科研製薬株式会社が4月4日(火)に都内にて「ワキ汗・多汗症 疾患啓発セミナー2023」を開催した。ワキ汗・多汗症にかかった中高生の悩みや現在の病院治療などについての紹介や解説が行なわれた。
科研製薬はサポートサイト「ワキ汗治療ナビ」(https://wakiase-navi.jp/)を2020年11月に開設するなど、ワキ汗・多汗症に関する様々な啓発活動に取り組んでいる。今回のセミナーもその一環だ。
セミナー内では、多汗症治療のスペシャリストである池袋西口フクロウ皮膚科クリニックの藤本智子院長による講演も行なわれた。
藤本院長によれば、原発性局所多汗症とは、手のひら、顔、頭部、ワキ、足の裏などで、日常生活に支障が出るほど汗の量が多くなる病気であり、その診断は汗の量ではなく、汗によってどれだけ生活に支障を感じているかで診断するとのことだった。
多汗症は人間関係やライフスタイル、キャリアなどに大きな影響を及ぼす。その症状によって深く悩むため、不安症やうつ病になる患者もいるという。
また、藤本院長は2022年に実施された「中高生と母親のワキの多汗症に対する認識調査」の結果についても紹介した。この調査では、ワキ汗・多汗症について親子間で認識のギャップがあること、悩んでいる子の心理状態を把握できていない親がいること、子が親以上に医療費を気にして受診をためらっていることなどが明らかになった。
こうした結果を受けて、藤本院長は保険適用の薬剤など治療の選択肢が広がっていることも含めて、啓発の必要があるとまとめた。
患者本人が登壇する座談会も行なわれた。座談会には、藤本院長の他、NPO法人「多汗症サポートグループ」代表理事の黒澤希さん、10代の患者代表として17歳の山形想さんと山形さんのお母さんが参加した。
山形さんは、小学生の頃に自分が多汗症であることを知ったという。大量の汗のせいでテストの紙が破けたり、鉛筆がうまく持てなかったり、家庭科でも針をうまく持てないなど、日常の中で小さなストレスが積み重なっていくと多汗症の大変さを語った。
小学校のときに行った病院では受診を断られるなど苦労していた山形さんだが、高校での探究学習で自身の多汗症をテーマにして調べていく中で、自分はマイノリティと思っていたけれど、多汗症の人は自分以外にもいることを認識したという。
学習を通して知識を得た山形さんは、多汗症についての知識が社会に広がってほしいという希望を述べた。「歯が痛ければ歯医者さんに行くじゃないですか。そういうふうに、『汗が多かったら皮膚科に行けばいいんだ』ということが当たり前だと、社会の中で気づかれていけばいいんじゃないかなと思います」(山形さん)
多汗症に関する認知度を上げることの重要性は、山形さんだけでなく藤本院長も黒澤さんもたびたび言及した。多汗症に関する啓蒙活動の重要性が感じられるセミナーだった。
科研製薬もワキ汗・多汗症で悩む人が安心して生活できる社会を作るため、今後も啓発プロジェクトを進めていくという。