ドイツの経済と金融の中心であるフランクフルトから、南へ電車で15分ほど走ったところにある町ダルムシュタット。

この町には19世紀末から20世紀にかけ、当時のヘッセン大公であったエルンスト・ルートヴィヒが欧州各地から芸術家を集めて作った村「マチルダの丘」があります。芸術家たちが建てたユーゲントシュティールの建築群は多くの建築・芸術ファンを惹きつけ、その優雅な建物を一目見ようと訪れる者が後を絶ちません。

そんなマチルダの丘でひときわ目を引くのが、空へ向かって高く伸びる「結婚記念塔」。1905年に結婚したエルンスト・ルートヴィヒ大公とエレオノーレ妃の結婚を記念し、ダルムシュタット市が2人へ贈った塔です。

愛する2人の結婚を記念した塔は、100年以上の時を経たいまなおカップルに人気のスポット。こんにちでは年間500組ものカップルがここで結婚式を挙げ、2人の門出を祝います。

結婚記念塔を建設する計画がもちあがったのは、ルートヴィヒ大公とエレオノーレ妃の婚約が発表されてからのことでした。塔はウィーン分離派にも参加していたオーストリアの建築家ヨゼフ・マリア・オルブリッヒが設計し、1907年から翌年にかけて建設されます。

塔の先端は手のような形になっており、これは結婚式でルートヴィヒ大公が宣誓をした際の手をモチーフにしていると言われています。

さっそく塔の中に入ってみましょう。塔に足を踏み入れた私達が目にするのは、天井付近の壁に描かれたモザイク画。「口づけ」というタイトルのモザイク画では、2人の天使が口づけを交わす様子が描かれています。とても愛に溢れている作品は、見る者をロマンチックな気分にさせるほど。

塔の5階部分は「大公の間」、6階部分は「結婚式の間」となっており、ここで結婚式の手続きおよび結婚式を挙げることができます。ドイツの結婚式は証人をつけて結婚の誓いをし、書類にサインをするというごく簡単なもの。その後家族や友人を招いての結婚パーティーが開催されるほか、キリスト教徒の場合は教会式を挙げます。

高さ48.5mの最上階からはダルムシュタットのほか、遠くフランクフルトのスカイラインまで見渡せます。周囲に高い建物がないので、見晴らしはとても良いです。

ルートヴィヒ大公とエレオノーレ妃の結婚式の際の写真や関連する資料も展示されており、当時の様子を少しだけですが想像することができます。

愛する2人のために建てられた結婚記念塔。ロマンチックな歴史が詰まったこの塔で、今日も多くのカップルが永遠の愛を誓いあっています。

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