株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ(〒105-0001 東京都港区虎ノ門二丁目4番7号、代表取締役 秋田智一)が堺市(大阪府)の市内の複数施設で作られた余剰電力を、市庁舎に供給する運用を本格的に開始する。地域で作った電力を地域で循環、再エネの可能性を大きく広げる取り組みだ。

地方で作って都市部へ……電力送電の変わらない構造

2011年3月東日本大震災以降、注目されるようになった再生可能エネルギー(以下、再エネ)。改めて再エネとはなにかと考えると、太陽や風といった自然の力を利用しCO2を排出せずに発電する環境にやさしいエネルギーのことだ。何度も繰り返して使用できるから「再生」を冠している。

しかし、たびたび世の中を騒がせているのもメガソーラー建設などの再エネの問題だ。ひとたび車を地方に走らせれば、いまや必ず太陽光パネルが目に飛び込んでくる。ときにそれもおびただしい数。山の斜面や広大な耕作放棄地などに黒いパネルが敷き詰められ天を向いている。地方に発電所を作りそこで作った電力を都市部に送るという構造は、311以前の原子力発電のまま。長距離送配電の仕組みのままでは真にエネルギーの問題は解決されないと、株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ代表秋田智一氏は説明する。

「長距離送配電の仕組みのままに太陽光発電に転換させようとすると、過疎化地域に同じように太陽光発電所を集約的に作る形になります。電子力や火力に比べて太陽光は面積あたりの発電効率が大きくないために、広大な土地が必要になってしまいます。それゆえにメガソーラーが増えてきました。だんだんと適地と言われるものがなくなり、やや強引な開発や景観悪化などが挙げられます。自然環境や地域共生という観点ではトラブルが発生しやすいといえます」

実際にそうした地域に設置された太陽光パネルで作られた電気はどこへいっているのか? それが不明であること。そして、地方で発電し都市部に送るという変わらない構造であること。このふたつの点が問題だと指摘する。

同社が構築する再エネ循環モデルは、そうした問題を解決する道を切り開く仕組みだ。「GX City 構想」と題されたこの取り組みは、分散型再生可能エネルギーの地産地消を起点として、脱炭素や地域経済の活性化など暮らしのあらゆる諸問題の解決と理想の実現を目指す。再エネを作るだけでなく、さらに循環させていくことが大切だと捉えている。

景観を損なわずに地産地消の発電を実現、余った電力をうまく回す仕組み

太陽光発電は、太陽光が射せばどこでも発電できる可能性があるのが優位なところ。同社は駐車場や建物の屋根上といった既存施設の一部を活用、自然を壊すことなく発電できる場所を作っている。そうしたいわゆる「空き場所」を利用した同社の施設は1,300以上あるという。スペースを有効に使った開発容量は331MW。うまく活用し循環すれば都市部でも再エネの自給率を上げることができるという。

「ただ、その施設の電気量に合わせた太陽光パネルにしてしまうと、屋根面積を十分に使わないような状況になってしまいます。そこを屋根の面積を十分に使って余剰電力容量を生み出します。そうして生まれた余剰電力容量は76MW。スペースを有効に使って余剰分をあえて生み出します」

つまり、施設の屋根面積の半分に太陽光パネルがあれば施設の電気量としては十分だった場合、屋根面積を半分余らせることになる。そこをあえて屋根面積全面に太陽光パネルを設置し余剰電力を作って地域で循環させようというのが同社の循環型電力だ。新たな造成や開発をせずに電力は生み出すことができる。

こうした仕組みをこのほど堺市と社会実装するというわけだ。

官民の両輪で実現していく都市部の再エネ

地域における脱酸素や再エネの導入にはコストが大きなネックとなっている状況がある。PPA(Power Purchase Agreement:企業や自治体が保有する施設の屋根などを事業者が借り、無償で発電設備を設置して発電した電気を企業・自治体が施設で使うこと)に関心を示す自治体が多いもののなかなか進んでいないのが現状だという。

このほどの堺市との取り組みの詳細について、同社執行役員 岩崎 哲氏が説明する。

「自治体全体で抱えている問題ではありますが、公共施設では屋根が狭いといった構造的な問題でPPAはなかなか進んでいません。そこで民間の屋根を利用して官民提携して進めていこうというのが今回の堺市の取り組みです。民間施設に屋根上太陽光パネルを導入し、余剰電力をAIで集約、公共施設に循環供給していきます。堺市で2月にスタートしましたが、1月時点で採択企業が11社、15施設。ホームセンターや保育園といったところもこの取り組みに参加したいという声が届いています」

同社が電力を集約して供給のバランスをコントロールする。複雑な発電管理がこの取り組みの肝となる。24時間365日のモニタリングで、発電量や需要量などの予測、異常検知をAI技術によって可能にしている。堺市との取り組みをひとつのモデルとして、今後他の地域や自治体にも展開していくという。グリーンエネルギーの地産地消サイクルに大いに期待が高まる。