店主が「当店以外のとんかつ屋は傷害罪」と断言していたとんかつ屋をご存じだろうか。jR上野駅から徒歩3分ほどの場所で営業し、一部のマニアに愛されていた「平兵衛」(東京都台東区上野6-7-13)である。

・別次元ともいえるとんかつ

平兵衛のとんかつは、普通ではない。どのとんかつ屋にもこだわりはあるだろうが、平兵衛のとんかつは「こだわり」という言葉では表現できないほど個性的であり、別次元ともいえるとんかつだ。

・客の体を考えてとんかつを作っている?

看板や店内では「当店以外のとんかつ屋は傷害罪」などとする店主のこだわりの一文が確認できる。他店が使用している揚げ油は身体に良くないらしい。かなり過激な考えをしているように思えるが、つまり「客の体を考えてとんかつを作っている」と言いたいのだろう。

<店主の言い分 / 他店が傷害罪なわけ>
1. 揚げ油を使いすぎて廃油を作り出して地球環境を破壊している
2. 揚げ油を使いすぎて不経済なことをしている
3. ひたすらコストをかけてわざわざまずくしている
4. 旨みを蒸発させて真っ黒に変色し劣化しきった油を染み込ませている
5. 廃油公害をまきちらし、旨味を全て油の中に捨てている
6. お客の健康を考えず黒く変色した油で揚げているので傷害罪である
7. ちゃんと平兵衛の調理法でトンカツを作れば世界の飢餓が救済される
8. 保健所の基準をクリアしていないので廃業せざるをえない
※あくまで店主の言い分です




・静かにスルリと油鍋の底に沈んでいく

豚肉は非常に厚く、そして衣も厚い。使用する油は超低温で、とんかつを入れても「ジュワッ!」と泡立たない。静かにスルリと油鍋の底に沈んでいく。揚げていると言えるのか? 温めているだけか? 素人にはわからない領域。

・箸でつまむと衣が崩れるほど柔らかい

油が超低温なので、仕上がりまで30分かかる。オーダーしてから少なくとも30分は待たなくてはならないため、時間がないときはオススメできない店。出来上がったとんかつはシュークリームのような薄い黄色をしており、キツネ色ではない。箸でつまむと衣が崩れるほど柔らかい。



・「これはとんかつではない」と感じる人も

卵の成分が多いのか、衣は極薄の玉子焼きのようだ。そのとんかつの味だが、非常にさっぱりとしていて油っぽさはない。とんかつを食べているというより、油で仕上げた低温調理の豚肉である。うまいかどうかは別として、「これはとんかつではない」と感じる人がいてもおかしくはない。

世間一般のとんかつから得られるクリスピー感や香ばしさはあまりない。だからといってダメなわけではなく、低温調理の恩恵としてジューシーに仕上がっている。よって、好き嫌いがハッキリと分かれるとんかつといえるだろう。

残念ながら、すでにこのとんかつ屋は閉店しており存在しない。創業85年以上のとんかつ屋だったが、ついに神話となってしまった。この味はまさに唯一無二だった。

もっと詳しく読む: 【神話グルメ】店主が「当店以外のとんかつ屋は傷害罪」と断言していたとんかつ屋 / 上野の平兵衛(東京メインディッシュ) https://main-dish.com/2021/01/13/ueno-tonkatsu-heibei-densetsu/

平兵衛
住所: 東京都台東区上野6-7-13
時間: 11:30~13:00 17:30~21:00 (要確認)
休日: 月曜日 (要確認)
備考: すでに閉店しています

<協力>
クドウ / 空条海苔助: ガジェット通信、ロケットニュース24、Pouchの初代編集長で創設者。TVチャンピオン「焼肉王選手権」「デカ盛り王選手権」に出場しどちらも準優勝。日清公認のどん兵衛士の称号を得ており、どん兵衛とラーメン二郎要素を融合させた「どん二郎」のネーミングやレシピを考案。空条海苔助の名義で「世にも微妙なグルメレストラン」「彦龍のノリヒコさん」などを出版するB級グルメ研究家で「月曜から夜ふかし」などにも出演。イタリアをめぐりピザを食べる旅をするほどピザマニア。昭和的な「個人経営の焼肉屋」をめぐる旅をする焼肉マニア。秘境ドローンカメラマンもしている秘境グルメマニア。