南コーカサスの一角を占める歴史ある国、ジョージア。

「ジョージア」とはあまり聞きなれない国名ですが、日本における以前の呼称は「グルジア」。こちらのほうに聞き覚えがある人も多いかもしれませんね。

ジョージアからの要請を受け、日本でも2015年に「グルジア」から「ジョージア」へと国名の呼称変更が行われました。

そんなジョージアの首都が、南東部に位置するトビリシ。

世界一周者以外でジョージアを訪れる日本人は少なく、首都のトビリシも日本ではマイナーな存在ですが、ヨーロッパでは人気の観光地となっています。

トビリシの魅力は、初めてなのにどこかなつかしい、ノスタルジックな風景と穏やかな雰囲気。物価が安いことも手伝って、居心地の良さからついつい長期滞在してしまうという人が多い町なのです。

トビリシのなにが旅人たちを惹きつけるのか。トビリシ観光の目玉となる、旧市街を歩いてその魅力を発見してみましょう。

100万以上の人口を抱えるトビリシは、ヨーロッパとしてはかなり大きな都市ですが、旧市街の見どころはコンパクトにまとまっており、徒歩で周ることが可能。19世紀の古い町並みが残る旧市街は、トビリシ南部、メテヒ教会をほぼ中心としたムトゥクヴァリ川の東西に広がっています。

旧市街のランドマークは、4世紀のペルシャ時代に建造がはじまったというナリカラ要塞。

現在はなかば廃墟のようになっていますが、トビリシ市街を一望できる絶好のビュースポットとして人気を集めています。旧市街を見下ろす高台に位置しているものの、リケ公園からロープウェイが開通し、アクセスも便利。

位置関係を把握するためにも、まずナリカラ要塞から街歩きを始めるのもいいでしょう。

トビリシは、三方を山に囲まれたすり鉢状の町。町の中心を川が流れ、斜面に家々が肩を寄せ合うようにしてへばりつく、この町特有のノスタルジックな風景に心を奪われます。

ナリカラ要塞から徒歩で坂道を下っていくと、やがて温泉街のある一画にたどり着きます。

ジョージアに温泉とは、意外に思われるかもしれませんが、トビリシは知る人ぞ知る温泉の町。5世紀にトビリシを創設した王が、この地でキジが温泉に落ちて死ぬのを見たために、ここに町を築くよう命じたという伝説があるほどです。

「トビリシ」という町の名も、ジョージア語で「温かい」を意味する「トビリ」に由来しているとか。それを知れば、温泉街があるのも納得ですね。

温泉とはいっても日本の温泉とはずいぶん異なり、トビリシの温泉街にあるのは7~8世紀のアラブ統治期に造られたといわれるイスラム式のお風呂。硫黄温泉の公衆浴場で、美肌効果をはじめ、天然硫黄による治癒効果があるといわれています。

その周囲には、透かし彫りの装飾をあしらったペルシャ風のバルコニーをもつパステルカラーの家々が。

アジアとヨーロッパの文化が絶妙に混じり合った風景を目の前にすれば、ここが文明の十字路、アジアとヨーロッパが出会う場所であることを肌で感じます。

敬虔なキリスト教徒が多いジョージアだけに、首都トビリシには新旧の教会がたくさん。なかでも中心的位置を占めているのが、6世紀に創設されたシオニ大聖堂です。

現在は2004年建造のツミンダ・サメバ大聖堂にその座を譲り渡していますが、以前はこのシオニ大聖堂がジョージア正教の総本山でした。

教会内部には、ジョージアにキリスト教を伝えた聖ニノの十字架が納められています。イコンに彩られた教会内には厳かな空気が漂い、一日中祈りを捧げにやってくる信者の姿が絶えません。

ナリカラ要塞と向かい合うような形で川沿いの丘の上に建っているのが、メテヒ教会。5世紀に建てられたといわれる歴史ある教会で、何度も侵略者に破壊されては再建を繰り返してきました。

こぢんまりとした教会ながら、5世紀からほとんど変わっていないというその姿は、ジョージアの人々の誇りと信仰心を体現しているかのようです。

アジアとヨーロッパのはざまで、過去にさまざまな勢力に支配されてきたトビリシ。波乱万丈の歴史と、山に囲まれた地形があいまって、この地にはアジア的であり、ヨーロッパ的でもあるユニークな町並みが生まれました。

先進国ではないからこそ、昔ながらの景色や素朴な雰囲気が残るジョージア。これから、日本でもしだいに人気が高まっていきそうです。

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