2010年にユネスコの無形文化遺産に登録されたスペインの情熱的な歌と踊り、フラメンコ。
その起源は正確にはわかっていませんが、スペイン南部アンダルシアで生まれ、さまざまな民族から影響を受けながら200年以上に渡り進化を続けてきたそうです。
フラメンコというと踊りのイメージが強いですが、実際には踊りだけではなく、歌(カンテ)、踊り(バイレ)、ギターの伴奏が一体となった舞台芸能をフラメンコと言います。
マドリードはフラメンコ発祥の地ではありませんが、スペインの首都だけあって、「タブラオ」と呼ばれるフラメンコ専用のライブハウスがいくつもあります。
今回は「コラール・デ・ラ・モリア」「トレース・ベルメハス」などと並ぶマドリードの人気のタブラオ、「カフェ・デ・チニータス(CAFÉ DE CHINITAS)」を紹介しましょう。
カフェ・デ・チニータスはマドリードの旧市街、スペイン広場や上院議会の近くにある、17世紀の邸宅を改装したタブラオです。
スペイン国王フアン・カルロス1世をはじめ、3人の国王もショーを楽しんだというこのタブラオは、歌と踊りには定評があり、世界中からたくさんの人々がショーを観に訪れます。
なお、マドリードの郷土料理コシードで有名な老舗レストラン「ラ・ボラ(LA BOLA)」は目と鼻の先です。
タブラオ内にはさまざまな絵画や写真が展示されていました。
階段を上がると、レストランのテーブル席が並んでおり、その奥がフラメンコの舞台です。
内装は椅子や鏡などが統一されたデザインで、闘牛の記念品や鮮やかなマントン・デ・マニラ(フラメンコの衣装の一部としても重要な役割を持つショール)のコレクションが飾られていました。
舞台は意外と小さく、客席に近いため、最前列ならかぶりつきで見られます。
カフェ・デ・チニータスのフラメンコショーは、日曜を除く毎日20:30~と、22:30~の二部制で、1回のショーはおよそ1時間半程度です。
ショーが始まると食事をするどころではなくなってしまうので、早めに来て先に食事をし、その後はお酒を飲みながらゆっくりショーを鑑賞するのがおすすめ。
カフェ・デ・チニータスでは、タパスからパエリアなど本格的な食事まで、さまざまなスペイン料理を食べることができます。
この日はマンチェゴチーズ、生ハム、クラッカー、スパニッシュオムレツなど簡単なおつまみをいただきました。
スペイン産のワインやビール、赤ワインにフルーツを加えた果実酒サングリア、シェリー酒など、お酒類の品ぞろえも豊富です。
時間になり、最初に出てきたのはギタリスタ(ギタリスト)を含めた男性3人。
ギターの音色にはどこか物悲しさが漂います。フラメンコにはラスゲアードという、弦をひとまとめにかき鳴らす独特の技法もあるそうなので、ぜひ注目してみてください。
その後、バイラオーラ(フラメンコの踊り手)とカンタオール(フラメンコの歌い手)も舞台に上がり、ショーの幕開けです。
この日のショーでは、4名のバイオーラがそれぞれ踊りを見せてくれました。
フラメンコのリズムの基本となる足さばきは「サパテアード」。フラメンコシューズが舞台を打ち付けるテンポのよい音が客席に響き渡ります。
フラメンコのバイラオーラは年代が幅広く、若くてきれいな女性だけ、というわけではありません。年齢を重ねた女性の踊りには、人生が現れるのでしょうか、独特の深みと迫力を感じます。
フラメンコでは、伝統的に、女性の踊り手(バイラオーラ)は曲線的で、腕や上体の動きを大切にし、男性の踊り手(バイラオール)は直線的で激しい足の動きが特徴と言われているそうです。
最近ではその男女の踊りの境界線も曖昧になってきているといわれていますが、女性らしい曲線と優美な腕の動きには、思わず目が吸い寄せられてしまいます。
足の動きを見せるために持ち上げたり、ひるがえらせたりするファルダ(フラメンコのスカート)は、まるで生きているよう。
朗々と響き渡る歌声に、高い音や低い音でアクセントをつけるパルマ(手拍子)が重なります。
フラメンコには生きる喜びと辛さ、楽しさと悲しさの両方がつまっていて、それは人生そのもののようです。
男性の踊り手(バイラオール)の踊りは、揺れるファルダ(スカート)こそないものの、女性の踊りとはまた違うダイナミックで力強い足さばきが見事でした。
ショーが終盤に近付くにつれ、歌(カンテ)と踊り(バイレ)とギターの伴奏がさらに深く溶け合い、熱気を帯びてくるのが、客席にまで伝わってきました。フラメンコのことをよく知らなくても、ここにくれば間違いなく舞台に引き込まれることでしょう。
最後には全員が短い踊りを披露して、ショーは終了。すばらしい時間が過ごせました。
ぜひマドリードに行ったら、本場スペインならではのフラメンコショーを生で見て、歌と踊りとギターが渾然一体となった舞台を体験してみてください。
予約なしでも入れることもありますが、人気のタブラオは満席になることもあるので、予約をしていくのがベター。
今回紹介したカフェ・デ・チニータスの場合は、CAFÉ DE CHINITASのサイトからネット予約が可能です。
Post: GoTrip! https://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア
名称 CAFÉ DE CHINITAS(カフェ・デ・チニータス)
住所 Calle Torija, 7 – 28013 Madrid, スペイン
電話 +34 915 595 135
ショーは2部入れ替え制で、20:30~、22:30~
日曜の夜は閉店
公式サイト https://www.chinitas.com/en/home/
Facebook https://www.facebook.com/Cafedechinitas/