地中海に浮かぶ、小さくも美しい島国・マルタ(マルタ共和国)
首都のヴァレッタがあるマルタ島が有名ですが、離島にもマルタの豊かな歴史と自然に触れられる魅力あるスポットが点在しています。
マルタ本島の西6キロのところに位置するのが、ゴゾ島。東西14キロ、南北7キロの面積に、3万7000人ほどの人々が暮らすのんびりとした島です。
マルタ本島からすぐ近くにありながら、ゴゾ島はマルタ島よりもさらに自然豊かで牧歌的。大地には緑が広がり、海はより青く澄んでいます。
ゴゾ島のすべての道が通じているのが、ゴゾ島の首都で、島の中心に位置するヴィクトリア(ラバト)。
青銅時代からの古い歴史を誇るヴィクトリアは、ゴゾ島の地理的中心であるにとどまらず、島民たちの日常の活動の中心地でもあります。
そんなヴィクトリアのシンボルが、町を見下ろす高台にそびえる「チタデル(大城塞)」。
城塞の起源は中世後期ですが、この丘にはすでに新石器時代から人々が暮らしていたといいます。
現在はゴゾ島を一望する絶好のビュースポットとして知られるチタデルですが、その背後には暗い歴史も。
何世紀にもわたって、チタデルは海賊や異民族からの攻撃から逃れるための避難所として使われてきました。16世紀なかばにゴゾ島が海賊に襲われた際には、多くの島民が奴隷として連れ去られてしまったといいます。
その後、17世紀に度重なるオスマン・トルコ軍や海賊の侵攻に備え、より強固な城塞として再建されました。かつて、ゴゾ島の住民は安全のためにチタデルで夜を過ごすことを義務付けられていたほどです。
ヴィクトリア観光の起点となる独立広場の向かいの階段を上っていくと、堅牢で巨大な城砦に圧倒されます。
現在は半分遺跡のようになっているチタデルは、まるで町のなかの町。住民の避難所として機能していたというだけあって、城壁内は非常に広く、教会や博物館、土産物屋、レストランまでが揃っています。
チタデル内では、城壁に沿って歩くことができるようになっていて、城壁の上や展望台からは、歴史を感じさせるヴィクトリアの町並みやゴゾ島の平原が見渡せ、気分爽快。
だまし絵で有名な大聖堂もチタデル内にあります。1697~1711年にかけて建てられたバロック様式の大聖堂で、シンプルな外観とは対照的に、内部は赤とゴールドを使った華やかな装飾が施されています。
建設当初は、天井にドームを造ることが予定されていましたが、資金不足により断念。苦肉の策として、中から見ると天井がドーム型に見えるようにだまし絵が描かれたのです。
360もの教会があるといわれるマルタで、このようなだまし絵があるのはゴゾの大聖堂のみ。資金不足というマイナス要因から生まれただまし絵ですが、いまやこの大聖堂の名物となっています。
チタデルを見学したら、独立広場の周囲に広がる路地を散策してみましょう。このエリアには、ゴゾの名産のハチミツやオリーブオイル、お菓子や銀細工などを売る、さまざまな土産物屋が並んでいます。
多くの観光客でにぎわうヴィクトリア中心部にありながら、メインストリートを外れると、ひっそりとした静寂が訪れます。
ハチミツ色のマルタストーンの家並みが印象的なマルタですが、ゴゾ島の家々のマルタストーンはひときわ明るく輝くよう。こんな風景を眺めながら歩くだけで、心まですっきりと晴れ渡ってきます。
ヴィクトリアへはマルタ本島から日帰り旅行が可能ですが、日程が許せばゴゾ島への宿泊もおすすめ。
ヴァレッタよりもさらに優しい時間に出会える、ヴィクトリアでのんびりと町歩きを楽しんではいかがでしょうか。
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