総務大臣にして、自民党総裁選への出馬も取り沙汰された大物政治家・野田聖子氏も、その夫・木村文信氏が関わる仮想通貨ICO「SPINDLE」を巡り騒動がさらに大きくなって、政治家による親族事業への配慮を求める不適切な関係について疑惑が深まっております。

問題の野田氏夫の木村文信氏や、関わりの深かった宮崎明氏、過去に行政処分を受けた経緯のある宇田修一氏、さらにはSPINDLEを運営するBLACK STAR & Co.社(以下、「B社」)に関与していたとされるCDS経営戦略研究所(代表:細井健雄氏、東京都千代田区)が浮かび上がってきています。

この中で、このSPINDLE運営がなぜ、野田聖子氏筋を使って金融庁に圧力を掛けなければならなかったのか、というポイントがあります。

このSPINDLEの事前のプレセールは17年10月が書類上は初出ですが、この時点で木村文信氏やその周辺は3割以上のSPINDLEシェアを持っていたと見られます。SPINDLE関係者は「胴元ですから、元手の部分はタダみたいなものなので」と説明していますが、実際には別の資金が流用されていたのではないかという懸念が持たれます。

その端緒は、週刊新潮が18年5月31日号で掲載したGACKTの事務所の金銭トラブルにあると見られます。このバックグラウンドは第一興商創業者の個人資産管理会社のひとつであるホシクリエート社からの出資金3億円程度が事実上横領されたと報じられたもので、のちにGACKTのマネジメントをしている会社がこれを全否定していました。

ところが、このカネの動きがSPINDLE内での裏切りや内輪もめで一部が当局に流出してしまい、木村文信氏の「交友関係」やGACKTが自身の周囲の芸能人や芸能事務所、パトロン筋を巻き込んでSPINDLEのプレセールでそれなりのお金を集めていたという全容を明らかにしてしまいます。

結果的に、これらの国内調達は資金決済法上の仮想通貨交換業者の認可を持たないB社が取り扱うとそのまま違法になります。また、違法と知りつつ資金を集める活動を行った個人もまた、処罰の対象となり得ます。GACKTの場合、本人は「SPINDLEが本当に何なのかは最後まで良く理解していなかった」(SPINDLE関係者)ようですが、活動においては広告塔以上に資金集めを自分自身が手掛けていたという点からも、文字通り違法が疑われる業者の当事者であった、ということになってしまうわけです。

一方で、17年末以降もSPINDLEを何とか適法なICO事業として展開したいとB社は考えており、私自身も「お前らの事業は違法ICOの疑いは強いよね」という記事を掲載しました。その後、GACKTの公式ブログで名指しで私が脅迫されたため、警視庁に相談までした経緯もありますが、それだけB社のSPINDLEについては適法性をどう担保するかが問題であり続けた、ということでもあります。

ただ、どうB社が申請しても、稚拙なレベルのホワイトペーパーしか持たないSPINDLEが金融庁の担当を説得して仮想通貨交換業者の登録ができるとは思われず、窮余の策として頼み込んだのが木村氏筋からの野田聖子事務所ではなかったかと見られます。

実際、野田聖子氏の親族や関係筋は、野田氏自身には仮想通貨に関するさしたる知識も持たず、木村氏と同席時にも仮想通貨の話で意見を交わすようなことはしていなかったと証言しています。実際、野田氏は、本当に何も知らないのでしょう。ただし、野田聖子事務所が秘書を金融庁担当者とB社幹部との会合の席に同席させたのは事実であり、もはや野田聖子氏に説得力のある釈明や言い逃れをする機会は失われた、と見てよいでしょう。

そして、B社側が金融庁に配慮を求めようとした内容は、まさにその「仮想通貨交換業者の登録について」と、「SPINDLEの国内市場での上場について」であったと見られる点からも、国内調達で集まってしまった資金をSPINDLEに交換したものの、YoBitなど海外市場での上場のみでしか換金の手段が持ちえない、国内でもそもそも使える場がなく需要がない仮想通貨がそう高値で流通するはずもなかったのも道理なのです。

そうなると、いわゆるマルチ商法を担いだ国会議員というレベルを超えて、重要閣僚関連のスキャンダルに発展する可能性は高いでしょうし、SPINDLEが少なくとも国内プレセールを行う際に、投資家に対して一定の値上がりするだけの盛り上がりがある前提で売ってきました。GACKT経由で買ったとされるSPINDLEが、買った時期によっては紙屑も同然の暴落をしているわけで、SPINDLEが実は違法であった、元暴力団関係者である木村文信氏の関わりのある事業だった、その妻である野田聖子氏の紐付きで当局に圧力をかけようとしていた、などの話が出れば、損害を蒙った芸能関係者らがGACKTに対して資金の返還や賠償を求める動きにならざるを得ません。

実際に、GACKTに声を掛けられてSPINDLEに「一口乗ってしまった」(本人談)芸能事務所関係者は、「むしろ乗せられてSPINDLEを買ってしまったことが報道で出る方が恥ずかしいことになるので、名前のある芸能人は泣き寝入るしかないのではないか」と説明します。とはいえ、「シャレにならない金額をぶち込んでしまい頭を抱えている芸能人がいる」との話の中で告発を検討している事務所もあるようで、B社が摘発されるタイミングでGACKTも無事に書類送検でもされかねない事態に陥るのではないかと見られます。

ほかにも、曰く付きのSPINDLEを商品として展開しているAppBank社の@BLAST、またAbemaTVで放送する番組『POKER×POKER』でも何らか起きる可能性はあります。宴の後始末といえば綺麗に感じますが、仮想通貨相場が盛り上がったころに我も我もと群がった結果が、この手のトラブルだとすると、非常に物悲しい結末を迎えることになるのではないかと感じます。