イタリア北部のトスカーナ地方にある小さな町ルッカ。古代ローマ時代まで遡るという歴史ある町は四方を城壁で囲まれ、内部では「古都」と呼ぶにふさわしい情緒ある街並みが続きます。
ルッカの町を一番はじめに開いたのは、もとはイタリア中部の先住民族であったエトルリア人。その後紀元前2世紀にはローマ帝国の植民都市となり、やがて自治都市としての権利を獲得していきました。
旧市街の中に残されている楕円形の競技場は、ローマ時代の繁栄を象徴する建物。アリーナ部分だった広場を、観客席だった建物が囲んでいます。一見するとここが円形競技場だとは分からないかもしれませんが、広場の中央に立ってみれば周囲の建物が円形に並んでいる事が実感できるはずです。
観客席だった建物は、現在カフェやレストラン、ショップのほか、住居としても利用されています。ローマ時代には建物1階部分にあるアーチ形の部分から、剣闘士や猛獣が入場していました。
当時の姿のままで保存されているローマ時代の円形競技場が多い一方で、このように現在も使用されている競技場はここだけ。これぞまさに歴史との共存といえるのではないでしょうか。
町の中心、ローマ時代から人々の憩いの場所であったサン・ミケーレ広場には、大理石のファサードが印象的なサン・ミケーレ・イン・フォロ教会が建っています。教会は11世紀に建てられ、屋根の上には悪の象徴である龍を倒す大天使ミカエルの像が取り付けられています。
ルッカ様式のファサードは13世紀に製作されたもの。ひとつひとつの装飾は細かいながらも、それらが集まることで迫力のある全体像を演出しています。
自分の居場所が分からなくなってしまうほど、細い道が縦横無尽に巡っているルッカの町。町全体の雰囲気も相まって、まるで中世のイタリアに迷い込んだかのようです。
またルッカは、世界的作曲家として成功を収めたプッチーニ誕生の地。自身初となるオペラ作品を24歳という若さで完成させたプッチーニは、その後『トスカ』や『蝶々夫人』など、現在でも根強い人気を誇る作品の数々をこの世に送り出しました。
ルッカはほかの町からアクセスしやすいのも魅力。フィレンツェから電車で約1時間半、ピサからは約30分の場所にあります。フィレンツェに宿泊して日帰りでピサを訪れる方も多いと思いますが、その際にはルッカにも足をのばしてみてください。
古代から中世、現代へと歴史を紡ぐ落ち着いた街並みが、訪れる者にその歴史を語りかけてくれることでしょう。
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