日本銀行は2日、「中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題」というレポートを公開した。同レポートでは中央銀行が発行を計画する中央銀行デジタル通貨(CBDC)について技術面にフォーカスし、「誰もがいつでも何処でも、安全確実に決済にできる利用できる」という現金の特性を CBDC が備えるための技術的な課題について整理している。
日銀はCBDCが現金同等の機能を持つためには、「誰もがいつでも何処でも、安全確実に決済に利用できる決済手段」であることが求められるとしており、すなわち「ユニバーサル・アクセス」と「強靭性」を備えることが望ましいと述べている。
ユニバーサル・アクセスについては、「CBDC の利用対象者を制限することがないよう、設計面で工夫が必要と考えられる」として、「子供から高齢層まで幅広い世代が利用できることが望ましいし、さらには訪日外国人観光客も利用できればなお望ましい」と伝えている。また、決済機能を個人から店など法人への送金に限定するのではなく、現金と同様に、個人間も含めた双方向の送金(Peer-to-peer、P2P)でも利用できるよう設計されなければならない点も指摘している。
一方、強靭性については、「インターネット等のコンピュータ・ネットワークを利用したオンライン型サービスの脆弱性の克服」を課題として挙げている。クレジットカードやスマートフォン決済の多くは通常、送金や支払いを行う際にネットワークにオンライン接続している必要があり、システム・通信障害時に利用が制約され、また、オンライン決済には継続的な電力供給が必要であるとしている。
こうした点を踏まえ、「ユニバーサル・アクセスと強靭性という特性を CBDC が備えるには、通信・電源の途絶への耐性も備えたオフライン P2P 決済機能を多くの人々が利用可能な端末に対して実現することが望ましい」とまとめている。
また、台帳管理について、単一の主体が台帳を保有し、取引の検証や履歴の記録を担う「中央管理型」と、複数の主体が同一の台帳を保有し、それぞれが取引の検証と履歴の記録を担う「分散管理型」の2つがあると述べている。両者の選択に当たっては、それぞれに長所と短所があり、「利用環境や目的に加え、今後の技術革新の可能性を踏まえた検討が重要である」との考えを伝えている。
今後について、日銀は「実証実験等を通して、技術面からみた実現可能性を確認していくとともに、海外中銀や内外の関係諸機関と連携をとりながら、CBDC に関して検討を進めていく」との方針を示している。