訪日する外国人客が増加している。大阪も人気スポットの一つだ。僕は仕事で難波千日前によく足を運ぶが、黒門市場などには外国人観光客で溢れかえっている。そこそこ高い食材でもバンバン買ってくれる、とホクホク顔の人も多いのだとか。

電車でユニバーサル・スタジオ・ジャパンや京都の伏見稲荷大社に行くのが定番の観光ルートになっているという。

大阪にはホテルが足りないと言われていたが、ここのところ開業ラッシュが起きている。ここ1年で約70軒が開業した。

僕は取材もかねて、ドヤ街西成のドヤに泊まることが多いが、最近はドヤもウェブで予約することができて便利だ。昔は繁忙期だと、空き室がほとんどなくなり、何十軒とドヤをめぐってへとへとになっていたのでずいぶん楽になった。

しかしいつもドヤにばかり泊まっていても芸がないなと思い、難波駅近くにあるドミトリーに泊まることにした。ドミトリーとは、相部屋で泊まる宿のことである。

ネットで調べていると“12人部屋”というのに驚きの部屋を見つけた。昔、タコ部屋の飯場で寝泊まりした時は、6人部屋だったがかなりエグかった。壁には

『働くぞ働くぞ働くぞ働くぞ働くぞ働くぞ働くぞ……』

『金を稼ぐぞ金を稼ぐぞ金を稼ぐぞ金を稼ぐぞ金を稼ぐぞ……』

とヤクザな社長が書いた呪いの文字が所狭しと書いてあった。一日3〜4時間しか睡眠時間がとれなかったので、みんなフラフラで働いていた。まさに地獄である。

12人部屋と言えば、その倍である!! どんな光景が繰り広げられているのだろう? と楽しみにしながら『カオサンワールドなんば』に向かった。

最寄り駅は、なんば駅と大阪難波駅で徒歩5分以内という超便利な立地だ。ビルには『KHAOSAN WORLD NAMBA』とローマ字表記のみが記してある。期待度を高めて中に入る。一階部分は、共用スペースになっていて観光に訪れた外国人で大いに賑わっていた。様々な人種の人達がいて、大いに盛り上がっている。他にもキッチンも使える共用スペースがあったり、コインランドリーがあったりと便利だ。廊下ではソファで韓国人がスマートフォンで話している。

ドキドキしながら、ドアを開ける。12人部屋はなんと……とても静かでキレイだった。たしかに2段ベッドが並べられているのだが、ベッドは斜めになっていて、ベッドの中は見えない。ベッドもかなり広い。カプセルホテル程度のサイズがあった。Wi-Fiもバリバリに飛んでいて、スマートフォンもいじり放題だ。ベッドに備え付けの貴重品入れは狭いので、財布やスマートフォンなどしか入れられないのがちょっと不安だった。家族や知人同士で泊まればその不安もなくなるだろう。

お風呂はシャワーだけでかなり狭かった。服なども置く場所がないのでかなりしんどい。これまでで唯一のマイナス点である。

さては夜中になると、外国人がラテンの乗りで大騒ぎするんだろうな!! と思ったが、みんなとても静かに寝ている。

洗面台で歯を磨いていると、20代の若者が入ってきたが、目が合うとにっこり微笑み「オサワガセシテスイマセン」と言ってそっとベッドに入っていった。

普段泊まっているドヤは、夜中になると酔っ払ったオッサンが「おえっおえっ」とえずいているし、中国人の家族が大きな声で夫婦喧嘩していたりする。

若者が泊まるドミトリーの方がうんと静かだとは……意外だった。

ただ宿泊費は2000円以上するので、ドヤの方が安かったりする。ドヤは個室なので、連泊した際に荷物を置きっぱなしにできる。ドミトリーは出かけるたびに荷物を全部運び出さないといけないのでめんどくさいのだ。

とは言え2000円ちょいで難波のど真ん中で寝られるのだから便利だ。宿泊先が決まってない人は泊まってみてはいかがだろう?