令和7年度の特殊詐欺の被害状況は、8月末時点で831億円にのぼる。昨年度から大幅に増え、過去最悪ペースで推移しているという。財産を狙う窃盗・詐欺(財産犯)の被害額についても、過去最悪の被害額を更新する見込みだ。

元・埼玉県警察本部刑事部捜査第一課警部補で防犯アドバイザーの佐々木成三氏は、1件あたりの被害額が高額化しており、高齢者だけでなく、中高年も詐欺の対象になっていると警鐘を鳴らす。

こうした状況を踏まえ、佐々木氏は、防犯商品を数多く展開するパナソニック株式会社で行われたセミナー「防犯対策2025」で登壇し、昨今の詐欺・窃盗の傾向と求められる対策について語った。

■「特殊詐欺」の巧妙化で誰もが被害者になる可能性

佐々木氏によれば、特殊詐欺の被害者の多くは「自分はだまされないと思っていた」と語るという。

それほど詐欺の手法は、巧妙化しており、なおかつ日々アップデートを続けている。犯人グループは、ニセのストーリーを巧妙に練り、被害者の感情を揺さぶることに長けている。

令和7年度上半期(4月~9月)に目立って多かった事例は「ニセ警察官」の詐欺だといい、被害額は、470億円にのぼっている。警察官を名乗り、クレジットカードや金品を要求するケースには、くれぐれも注意したいものだ。

一方で、犯人グループは、1つの手法が大大的に報道されると、新たな手法を生み出すことに長けていると佐々木氏は語る。権威のある組織の名前を利用し、巧みに金銭にまつわる要求をするケースは引き続き、細心の注意を払いたい。

■「侵入窃盗」の犯人が嫌がる対策とは?

佐々木氏は、住宅で発生した「侵入窃盗」についても、解説を続ける。侵入窃盗の手口として最も多いのが、家主が留守中の空き巣だ。

犯人に留守中であることが悟られないよう、「在宅を装うこと」で一定の防犯効果が見込める。

例えば、タイマーであかりのスイッチがON/OFFになる機能使って、留守を悟らせないことや、侵入を試みた犯人を音声で威嚇するような防犯グッズがあると、役立つという。「明かり」「人の気配」「音」は、犯人が敬遠する要素であるようだ。

人の移動が増え、まとまった現金が動く年末年始にかけて、財産犯が増加する傾向があるという。住環境に適した防犯グッズのリサーチや、特殊詐欺の最新手法の情報収集を重ね、日ごろから防犯意識を高めておきたい。