ヨーロッパの美しい町を語るとき、しばしばその名が挙がるのがエストニアの首都・タリン。城壁に囲まれた旧市街は、まるごと世界遺産に登録されています。

13世紀にハンザ同盟に加盟したタリンは、ヨーロッパとロシアを結ぶ交易の拠点として繁栄を極めました。今も中世の面影を色濃く残し、「中世の生きた博物館」とも呼ばれるこの町では、いたるところで貴重な中世芸術に出会うことができます。

なかでも有名なのが、現在は博物館として利用されている聖ニコラス(ニグリステ)教会。天に向かって真っすぐにそびえる高い尖塔が印象的です。

聖ニコラス教会は、その名の通り船乗りの守護聖人・ニコラスに捧げられた教会で、1230年代にドイツ商人の居住区の中心に建てられました。非常時には要塞としての機能も果たすように設計されたため、シンプルで頑丈な実用性の高い造りになっています。

1523年の宗教改革期の略奪を生き延びたものの、1944年のソ連軍の空襲で破壊されてしまったため、オリジナルの内装は残っていません。1980年に修復が行われ、聖ニコラス教会は宗教芸術を展示する博物館として生まれ変わりました。

展示品の数こそ多くはないものの、世界的に有名かつ貴重なものが多く、タリンを代表する博物館のひとつとして知られています。

聖ニコラス教会の代名詞的存在ともいえるのが、ベルント・ノトケによって描かれた15世紀の絵画「死のダンス」。

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