ケニア北東部に位置し、3つの難民キャンプで構成されるダダーブ難民キャンプには、30万人を超える難民が暮らしており、そのほとんどが隣国ソマリアからの難民である。ソマリアの長期にわたる干ばつにより、ここ数カ月で人口が急増。深刻な過密状態となり、水やトイレなどの既存の生活インフラへの負担が増加している。

国境なき医師団(MSF)はキャンプで起こり得る健康被害を回避するには、緊急に追加の資金援助が必要だと警鐘を鳴らし、キャンプ内の不衛生な環境と過密状態の改善に向けて、援助国や資金拠出機関、民間の寄付者や援助機関に直ちに対応するよう呼び掛けている。

■深刻なコレラの流行

ケニアでMSFの活動責任者を務めるハッサン・マイヤキは、「事態の深刻さは、特に水と衛生の分野で緊急の対応を必要としています。過去5年間で最悪のコレラ流行がすでに起きており、他の感染症が流行するリスクも高い。もしそうなれば、キャンプ内の医療体制では間に合わず、壊滅的な結果を招く可能性があります」と指摘する。

ダダーブ難民キャンプを構成するキャンプのうちの1つ、ダガレイで病院を運営するMSFのチームは、ダガレイだけでも、2022年11月のコレラ流行開始以来、1120人以上のコレラ患者と2人の死者を報告している。

現在のコレラの流行は、清潔な水の供給、石けんの配布、トイレの設置と修理、廃棄物管理体制の整備など、キャンプ内の水と衛生関連活動の減少に関連している。現在、キャンプで活動する人道援助団体によると、人口のほぼ半数が機能的なトイレを利用できず、キャンプ内外で野外排せつをすることで、病気の流行リスクが高まっているという。

■水・衛生設備の整備が必須

ケニア保健省や人道援助機関は、コレラの予防接種や健康推進キャンペーンを展開し、人びとが病気から身を守れるようにしたが、流行を抑えるには、水や衛生に関連する設備の改善が必要である。

ケニアでMSFの医療コーディネーターを務めるニティア・ウダイラージ医師は「健康推進活動と集団予防接種を行っていますが、長期使用にたえる上下水道や衛生設備の整備に優先的に資金援助しなければ、コレラの流行を抑えることはできません。質と規模が改善されなければ、E型肝炎のような他の感染症がキャンプで発生するのも時間の問題です」と話す。

■国際的な援助を

新たに約9000人の難民がキャンプ郊外の砂漠に到着し、簡素な避難所を構えて生活している。MSFの水・衛生チームは現在、毎日5万リットルの飲料水をトラックでキャンプの郊外に運び、ここ数週間で、キャンプ内外に150基の公衆トイレも設置。これまでに、約1000世帯にビニールシート、マット、液体石けんを配布した。しかし、人びとのニーズを満たし、人道危機を防ぐための課題は山積している。

ケニア政府は、新たに到着した人びとを受け入れ、既存のキャンプの負担を軽減するために、第4のキャンプであるイフォ第二キャンプを再開する計画を発表した。MSFは、これらの計画が迅速に策定され、難民にとって最低限必要な生活水準を保てるように、4つのキャンプ全てを対象とした上下水道と衛生分野への資金援助の増加を要請している。

さらにMSFは、国際社会、援助国、資金拠出機関・民間寄付者に対し、ダダーブの危機的状況への対応を急ぐとともに、劣悪な衛生環境に対処し、病気の拡大防止に向けて即座に対策を講じるよう要請する。また、長期的には、MSFはケニア政府と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に対し、ダダーブ難民キャンプから動くことができない難民のために、恒久的な解決策を見つけ出すことも求めている。