COVER Protocolは、スマートコントラクトのハッキングなどに起因する顧客資産流出イベントに対し、保険を提供するP2P保険サービスであり、今年11月に正式にサービスがローンチされた。現在のCOVERの合計ロック資産額(TVL:Total locked Value)は約22億円で、ローンチから1ヶ月弱で急成長した。

COVERは、期限までに事故発生時に保険金を請求できる権利の「CLAIM」と期限までに事故が発生しなかった場合に保険金を受け取れる権利の「NOCLAIM」という2種類のERC20トークンと、それらを売買する流通マーケットを提供することで、保険商品の発行・流通市場を構築している。保険に入りたいユーザー(保険加入者)はCLAIMを、保険を提供するユーザー(保険提供者)はNOCLAIMを、それぞれ購入して保有する。流動性を提供するユーザー(流動性提供者)はDAIを担保にCLAIMとNOCLAIMを発行し、Balancerプールに流動性を供給する。保険発行者となるのは流動性提供者である。

COVER ProtocolのガバナンストークンはCOVERである。CLAIM保有者が事故に関連するオンチェーン取引データなどを申請し、COVER保有者による申請の妥当性に対する投票が行われる。最後に、ガバナンストークンであるCOVER保有者の投票によって選ばれたClaim Validity委員会のメンバーが、申請の妥当性に関する最終審査を行う。今のところ過去の請求事例は4件で、11月末に起きたPickle Financeの流出事故に関連する請求1件のみ承認された。なお、COVERは上記の他、ロトコルの収益の使い方や手数料などの各種パラメータに関する意思決定にも用いられる。システムが徴収している手数料はCLAIM、NOCLAIMトークンの償還(0.1%)と、Balancerプールの交換手数料(1~2%)のみである。

DeFi保険では最も人気が高いNexus MutualがCOVER Protocolの競合である。Nexus MutualのTVLは110億円とCover Protocolを上回るが、現在、シールドマイニングプログラムを通して初期のコントリビューターに報酬としてCOVERを提供していることが、Cover Protocolの TVLの増加につながっている。Cover Protocolは14のDeFiサービスに対して保険を提供しているのに対して、Nexus Mutualは52のサービスに提供している。Nexus Mutualの利用にはKYCが必要であるが、Cover Protocolの利用にはKYCの必要がないため、居住地にかかわらずどのようなユーザーでも利用できる。

COVER Protocolは、11月末にYearn Financeとサービスを合体すると発表した。合体後は、Cover Protocol の保険対応数の拡大、Yearnが提供する個々のサービスに対する保険提供など、多くのシナジーが生み出されよう。
出所:Coin Market Cap