こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

先日、自民党所属の杉田水脈議員の「新潮45」でのLGBTに関する発言が左派層のやり玉として自民党批判のネタにされています。

この騒動や背景については先日、寄稿された千葉麗子さんの記事をお読みいただければ理解できると思います。

今回は中国人の観点から、日本のLGBT事情について分析します。まずは、中国のLGBTの惨状を簡単に紹介します。

中国には現在4000万人の同性愛者がいると言われますが、LGBTの定義でさえ、一般国民に周知されていないのが現状です。単純に「同性恋」(同性愛)として統一されています。共産主義では同性愛を「エイズをばら撒く一族」として危険視し、さらに子孫を残すことを最大の孝行と考える中華思想には「子孫繁盛しないヤツら、一族の恥」として、弾圧してきた歴史があります。中国のLGBTは、共産主義と中華思想に圧迫されて二重苦だったのです。

特に1949年の鄧小平政権までは、共産党は同性愛の性交行為を「流氓罪」と定義し、なんと労働再教育施設に監禁しています。

1978年になると、鄧小平政権の改革開放により、今度は「犯罪」ではなく「精神疾患」と定義されました。当時は「頭がおかしいから病院に移送して治療で治す」という無理やりLGBTの人を拘束した事例も多かったのです。(そのため、現在も中華系検索エンジン『百度』で同性愛を検索すると「治療」関連の記事がヒットしやすいようです)

2001年になり、はじめて中国衛生部はLGBTを精神疾患リストから除外します。その結果、中国各地にゲイバーなど、同性愛のためのクラブや風俗店(※1)が雨の後の筍のようにたくさん増えました。その間に中国のHIV感染者が急増した事実もあります。

※1:中国では風俗店が違法ですが、地下経済のもとで経営してる店がたくさんあります。そのせいで、衛生管理は政府の管轄外でHIVが蔓延しています。

■根強い中国社会のLGBT差別、天安門記念日には矛先を躱すため政治利用も

そして2014年に習近平政権以来、「家庭暴力をやめよう」と声をあげたレズビアンの活動家たちのデモを拘束したのを皮切りに、再びLGBTへの圧力を強めています。

一時的にBL(BOYS LOVE)作品の、いわゆる「腐女子」のライトノベル作家を大量規制し、ネット上の同性愛映像と文字作品を一斉NGにするような「LGBT粛清」運動もありました。2016年にはネット配信されている男子高校生の「同性愛」をテーマにした『アディクト』というドラマが突然削除。中国当局は同性愛を「社会の暗黒面」であるとして、放送を全面的に禁止しています。

また今年4月には、中国のアップルと呼ばれるIT大手・シャオミの開発したAIスピーカーが「同性愛は変態か?」と聞くと「精神的にものすごくねじ曲がっていると思う」と答えることが判明し、話題になりました。これも中国社会の差別意識が反映されていると思われます。

これらの理由や現状のより、中国ではLGBT当事者のカミングアウトがとても大きな壁になり、同性愛男性のほとんどが異性愛者と偽装結婚をしているという現状もあるようです。

これに比べれば、日本のLGBTの生活や自由は十分に保証されています。現在LGBTの定義をすでに日本の教科書に追加し、差別が起こらないように配慮されています。これは文明国家の証です。

ところが、習近平政権が「ゲイリブ運動」をプロパガンダの道具に利用しているとの見方もあります。

http://www.hinews.cn/news/system/2014/06/04/016711654.shtml?wscckey=0f90236fb81784af_1514959280

14年の6月4日、四川省成都で「ゲイキス大会」なるイベントが開かれています。街中でキスを交わす同性愛者たちと、それを写真に撮る民衆たち。この日は、天安門事件の25周年記念日でした。主催は民間のゲイリブ団体だったようですが、大都市でこのようなイベントが行われるのは、党が主導だったと考えるのが当然でしょう。同性愛が政治利用されるのは、日本と同じです。

■多くのゲイは政治利用を望んでいない!? 誰のためのLGBT支援なのか

恥ずかしながら、私は日本に来る前にLGBTという言葉すら知らず、「同性愛」としての認識しかありませんでした。

私の旧著『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)に漫画を描くときに、新宿二丁目・いわゆる「ゲイタウン」の店に取材で訪れました。オーナーと従業員の二人はLGBTのGでした。

彼らはカミングアウトしたら、多少奇異な目で見られることを語りました。しかし、仕事は普通をこなし、店の経営で安定な収入を得て、ノーマル(異性愛)と変わりないような生活をしていました。

杉田水脈議員が言った通り、彼らは経済的な弱者ではなく、国の税金で支援する必要性を感じていません。生まれつきの性別と心の性別が一致していない「T」、いわゆる性同一性障害については、社会的な支援が必要というのは私も賛成です。

2012年、私は日本に短期滞在で幕張メッセのゲームショーに行きました、会場の外にムスリムと見られる中東の顔付きの男性十数人が「同性愛はいけない」と書かれたプラカードを持って抗議デモを行っていました。彼らの目的は日本製のゲームの中に登場するBLや百合(女の子同士の恋愛)キャラクターとエピソードを削除しようとして活動していました。

これは断じて許されない。外国人が自身の宗教の理由で、日本の表現の自由を弾圧する上に、日本のLGBTを差別する行為になります。しかし、日本の「LGBT当事者ではない、LGBTのため戦う人権派と自称する人たち」は、この現実に言及したことはなかったでしょう。

■イスラムには声をあげない、日本の人権派「ダブルスタンダード」

また、近年はインドネシアで「ゲイカップル狩り」と称し、イスラムの宗教警察(自警団)が公衆の場でイチャイチャする同性愛たちを拘束し、「ムスリム法」によって、お尻が壊れるまで鞭で叩く公開処刑を大量に執行しています。

2017年

http://www.sankei.com/world/news/170523/wor1705230067-n1.html

2018年

https://twitter.com/VOAChinese/status/1017906908433444865

このような事例を欧米のLGBT団体は強く抗議しましたが、日本のLGBT団体からは何の声も挙がったとは聞いていません。

日本国内のイスラム教の信者は主に中東からの外国人で、日本においては宗教的にも国籍的にもマイノリティであり、すでに反差別界隈の保護対象になり、「加害者が仲間である事件を敢えてスルーする」という理由が考えられます。

つまり、日本の人権派は単純に反差別の利権を生かして、仕事のない弁護士が仕事を増やし、偽装被害者や偽装弱者のために弁護して、税金である国の賠償金を狙って与党を批判する反政権活動の一石二鳥の利益集団にすぎないのです。当事者のため、というのは建前に過ぎません。

■在日外国人の立場から危惧する、同性婚を手放しに喜べない理由

さらに、私が外国人の立場で補足しておきたいのが、もし同性婚が可決すれば、(外国人であっても)同性配偶者も永住できる可能性がでてくる点です。先月、香港のフィリピンやベトナム人の使用人たちがデモして、香港政府は香港の外国人への同性配偶者ビザを認めました。

http://www.afpbb.com/articles/-/3181216?pid=20313890

このような事態になれば、日本でも現在以上に外国人による「偽装結婚」が増えることも想定されます。日本の国籍狙いで偽装結婚し、社会保障制度やパスポートを狙う外国人が今まで以上に出てくることは否定できません。

ともあれ、支持率が低迷の共産党や立憲民主党及び、支持率が1桁未満の他の左派政党は、あの手この手で自民党の挙げ足を取りるしか、政治活動を続けられない惨状です。障害者、LGBT、外国人、帰化人、沖縄人、アイヌなどのいわゆるマイノリティを代弁して、(当事者たちの考えは置き去りにして)”弱者”を作ろうとしている意図が透けて見えるのです。

私は”在日外国人”というマイノリティの一人として、キッパリ断言します。勝手に私達に「弱者」のレッテルを貼って「仲間」にするのはやめてください。自民党政権を攻撃する「材料」にもされたくありません。