DeFiエコシステムには、金融機能を提供するプロトコルやアグリゲーター、オラクルなどの他、複雑なDeFiプロトコルのUI/UX(デザインや使いやすさ)を解決するアプリケーション(DeFiサービス内蔵ウォレットや統合ウェブアプリ)が多数存在する。DeFi統合アプリは、(1)多機能&玄人向けのDeFiサービス統合ウェブアプリ群と、(2)シンプル&ライトユーザー向けのDeFiサービス内蔵モバイル・ウォレット、の2パターンに分かれる。前者にはInstadappやDeFi Saverなどが含まれる一方、後者にはArgentやMonolith、Dharmaなどが含まれる。MetamaskやZerionなどは両タイプの中間に位置する。
DeFiサービス統合ウェブアプリ群は、DeFiにおける運用に特化し、豊富な補助機能を提供している。Instadappは、レンディングやDEXなど、複数のDeFiサービスを一つのインターフェイスから利用可能にしたウェブ・アプリケーションを提供している。もう一方のDeFi Saverは、Instadappと類似した統合アプリで、レンディングサービスの債務ポジションが清算されないように、ポジションの監視・クローズを自動で行ってくれる。スマートウォレットを作ると、デポジット資金を4つのレンディングサービスの中から最も利率が高いサービスに自動で貸し出してくれる点も特徴の一つである。
DeFiサービス内蔵モバイル・ウォレットは、使いやすさに特化し、既存金融とDeFiのゲートウェイとしての役割を持つ。Argentは最も人気が高いDeFi内蔵モバイル・ウォレットである。セキュリティやUI/UXに優れており、モバイルから多種類のDeFiサービスに簡単にアクセスできる点が特徴である。最近、YearnやBalancer、Aave V2との統合も実施し、サービスを急拡大させている。MonolithもArgent同様にDEXなどのDeFiサービスを内蔵するモバイル・ウォレットであり、基盤トークンTKNを発行している。現状はDEX機能のみの統合であるが、今後はレンディング機能なども追加される予定である。欧州圏のみではあるが、ウォレットと紐づいたVISAデビットカードを提供している。Dharmaは米国のみで提供されているDeFi内蔵モバイル・ウォレットであり、Uniswapと統合しており、指値注文などを行うことができる。顧客銀行口座との紐付けも行っており、既存金融とDeFiを繋ぐゲートウェイ的サービスとして注目されている。
上記両タイプの利点を兼ね備えているMetamaskは、最も代表的なイーサリアム・ウォレットで、累計ユーザー数は100万人を超える。主にブラウザウォレットとして使われているが、2020年下期にモバイルアプリの提供も開始した。10月にローンチしたMetamask Swapによって、ユーザーはウォレット内からDEX最良レートのトークン交換が行えるようになった。Metamaskのモバイルアプリはウェブブラウザ機能を備えているため、モバイルユーザーはMetamaskを通して実質的に全てのDeFiアプリにアクセスできることになる。
金融サービスとして競争するDeFiプロトコルとは異なり、DeFi統合アプリの競争ポイントは主にUI/UX面にある。今後DeFi市場で新規ユーザーが拡大していくためには、これらのサービスの進歩と発展が欠かせない。