中身はそのままなのに党名を変える「党名ロンダリング」で、国民の支持は取り戻せるのかーー。

民進党と希望の党が合流した新党・国民民主党に、早くも疑念の目が向けられている。民進党は5月7日、国民民主党と党名を変更し、ここに同日、希望の党からの分かれた国民党が合流。新党では民進党の大塚耕平参院議員(58)と、希望の党の玉木雄一郎衆院議員(49)が共同代表に就き、議席数は衆院39人、参院23人の合わせて62議席となり、立憲民主党(74議席)に続く2番目の野党となった。

ところが同日、J-CASTニュースが「1日で消えた『国民党』超短命政党、何のために?」などと報じ、ソーシャルメディア上では、「玉木代表が100億の持参金を引き継ぐため1日だけの新党『国民党』を結党した」などと話題となっている。

新党について「政策論争どんどんやっていきます」と決意を語る玉木議員のTwitterには、「お願いだから国民のために仕事してもらえませんかね」「政策論争の前に1日で解党した国民党についてきちんと説明するのが先ではないでしょうか?」など厳しいリプライばかりが相次いで寄せられている。

玉木議員はその後、同件に関して何も触れることはなかったが、仮にも議席数62を持つ野党の共同代表である。いったい何の目的で幻の国民党はつくられたのか。安易に党名をコロコロ変える「党名ロンダリング」問題に警鐘をならすべく、NEW’S VISION編集部では関係各所に直撃した。

■国民党はあくまで事務的な手続き?玉木事務所は金目当て説を否定

まず解散・合流の流れを整理すると、希望の党は5月7日に解党し、玉木氏ら多数派は同日の内に「国民党」を届出し、その場で解散をしている。残りの松沢成文参院議員ら保守派5名は改めて「希望の党」を結党する形になった。その結果、旧希望の党は「分割」とみなされ、同党の政党交付金は両新党に引き継がれることになった。そして玉木氏ら国民党の49名は、同日に「国民民主党」と改名した民進党に合流した。

総務省の政党交付金についての解説によれば、党の「分割」では分かれた両党に交付金は配分されるが、「分派(離党)」の形では離れた側に交付金は配布されない。

http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seitoujoseihou/seitoujoseihou08.html

だが、希望の党と同名の党(5名とはいえ)が残っている状況を見ると、ふつうに考えれば今回のケースは「分割」ではなく「分派」である。これはやはり持参金目当てに抜け道を利用したと言わざるを得ないのではないか。1日限りの名目的な新党も許されるのか、総務省に話を聞いてみた。

【総務省・政党助成室】
ーー新・希望の党にも、国民党にも満額の政党交付金が支払われるのか。たとえ1日でも交付されるのですか。

「制度上は問題ありません。希望の党が解散し、新・希望の党と国民党に”分割”されたので、前党の政党交付金を単純に議員数に応じて配分した額がどちらの党にも支払われます。民進党は党名変更後、国民党を吸収して国民民主党になる”存続合併”の形となります。1日しか存在しなくても、その年の交付金は両党の交付金を合算した額が支払われます」

なるほど、セコいと言われようが、抜け穴探しに見えようが、法的には何の問題もないと。だが、玉木議員のサイトでは、新党合流に勇ましい意気込みが語られているものの「国民党」についての記載は一切ない。これはどういう目的で作られたのか、続けて取材をしてみた。

【玉木雄一郎議員事務所】
ーー玉木議員のサイトでは、たった1日だけで消えた「国民党」についての説明がありません。この政党はどういった目的で作られたのでしょうか。

「きわめて事務的な手続きです。松沢(成文参院)議員の方から”民進党の人と一緒にやっていけない”と分党の提案がありました。結党メンバーである松沢氏が党名を使うということで、玉木も敬意を払ってそれに応じました。それで分割手続きにのっとって、一時的に国民党を作らざるを得なかったのです」

ーー持参金目当ての手続きだとも言われています。ネット上では玉木先生が1日だけ国民党を作ったことで、100億円もの政治資金を新党が手にしたなどと言われています。

「それはデマです。希望の党に資産価値はありません。(17年11月)玉木が代表になった時には借金しかありませんでした」

たしかに100億円はソースのない噂である。昨年11月に民進党・大塚耕平代表が党の保有資金について「100億円はない。70億円くらい預かっている」と話したことと相まって、新党にカネがあるというイメージが付いたのだろう。玉木議員の名誉のために付記すれば、1日政党を作ったおかげで入る持参金は”わずか”約27億円(旧希望の党の政党助成金平成30年度分3,042,954,000 × 国民党議席49 ÷ 旧党議席54)である。

だが、国民が信託した理念と党名を残した政党が存続するのなら、離党した議員らは「分派」として交付金は拒否すべきなのではないのか。最後に、新・希望の党を結党した松沢成文事務所にも話を聞いてみた。

【松沢成文議員事務所】
ーー新・希望の党は、国民の信任を受けた旧・希望の党の理念を引き継いでいると考えていいんでしょうか。

「はい、基本的には旧党の”改革保守”の理念だと考えてもらっていいです」

ーーならば、なぜ多数派とはいえ、理念を捨てた側が「離党」という形をとらなかったのですか。

「そもそも1月(16日)に党の執行部の玉木さんから、民進党との統一会派の話が出て、私たちはそれを受け入れられないと表明しています。そして、今回も執行部の決定として民進党との合流が決まり、玉木さんから分割の提案がありました。(選挙による信託という点で)本来なら向こうが離党なるのですが、政治資金の問題などもあり、議員間の話し合いでこのような形に決まりました」

いやはや、希望の党とはなんだったのか。”民進党では当選できない”と小池ブームに飛び乗ったものの、結局は改革保守から変節して、元サヤへと逆戻りした49人の議員たち。その経歴や理念は党名とともにロンダリングしようと、カネと選挙のことしか考えない議員に「希望」など存在しない気もするのだが……。