「子ども第三の居場所」をご存じだろうか? 様々な課題を抱えた家庭の子どもが安心して過ごせる居場所を作るという事業で、日本財団とB&G財団が支援している。家庭でもない、学校でもない場所ということで「第三の居場所」と名付けられた、子どものための居場所作りは全国へと広がっている。

この「子ども第三の居場所」を茨城県筑西市に4月に開設したのが、一般社団法人茨城サドベリースクールの代表理事の田中邦東氏だ。

田中氏は児童自立支援施設、障害児者療育施設、公立小中学校などで20年以上勤務した経験を持ち、2022年に一般社団法人茨城サドベリースクールを立ち上げ、不登校で悩む人々の相談支援やスクールソーシャルワークなどに取り組んできた。

その田中氏が茨城県筑西市と連携しつつ建設を進めていたのがフリースクール「茨城サドベリースクール」で、「子ども第三の居場所」はスクールと共に本年4月に開設した。

田中氏に、開設に至った経緯や活動にかける思いなどを聞いた。

──「茨城サドベリースクール」を始めた経緯を教えていただけますか。

教員として勤務する中で、家庭への支援の重要性や、学校以外の学びの場の必要性を痛感しました。そこで、カリキュラムを無くし、自らの学びを自ら選択するオートノミーの考え方を実践できる教育施設を作ろうと思ったのがきっかけです。

──茨城サドベリースクールと並行して「子ども第三の居場所」も運営されますね。

教育施設を建設するにあたり、「子ども第三の居場所事業」の支援を受けることで、不登校の児童生徒をはじめ、貧困やヤングケアラー、ネグレクトなどの状況にある子どもたちにも支援の手を届けることができることを感謝しています。

──「茨城サドベリースクール」と「子ども第三の居場所」で、どのような棲み分けが行なわれるのでしょうか?

「茨城サドベリースクール」は、子どもたちが「自由と自己選択による学び」と「対話による民主的な運営」を柱にして生活していきます。「子ども第三の居場所」は、多様な生活状況にある子どもに対し、発達特性やアタッチメント、トラウマの視点からアセスメントし、必要なケアも届けることができる施設です。

──どういったお子さんの利用を想定していますか?

不登校にも、多様な学びを求めるニーズのある積極的不登校があります。「茨城サドベリースクール」では、前向きに自分の学びについて自由に選択したいという子どもたちを想定しています。

「子ども第三の居場所」に関しては、前述した多様な生活状況にあるお子さんを想定していますが、地域の子どもも希望があれば受け入れていきます。

──どのようにして過ごすのでしょうか?

「茨城サドベリースクール」においては、自由に過ごすほか、毎日のミーティングを通して、生活のルールや、行事の企画などを子どもたちと話し合い、実践していきます。

──どういった方々がスタッフとして働いているのでしょうか? 

スタッフには、教員免許有資格者、看護師免許有資格者、カウンセリング経験、不登校の親としての経験をもとに子どもたちに受容的に接することができる方、ICT支援員経験など、多様な学びに対応できるメンバーがそろっています。

──どのような相談が寄せられますか?

個別訪問支援や、オンライン相談支援を年間で延べ1000件以上受けています。その中で、孤立して悩んでいるご家族への支援の重要性を痛感しています。当団体の支援を通して、「子どもに笑顔がもどって嬉しい」と涙される保護者の姿をたくさん見てきました。

──利用されるお子さんにとってどういう場所になることを目指していますか?

安心安全の心の居場所となり、温かな人間関係を形成しながら、自分の夢を見つけ、その子のペースで成長できる学びの場となることを目指しています。

──「子ども第三の居場所」を必要とする読者が取れるアクションとしては、どういったものがありますか

まず、当団体へメールか電話でお問い合わせください(メールはinfo@ibarakisudbury.or.jp、電話は0296-38-2188)。見学や相談に応じます。

「子ども第三の居場所」やフリースクールは、様々な事情で困難な状況にある子どもたちを支援するもので、社会にとって非常に重要な意味を持つものだと言える。よりたくさんの子どもたちが安心して社会の中で過ごしていけるように、その活動を見守っていきたい。