中山道、北国街道、伊勢街道が交差する交通の要衝として賑わった、岐阜県不破郡関ケ原町。
1600年に起こった「関ケ原の戦い」は、全国の武将が東西両軍に分かれ、それぞれの忠誠、友情、策略、葛藤を抱えて激突した天下分け目の戦いとして、日本史の大きな転換点になりました。
そんな「戦国の聖地」ともいえる関ケ原古戦場に、令和2年10月21日グランドオープンしたのが「岐阜関ケ原古戦場記念館」です。外観は櫓(やぐら)と甲冑の威(おどし)、馬防柵をイメージし、最上階の展望室からは関ケ原古戦場が一望できます。
館長を務めるのは静岡大学名誉教授の小和田哲男先生。平成26年にテーマ設定を始め、令和2年のオープンまで実に7年もの歳月をかけたといいます。
写真提供:岐阜関ケ原古戦場記念館
岐阜関ケ原古戦場記念館は、日本史上最大級の戦いである「関ケ原の戦い」の全容を楽しく学び、体験できる施設です。1階の導入回廊の奥にある「グラウンド・ビジョン」では、巨大な床面スクリーンで全国を舞台とした東西陣営のスケールの大きな戦いを俯瞰できます。
日本史に詳しくない人も、講談師・神田伯山氏のリズミカルなナレーションで、会津征伐から前哨戦、関ケ原の本戦までをよく理解できることでしょう。
写真提供:岐阜関ケ原古戦場記念館
続く「シアター」では、縦4.5メートル、横13メートルのオーバル(曲面)スクリーンと、風や振動、光と音の演出による大迫力映像で東西両軍の激突が展開されます。将兵の視点で、まるで戦場に迷い込んだかのような臨場感たっぷりの体験ができます。
2階の「展示室」は、関ケ原の戦いを現代に伝える「関ケ原合戦屏風図」(六曲一隻)や、武将の肖像画、古文書、戦国時代の武具などが展示されており、関ケ原の戦いに至る過程からその後までを学べる場所です。
美濃の刀工・兼定のものではないかと考えられる刀や、徳川家康直筆の書状、古戦場から出土した鉄鏃(てつぞく)や古刀、鉛玉などが展示されています。
同じく2階にある「戦国体験コーナー」では、本物そっくりの刀剣や火縄銃に触れて大きさや重さを体感したり、陣羽織や刀を身につけて戦国武将になりきり写真を撮ったりすることができます。
好みの背景と合成した写真はその場でデータを受け取れるので、来館の記念になるでしょう。
最上階(5階)にある360度全面ガラス張りの展望室からは、関ケ原古戦場全体を見渡せ、1階と2階で体験した映像と合戦当時から変わらぬ山と平地の景色を重ね合わせることができます。
1階と2階で関ケ原の戦いについて学んでから実際の古戦場を眺めると、まさにこの場所で徳川家康を中心とする東軍と石田三成を中心とする西軍、合わせて15万人を超える大軍が激突したのだと、過去と現在がつながったような感覚を覚えるかもしれません。
古戦場記念館を見学した後には、ぜひ実際に周辺の史跡を歩いてみましょう。記念館のすぐ隣には徳川家康最後陣地があります。
関ケ原の戦いに大勝した徳川家康は、論功行賞の判断材料とするため、この場で床几(しょうぎ)に腰掛け、味方が討ち取ってきた敵将を自ら首実検したと伝えられています。正面中央の土壇と周辺の土塁や松は、天保12(1841)年に幕府の命を受け、この地の領主・竹中家が築きました。
記念館から車を数分走らせると関ケ原古戦場の決戦地に到着します。「大一大万大吉」ののぼりと「関ケ原古戦場決戦地」の石碑が建っているので、すぐにわかるでしょう。
決戦地の北西にある標高約200メートルの笹尾山には石田三成陣地があります。いまは静かな小山でしかありませんが、かつて石田三成もこの場所から合戦の行方を見ていたはずです。
山頂の展望台に設置された位置図を見ると、それぞれの武将の陣地と開戦地、決戦地の場所がよくわかります。古戦場記念館で体験した映像がリアルな地形と重なって見える気がしました。
その笹尾山に隣接する、廃校を利用した施設「関ケ原笹尾山交流館」では、戦国武将になりきれる甲冑体験(有料)ができます。
関ケ原仕様の手づくり甲冑は、戦国武将になりきれるプレミアム甲冑、スペシャル甲冑、侍大将、足軽甲冑など種類はさまざま。特に人気なのは、石田三成、井伊直政、徳川家康の甲冑だとか。
甲冑を着用したら、記念撮影はもちろん、甲冑を着たまま史跡散策にも出かけられます(雨天時は屋内のみ)。先ほど紹介した関ケ原古戦場決戦地も近いので、ぜひ記念撮影をしてみてください。
そのほか、周辺には関ケ原の戦いの開戦地、島津義弘陣跡、桃配山(ももくばりやま)の徳川家康最初陣地など、関ケ原の戦いにゆかりのある史跡がたくさんあります。
近いところだけなら徒歩でも回れますが、少し離れた史跡にも足を延ばすなら、レンタサイクルを利用すると便利です。
岐阜関ケ原古戦場記念館の広域情報コーナー、および関ケ原駅前観光交流館にはレンタサイクルの申込受付カウンターがあるので、利用してみてはいかがでしょうか。
「関ケ原の戦いの名前は知っていても、その全容はいまいちよくわからない」という人も、岐阜関ケ原古戦場記念館で体験を通して学び、実際に周辺の史跡めぐりに出かければ、かつてこの場所でどんなことが起こったのかよく理解できることでしょう。
Post: GoTrip! https://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア
名称:岐阜関ケ原古戦場記念館
住所:岐阜県不破郡関ケ原町関ケ原894-55
アクセス:JR関ケ原駅より徒歩約10分
TEL:0584-47-6070
開館時間:9時30分~17時(入館は16時30まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)、12/29~1/3
入館料:一般500円(20名以上の団体は400円)、大学生・高校生300円(20名以上の団体は240円)、中学生以下無料
公式サイト https://sekigahara.pref.gifu.lg.jp/