2020年7月17日にローンチされたYearn.financeは、レンディングの利益を自動で最適化することを目指すアグリゲーターのプロトコルである。トークンをyearn.financeに預けると、dydx、Aave、Compound、Fulcrumなどのレンディングプロトコルの中から最も収益性の高いもので自動的に運用が行われる。
Yearnは開発者のAndre Cronje氏がほぼ一人で立ち上げたプロジェクトである。同氏はツイッターで「これは自分自身のために作成したソフトウェアであり、バグが起こりえる点を理解してもらえない場合には使用しないでほしい」と明言している。未監査のプロトコルであるが、コードの監査企業TrailOfBitsのメンバーの一人がyearnのコミュニティに参加し、コミュニティ内でバグの発見や対応が行われている。
Yearn.financeには、(1)複数のレンディングプロトコルから最適なところを選び、ユーザーに債権トークンであるyTokenを配布するEarn、(2)デポジット機能を持つマシーンのyVaults、(3)5種類のステーブルコインとyTokenとをスワップできるZap、(4)保険のInsure、という4つのサービスがある。それ以外にも、ステーブルコインのレバレッジ取引を提供するyTrade(ileverage.finance)、Aaveの自動清算エンジンのyLiquidate(iliquidate.finance)など、次々とサービスが追加されているのも一つの特徴である。
Yearn.Financeの基盤トークンはYFIである。7月17日から9日間で、3つのプールに流動性を提供者したユーザーに、総発行数30,000枚の全てが配布された。新たにYFIが欲しいユーザーは取引所などで購入する必要がある。プレマインやトークンセール、開発チームへの分配などが一切なく、全トークンがユーザーに分配されたことから、「分散化」への姿勢を評価する声もあるようだ。
YFIを所有することでYearnのガバナンスに参加できるが、開発チームは「それ以外の明確なインセンティブはない」としている。ただ、YFIをガバナンスプールにステークすると、YFIを焼却することで、報酬プールの中から(Aaveによって利回りが付くDAIの債権トークンの)aDAIを得ることができる。10月26日時点でのYFIのステーク報酬は年9.18%ほどであった。
YFIの時価総額は4.4億ドルで、時価総額ランキングは37位である。BinanceやCoinbaseによる上場報道で価格は上昇し、一時4万ドルに迫った。ただ、9月末に開発者によるテスト段階の新プロジェクト「eminence.finance」から1,500万ドル相当のDAIが不正流出する事件があったためか、YFIの価格も急落した(10月26日時点では14,000ドル台)。TVLも減少したが、DeFiPulseのランキングでは9位と、DeFi市場における存在感は引き続き大きい。