王宮やワット・アルン、ワット・ポーなど、数々の個性あふれる観光スポットを抱えるタイの首都バンコク。

バンコクだけでも楽しみが尽きることはありませんが、バンコクから日帰りで近郊に足を延ばせば大都会バンコクとはまた違ったタイらしさを味わえる場所があります。

そのひとつが、バンコクからおよそ70キロ離れたサムットソンクラーム県にあるメークロン市場。

タイ国有鉄道メークロン線の終点、メークロン駅周辺で開催されるこの市場は、「線路市場」として有名で、なんと今も現役で使われている線路にまで商品が並べられているという世界的にも珍しい市場です。

列車の通過時間になると、市場の商人たちは一斉にテントをたたみ、列車が通過できるよう準備をはじめます。この様子が世にも珍しいと、いまや世界各国から観光客が押し寄せるタイ屈指の人気観光地になっています。

・メークロン市場への行き方

メークロン市場まで個人で行くなら、乗り換えなしで行けるロットゥー(ミニバス)の利用が便利です。メークロン市場行きのロットゥーが出ているのが、旧南バスターミナル(サーイ・タイ・ガオ)。

このバスターミナル自体がBTSやMRTなどが通っていない郊外にあるため、旧南バスターミナルまではタクシーを利用するのがおすすめです。タクシー料金はBTSのビクトリー・モニュメント駅周辺からメーターで100バーツ強。

旧南バスターミナルからメークロン市場までのロットゥーは、60バーツです。

タイの庶民の乗り物であるロットゥーは、安くてとてもありがたいのですが、問題なのはある程度人数が集まるまで出発しないため、タイミングによっては待ち時間が長くなること。筆者がメークロン市場に出かけたときは、ロットゥーの出発まで一時間待ちました。

バンコクから日帰りで列車が市場を通過する様子が見られるのは、現実的に考えて8:30、9:00、11:10、11:30、14:30、15:30の計6本。ロットゥーを利用する場合、発車までに長時間待つ可能性も考えて、余裕を持って早めにバンコクを出発するようにしましょう。

滞在期間が短く、時間を有効に使いたい場合はバンコクからの日帰りツアーを利用するのもおすすめです。

・メークロン市場の様子

「Railway Market」と呼ばれる名物市場が開かれるのは、メークロン駅から続く線路沿い。列車が駅に入ってきた直後のメークロン駅前は、ご覧の通り観光客と地元の人々の往来でごった返しています。

まるでお飾りのように見える車両ですが、時間になるとこの列車が動き出して市場を通過するのです。

外国人に大人気の観光スポットとなっている今も、メークロン市場で売られているのはほとんどが野菜や果物、肉、魚介類などの生鮮食品でローカル度満点。

外国人観光客を意識して、ドライフルーツやタイパンツなどを売っている露店もありますが、ほとんどの商品は昔ながらの地元民相手の商売を続けています。

こんな古き良きタイが垣間見えるところもメークロン市場の人気の秘密なのかもしれません。地元の人も観光客もみんな当たり前のように歩いていますが、ここは現役の線路。

線路の上に商品を並べている露店もたくさんあります。日本ではありえない光景ですね。

観光客向けの商品はあまりありませんが、マンゴーやドラゴンフルーツなどの南国フルーツ、珍しい色のカニ、仏教グッズなど、タイの人々の日常が感じられる商品の数々を眺めながら歩くのはとても興味深い体験です。

・列車待ちにおすすめのカフェ「PUNJUNG」

ロットゥーの発車時間が決まっていないため、メークロン市場へは狙った時間に到着できるとは限りません。

筆者自身、14:30の列車を見るつもりで出かけたものの、バンコクの旧南バスターミナルでの待ち時間が長かったため、メークロン市場に到着したのは14:30の列車が通過した直後。次の列車の通過まではあと一時間近くあるという状況でした。

次の列車の通過までに待ち時間があるときにおすすめのスポットが、市場の奥のほうにあるカフェ「PUNJUNG」

オープンで非常に簡素なお店ではありますが、無料Wifiもあり、ひと休みするにはぴったり。フルーツスムージーは50バーツという安さで、観光地でありながら良心的な価格設定も魅力です。

しかも嬉しいことに、列車の通過もこのお店から見守ることができるのです。このカフェは線路市場の終わりのほうにあるため観光客でごった返すことがなく、写真も撮りやすいですよ。

・列車通過の瞬間

観光客が今か今かと待ちわびるなか、いよいよ列車が市場を通過する瞬間がやってきました。列車が通る旨のアナウンスが流れると、市場の商人たちはおもむろにテントをたたんだり、線路の上に出していた商品を引っ込めたりします。

しかし、てきぱきと動くわけではなく、動作はなんともゆっくり。観光客にとっては一大イベントでも、地元の人にとっては「いつものことだから」という感覚なのでしょう。

テントがたたまれた市場にはギラギラと南国の日差しが降り注ぎ、貴重な瞬間を見届けようとする人々の興奮もあいまって熱気に満ちた状態に。

列車の顔が目に入った瞬間、群衆から歓声が上がります。市場すれすれを通りながら少しずつ近づいてくる車両。

するとカフェのマスターがジュースの入った袋を高々と掲げます。

「えっ、何!?インスタ映えのための素材提供?」などと思っていると、通過する列車の車掌さんがそのジュースをキャッチ。なるほど、事前にオーダーしてあったのですね。

このエピソードからも、メークロン市場を通る列車がいかにゆっくりと、市場ぎりぎりを走っているかがわかるのではないでしょうか。

列車に乗っている人たちも、みんな市場ぎりぎりを走る列車からの決定的瞬間を撮影したり、手を振ったりしています。列車の乗客の顔も近い!

市場で列車の通過を見守った人々と、列車から市場の様子を見届けた人々のあいだに、貴重な場面に居合わせた一体感のようなものが生まれた瞬間でした。

・列車が通過するとまた元通りに

列車が通過すると、市場はまた元通りに。日差しをよけるためのテントが再び広げられ、手前にひっこめていた商品をまた線路の上に並べます。

こんな光景が一日になんども繰り広げられているメークロン市場、なんと驚くべき場所なのでしょう。

列車通過のアナウンスが流れ、実際に列車が通り、市場が元通りになるまでのあいだは時間にして10分もないくらいでしょうか。

あっという間の出来事ではありましたが、こんなにエキサイティングな光景はめったに見られるものではなく、ロットゥー発車まで一時間待った後、さらに一時間半かけてわざわざ来た甲斐があったと思いました。

驚くべき光景が当たり前のように繰り広げられるメークロン市場。近郊にはタイ人に人気のアンパワー水上マーケットもあるので、ふたつ合わせてノスタルジックな一日を楽しんではいかがでしょうか。

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