6月2日、東京外かく環状道路(外環道)の三郷南IC(埼玉県三郷市)~高谷JCT(千葉県市川市)間が開通することになった。
外環道とは、東京都心から半径約15キロの距離を走る予定の総延長85キロ環状道路である。計画がスタートしたのはなんと50年前、半世紀にものぼるプロジェクトだ。
今回は外環の東側の部分、総延長12,1キロメートルの区間が完成する。これにより慢性的な渋滞が解消されることが期待されている。
残りは現在工事が勧められている西側のエリア、大泉ジャンクションから東名高速道路をつなぐ区間と、計画を予定されている東名高速道路と湾岸道路を結ぶ区間を残すばかりである。
開通を記念して開催されたイベント『俺の外環』に足を運んだ。
イベントが開催されたのは『松戸インターチェンジ付近トンネル内』という、普通のイベントではありえない場所だった。
まだ自動車が走っていない真新しい道路を歩いて、イベントの場所へ向かう。会場にはズラリと写真のパネルが展示されていた。
大きいパネルには外環を作った人たちが現場で働いている様子を再現した写真が写っていた。そしてそれぞれの写真には、かっこいいキャッチコピーがついていた。反対側にはズラリと外環道路工事に携わった人たちの顔写真が1000枚以上展示されていた。
さすがに国家プロジェクト、関わっている人数が多いな……と思ったが、写真に写っているのはほんの一部だそうだ。実際には数百万人単位の人たちが関わっているという。さすがに規模が違う。想像しただけでクラっとしてしまった。
いかにも現場で働いているオッサンたちの顔を見るのは楽しい。結構、昔は悪かったんだろうな~という迫力のある顔も多い。
トークショーでは、首都国道事務所長の甲斐一洋氏や、イベントのポスターを書かれたイラストレーターの開田裕治氏、一般社団法人ツタワルドボクの片山英資氏で実際の作業の現場の話が繰り広げられた。
作業の様子を動画や写真で見ることができたのだが、とにかくおそろしく規模が大きかった。トンネルを掘る超巨大なマシンは、まるでSF映画で巨大な敵を倒すための兵器のようだった。
「人間はこんな大きな物を作れるんだなあ……」
と改めて現在の道路工事の技術の高さを思い知った。
■気分はゾンビ映画?車の通っていない、夜の無人高速道路をあるいてみる
そして18時からはナイトツアーがはじまった。一時間かけて高速道路を歩くという、健康的なイベントだ。みなさんも高速道路はよく利用されると思うが、じっくりとゆっくり見ながら歩く機会はほとんどない。
高速道路をみんなで歩いている様子を見ながら「わ~なんかゾンビ映画みたいだなあ。終末感ある」と思う。
ゾンビの発生により首都機能がすでに麻痺、溢れ出たゾンビたちは高速道路をさまよう……そんなシナリオを頭で作った。もちろん自分もゾンビの一人である。生きた人間の新鮮な脳みそを求めて新品の道路を歩く。
トンネル入り口付近では特別なはからいで防災対応の赤色灯が点灯された。真っ赤なライトで照らされるトンネルはエマージェンシー感はんぱなくなる。ますますゾンビ感が出て楽しかった。(実際に起きたら、投棄された自動車で道は塞がれてしまうだろうけど)
この警告灯付きの照明は新しい技術だという。それ以外にも渋滞に対応したペースメーカーライトの点灯を見ることができた。自動車の流れを先導するようにLEDライトが光っていくシステムだ。特別にライトを様々な色に変化させてくれたのだが、観客からは「レアだ!!」と声が出ていた。
ウォーキングには現場の人が一緒に同行して設備について解説してくれたのがとても楽しかった。緊急用の電話や、外へ伝わる階段などは普段近くで見ることが出来ないのでワクワクした。
高速道路を歩くというちょっと不思議な経験をできたイベントを満喫した。開通後は四六時中自動車が走り続ける、首都の血管になるんだな~と思うと感慨深い。
国家プロジェクトであるから、どうせ固いつまらない雰囲気のイベントなんだろうなと思って来たのだが、とても良くできた企画だった。ちょっと茶化した言い方をすれば、
「NHKっぽい固いイベントかと思ってきたら、民放っぽい雰囲気だった」
という感じである。ただ民放っぽいと言ってもタレントを呼んでチャラチャラとしたイベントをするのではなく、現場の人たちに焦点を当てているのが良かった。国のプロジェクトはどうしても冷たく閉ざされたように見えるが、実際にはオッサンたちが汗水たらしてトンテンカンテン作っているのだ(もちろん女性もたくさんいます)。
東京オリンピックも広告代理店丸出しの寒々しいキャンペーンを繰り広げるくらいなら、競技場を作っているオッサンたちをクローズアップしてくれたら良いのになあと思う。たぶんずっと好感度が上がるはずである。