自民党の岸田文雄政調会長が秋の自民党総裁選への立候補をやめて、安倍晋三総裁の三選支持を表明した。自民党総裁選は、「地方票」といわれる自民党の党員・党友票と、「国会議員票」が同数の405票ずつ(総計810票)で投票が行われる。岸田政調会長が安倍総裁三選を支持したことで、派閥を基礎にした国会議員票の約7割を安倍氏は得る見通しになった。対抗馬は石破茂氏と目されているが、国会議員票では大差がつく見込みであり、安倍総裁の三選は現実味を一段と増しているのが実情であろう。

ところがたまたま見たテレビ朝日の報道ステーションでは、出演者たちが「極端な話」とことわりながらも地方票がぜんぶ石破氏にいくケースに言及して、さすがにそれはないだろうと筆者は噴き出してしまった。むしろ富川悠太メインキャスターや後藤謙次解説者らの政治的なバイアス(偏見)か願望をみせられた気がした。実際には安倍・石破両陣営の激しい地方票の分捕り合戦がこれから展開されるに違いない。

報道ステーションの出演者たちの願望はさておき、このままいけばかなりの高い確率で安倍政権の続投になるだろう。私見によれば、仮に安倍政権の続投が決まったとしても、その政策運営には問題視すべきところがある。その核心はなんといっても経済政策の在り方である。

現状の安倍政権への支持率は、様々な世論調査では10代から20代にかけての若年層の支持率が極めて高い。突出しているといっていいぐらいである。最近のメディアでは、これを「若者が自分の意見をもたずに空気で判断しているからだ」とか「右傾化だ、保守化だ」とさまざま否定的なニュアンスの見解を出している。まるで「最近の若者はけしからん」みたいなお説教論のオンパレードである。

筆者の仮説のひとつは、やはり長期経済停滞から脱出して、新卒の就職状況の改善やまた学生の保護者たちの経済状況の改善、アルバイトなどの所得向上などを実感しているからではないかと考えている。また経済状況が改善していけば、それだけ若い人たちのビジネスチャンスも広がり、また経済的な余裕がでればレジャーなどを基盤にした新しい文化の芽も出て来やすい。そういう経済の“ため”がでてきたことの反映が、安倍政権への高い支持率に結んでいるのではないだろうか? また諸外国との外交の成果なども無視できない。いわば若年層の支持は、政治的なイデオロギーに左右されやすい高年齢層よりもずっと現実主義的なように思える。

もしこの仮説が正しければ、若年層の高い内閣支持率は、経済政策などがうまくいかなければ、一気に瓦解する可能性が大きい。それが現実主義的ということだ。

安倍政権が秋以降も継続したとして、その経済政策にはきわめて深刻な問題がある。一つは来年に実施が予定されている消費増税である。これは2014年の増税と同じように経済に大きなブレーキをかける可能性が大きい。特にいまの政府が想定する消費増税対策といわれるものは、14年のときと同じようにすべて短期的なものばかりである。消費増税の悪影響は、14年の増税の影響が消費の低迷としていまだ影響を及ぼしているように“長期的”な効果をもつ。おそらく政府の消費増税対策は限定された効果しかもたないだろう。

消費増税に加えて深刻なのは、日本銀行の金融政策である。経済状況がさきほどの雇用面含めて改善したのは(もちろん消費増税の影響がなければさらに改善したであろう)、このインフレ目標政策を核にした金融緩和政策にある。だが、まだインフレ目標が達成されないなか、このインフレ目標自体を事実上見直して、「出口政策」つまり金融緩和の手じまいを狙う動きが、日銀内に出ているという観測がなされている。もしそれが現実化するならばことは重大である。

つまり今年後半から来年にかけて、消費増税と金融緩和の終了のダブル攻撃で、日本経済が大きく失速することになる。オリンピック景気どころではない。この経済政策の大失敗の可能性は、そのまま安倍政権の終わりを予見するものとなるだろう。そして国民にとって安倍政権継続よりもはるかに重要なのは、自分たちの生活である。いま危機の予兆に、私たちの生活が直面していることを自覚すべき時だと思う。