米国と中国当局は、ZTEに対する制裁解除で合意した。2018年4月16日、米商務省は中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)にアメリカ企業との取引を7年間禁止する命令から約2か月にわたり、ZTEは事業停止状態であったが、これで再開できることになった。
もともとこの問題は、ZTEが2010~2016年にわたり、ダミー会社を使うなどしてアメリカからイランや北朝鮮に通信機器を輸出していたことが原因で、2017年3月にはアメリカに11億9000万ドルの罰金(約1300億円)を支払うことで双方が合意した。 しかし、ZTEはその後も「輸出違反にかかわった社員の報酬を減額する」という合意を守らずに虚偽報告を続けていたため、アメリカは新たな制裁を課したのであった。今回の合意により、ZTEは米国企業からの通信チップなどの購入が可能になるとともに、米国内での販売が可能になるのだと思われる。
今回の合意内容は、ZTEと中国政府にとって、非常に厳しいものであるといえる。罰金10億ドル(約1100億円)と供託金4億ドル(440億円)この額も巨額であるが、それ以上に厳しいといえるのは、経営陣の刷新と米国側が選任する新たなコンプライアンスチームを10年間にわたり設置するという条件である。これにより、たとえ、中国企業であっても米国と取引する以上、米国の法を守らなければ潰せることを世界に示したわけである。
また、中国企業の内部に米国側が選任したコンプライアンスチームを設置したことで、将来的な違法行為の監視も可能になったのである。これは単なる政府と企業の問題ではなく、解決に政府が乗り出した以上、中国政府にとって悪しき先例になったとともに、米国政府にとって良き先例になったのだと思われる。 そして、先例が出来た以上、これから米国は他の中国企業に対しても、同様の処置を求めてゆく可能性が高い。今、調査が入っている中国通信機器大手のファーウェイや不正なスパイウエアが組み込まれていたとされるLenovo(レノボ)など、通信や先端技術を使った企業がそのターゲットになるのだと思われる。
また、現在米国上院では、中国による米国の高度技術の取得防止を目的とし、対米外国投資委員会(CFIUS)の権限拡大などを盛り込んだ法案を審議中であり、これが成立すれば、中国による米国高度技術企業の買収は不可能になる。同時に、来年度(今年9月から)の防衛の方針と予算を決める国防権限法では、国防総省と関係するすべての団体、個人に対して、中国の通信機器や通信サービスの利用を一切利用してはならないという条項が入る予定であり、政権側よりも議会の方が厳しい状態になっている。
そして、これは始まりに過ぎないのである。