、シルクロード時代に思いを馳せながらハンでゆっくりと時間を過ごしてみるのも、ガイドブックには載らないイスタンブールの楽しみ方のひとつかもしれません。
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名前 ズィンジルリ・ハン(Zincirli Han)
所在地 Taya Hatun,Acı Çeşme Sokak,Beyazıt Kapalı Çarşı Mercan Kapısı,34126 Fatih/İstanbul