米中貿易戦争が激化している。7月6日米国は中国のハイテク商品など340億ドルの品目に対し、25%の関税を発動した。それに対して、中国は、米国産農産物など340億ドルに報復関税をかけるとしたのだ。

そして、これはまだ第一弾であり、近日中に160億ドル積み増される予定になっている。また、米国は中国の報復に対して、2000億ドル産品に10%の追加関税をかけるとしており、再び中国が報復した場合、さらに3000億ドルを追加するとしている。これが発動されれば中国から米国への輸出すべてに関税をかけるという事になる。

また、米国議会も動いている。米国政府は中国政府とZTEへの制裁解除で合意したわけであるが、米国上院はこれを阻止する国防権限法を賛成多数で成立させた。これは、ZTEだけでなく、ファーウェイなど中国通信機器や通信サービスにも制裁を拡大しようとしている。この法律は来年度(今年9月から)の軍事予算などと一体であるため、大統領でも阻止が難しい。

米国下院で上院案がそのまま通った場合、米国国防総省と取引するすべての主体(企業、個人、団体)は、中国通信機器メーカーと中国の通信サービスを利用できなくなる。日本など外国企業もこの対象となると考えられるため、他国にも大きな影響が出ると思われる。そして、米国下院では中国からの先端企業や安全保障上重要な企業への投資を規制する法案が成立しており、上院も通過する見通しになっている。

そして、これと並行する形で、中国の金融もおかしくなり始めている。米中貿易戦争の悪化により、人民元からのキャピタルフライトが発生、人民元安になるとともに株価も下落、実体経済と株式、そして金融の連鎖形態での状態悪化が起きているわけだ。これは中国企業や中国の銀行の資金調達に大きな影響を与え始めている。

このような状況の中で米銀などは中国企業への態度を硬化させ始めており、中国企業による爆買いが債務爆弾になろうとしているわけだ。すでに、中国保険大手安邦がこの罠にはまり有利子負債36兆円を抱え国有化、海航グループも11兆円程度の負債を抱え、国からの支援を受ける方向で話が進んでいる。

バブル崩壊後、日本企業も同様の罠にはまり、日本の銀行の資金調達に2%程度のプレミアム(加算金利)がつけられた。これはジャパンプレミアムと呼ばれたわけだが、このまま進めば、チャイナプレミアムが付けられ、拡大する可能性も高いといえよう。

米国は、貿易だけでなく、米国の最大の力である金融を使って中国潰しを仕掛ける可能性が高く、これは中国の国内経済と海外戦略を直撃するものになるのだと思う。そして、それが一段落した時点でハイテク部品などの禁輸などさらに厳しい処置をとる可能性も高い。