北朝鮮の金正恩委員長とロシアのラブロフ外相が会談したことを1日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)が取り上げた。この報道について、番組MCの羽鳥慎一や吉永みちこ氏は金委員長を「外交巧者」「交渉上手」と、その手腕を持ち上げる姿勢のコメントをした。

番組によると昨日、金委員長は平壌を訪れたパブロフ外相に「プーチン大統領が、アメリカの支配に対抗していることに感謝している」と話し、ラブロフ外相は「ロシアにもお越しいただければうれしく思う」と、金委員長の訪問を要請したという。

金委員長がラブロフ外相との会談を、このタイミングで行ったことにはどんな狙いがあるのか。コリア・レポートの辺真一編集長は「米朝首脳会談に向けて大詰めの協議が進む中、“段階的な非核化”を訴える金委員長は、中国の習近平国家主席に加え、ロシアのプーチン大統領も味方にしたい」と解説した。

これを受けて、コメンテーターの吉永氏は「アメリカと会談するにあたって、自分たちのバックをしっかりと固めてくるという。ものすごく“外交巧者”という一面がいきなり浮きぼりになりましたね」と金委員長を持ち上げるコメント。MCの羽鳥も「いままでのこの一連の動きで、途中から金正恩委員長はすごいなというふうに考えが変わってきて…本当に外交がすごいですね」と、北朝鮮の外交能力を絶賛とも取れる発言をした。

また、テレビ朝日解説委員の玉川徹氏は「いま北朝鮮が20発くらいの核弾頭があるんじゃないかとアメリカが考えているらしくて、それを一気に渡せ、渡さないの交渉が(水面下)で行なわれている報道がある」「一気に引き渡したら北朝鮮は手持ちのカードがなくなっちゃうわけですよね」「唯一のそのカード、自国のカードである核を放棄した後に自国が責められるかどうか不安になるわけですよ」と、北朝鮮の代弁者であるかのように熱弁し「一気に引き渡すか引き渡さないか、アメリカは一気じゃないと認めないんじゃないかと思います」と、まるでアメリカが北朝鮮へ核兵器の全面廃棄を求めるのがおかしいと言わんばかりの論調を展開した。これに対し、MCの羽鳥は「(北朝鮮は)交渉上手という印象ですよね」と同調した。

国と国の間には外交上の綱引きがあるのは当然かもしれないが、核兵器の“一括廃棄”を要求するアメリカよりも、段階的な非核化に引き延ばそうとする北朝鮮側を、日本の情報番組のMCやコメンテーターが「外交巧者」や「交渉上手」と礼賛するとは、一体どういうことなのか。違和感ばかりを感じさせるを放送内容であった。